山崎まどか・トミヤマユキコが今を生きる女性に贈る必読書6選

女性はもっと自由に、もっと勝手にしていい

2017年9・10月 特集:未来からきた女性
インタビュー・テキスト:羽佐田瑶子撮影・編集:竹中万季
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二人の選書の共通点から見えてきた、「未来からきた女性」の手がかり

「いろんなかたちの女性がいますよね。あらかじめ決められたルールなんてないのだから、私こそがこの世界に求められているんだと自信を持って、もっと勝手にしていいんだと思いました」。She is編集長、野村由芽のそんな言葉で締めくくられた『She is BOOK TALK vol.1』。9・10月の特集テーマ「未来からきた女性」について、本を通じてみんなで考えてみるトークイベントを10月20日(金)に書店「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」で開催し、記事「海外ガールズ文化と少女漫画の接点」でも対談していただいた山崎まどかさんとトミヤマユキコさんにトークゲストとしてご登場いただきました。

左から、トミヤマユキコ、山崎まどか

レナ・ダナムの『ありがちな女じゃない』の翻訳を手がけるなど海外のガールズカルチャーにも知見が深い山崎さんと、大学でも教鞭をとる少女漫画研究者のトミヤマさん。お二人に「未来からきた女性」というテーマに合った3冊の本を選んでいただいたところ、偶然の共通点から「未来からきた女性」の手がかりが見えてきました。

妖怪チックな、ぶっ飛んだ16名の女性のインタビュー集『ワッキー・チックス』

『ワッキー・チックス』(サイモン・ドゥナーン)(Amazonで見る

山崎さんが紹介する1冊目は『ワッキー・チックス』(サイモン・ドゥナーン)。バーニーズ・ニューヨークのクリエイティブディレクターで、セレブリティにも人気の高いサイモンが、「人目なんて気にしない、ありえないほどエキセントリック」な女性16名にインタビューした本です。「わけのわからない、妖怪チックな、ぶっ飛んだ女たちばかり出てくるんです」と山崎さん。

出てくる女性たちが魅力的なのは、具体的に何者であるかがまったくわからないところ。例えば、フォトグラファーだったのが最近ではジュエリーデザイナーを名乗っているなど、世の中に出てくるたびに職業が変わっている女性たち。「ひとつの世界に限定されず、何歳になっても勝手に職業を変えたりできる自由な精神がいいですよね。日本だとイチロー選手のように、ひとつの道を突き進む職人的な人が偉いとされがちですけど、女性のキャリアはもっと自由でいいと思うんです」。

いいことばかりではないかもしれないけれど、大転倒の先には必ずいいことがある、はず。「この本を読むと、女性は何をやっても生きていけるんだなと勇気が出ます。全編オカマ口調だから好き嫌いは分かれるかもしれないけど、新宿二丁目で説教されている気持ちになれて最高なんです(笑)」。

マイノリティでも「勝手にやらせてもらいます」。男子高校生がスカートで暮らす『ボーイ☆スカート』

『ボーイ☆スカート』(鳥野しの)(Amazonで見る

「今回、山崎さんとたまたまテーマが重なる作品を選んでいて」と話すトミヤマさんが選んだ1冊目は『ボーイ☆スカート』(鳥野しの)です。ゲイでも、性同一性障害でもない男子高校生が「女装をしてみたいわけではなく、ただスカートを穿いてみたい」という動機でスカートを穿いて生活をはじめるストーリーは、「人目なんて気にしない!」という点で『ワッキー・チックス』ともつながるところがあります。

「優等生タイプで、顔もいい彼の突然の行動に周囲はビックリするんです。学内で話題になったり、彼女にはフラれたり。最初は拒否反応を示していたクラスメイトたちが謝りに来たりもします。でも彼は、正直なところ、ほっといてほしいんですよね。それはすごく大事なメッセージだと思います」とトミヤマさん。

「マイノリティが現れるとちゃんと理解しようとがんばってしまうんですけど、彼らとしてはふつうに接してほしい、そっとしておいてほしいと思ってたりするんですね。みんなに理解してもらう必要なんてない。勝手にやらせてもらいます、という気持ちを尊重することが大事なんだと気づかされる本です」。肯定は他人ではなく、自分でするもの。思考がマイノリティである人物の生き方を描いた本には、気持ちがグッと強くなります。

「男の人との恋愛」という枠組みを取っ払った17篇に出会える『レズビアン短編小説集』

『レズビアン短編小説集』(ヴァージニア・ウルフほか)(Amazonで見る

2冊目として山崎さんが紹介したのは『レズビアン短編小説集』(ヴァージニア・ウルフほか)。ゲイやBL(ボーイズ・ラブ)など、さまざまなジェンダーをテーマにした短編集を発表する平凡社ライブラリーからの1冊です。「百合」(女性の同性愛を題材にした作品)に興味がない人にも手にとってほしいと山崎さん。

「友情でも家族愛でもない絶妙な話が17篇入っていますが、これは女の人同士の関わり合いの話なんです。『男の人との恋愛』という枠組みを取っ払って、自由な視点と関係性で恋愛を描いているところが素晴らしい。たとえば、女の子同士は性愛の関係だけじゃなく、友情からシスターフッド(女性同士の連帯)の関係になる可能性も充分にあると思うんです。性は流動的なものだと認められてきている。そのときどきの自分の気持ちに素直になって、男の人や女の人、どちらを恋人に選んでもいいはず」。

一時だけ女の人と付き合って、次の恋人が男の人だったらいけないのか? そんなことはないはずです。「お試しでレズビアンなんて不真面目だ、と言う人がいるけれども、勝手じゃんって思う(笑)。もっと許されるべきだと思います」。

また、これらの作品は文学作品としても再評価されるものだと山崎さん。「19世紀から20世紀にかけての過去の女性作家たちは、いま読むと新鮮に感じます。未来は常に懐かしいもので、昔のものの中に未来がある。彼女たちの作品は私たちが発見することで未来になるんです」。知られていない作家も多いので、未来からやってきたような過去の女性作家たちとの出会いという意味でも魅力的な1冊です。

サウジアラビア人と日本人、女性同士の同居生活。やさしい諭しも得られる『サトコとナダ』

『サトコとナダ』(ユペチカ)(Amazonで見る

性愛の関係以外でも、女の人同士が協力して生きていくことを認める、自由な視点に満ちた作品をトミヤマさんも2冊目にあげました。『サトコとナダ』(ユペチカ)は、アメリカでルームシェアをする2人の女の子の話です。

ルームメイトを探していたサウジアラビア出身のナダは、ムスリムの服装を身にまとっているからか、なかなか相手が見つかりません。しかし「新しい世界が見たいから」と同郷ではなく異文化の女性を探し続け、一緒に住むことになったのが日本出身のサトコです。「サトコもナダも、二人で過ごす時間がどんどん楽しくなっていくんです。あるとき、ナダが『サトコは私たちの文化にとっても興味があるのね』と言うと、サトコは『文化を知りたいのはもちろんだけど、私はナダ あなたを知りたいの』と言うシーンがドキッとする。女の子同士の生活は、生きていく上での栄養になりますよね」。

恋愛が関係しないフラットな人間関係を描くことで、人同士や文化の違いが強調され、ハッとさせられるところも。「ナダは宗教上、親が決めた相手としか結婚できませんし、服装も決められています。でも彼女はそれを『いいでしょ?』と幸せそうに受け入れているんですよね。その姿にサトコや私たちはハッとさせられます。自由ではないことが可哀想、という考えがいかに傲慢なものか。やさしい諭しがある本です」とトミヤマさんは語ります。インターネット上で読めるのでいますぐ読んでほしい、とのこと!

PROFILE

山崎まどか
山崎まどか

15歳の時に帰国子女としての経験を綴った『ビバ! 私はメキシコの転校生』で文筆家としてデビュー。女子文化全般/アメリカのユース・カルチャーをテーマに様々な分野についてのコラムを執筆。著書に『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)『イノセント・ガールズ』(アスペクト)共著に『ヤングアダルトU.S.A.』(DUブックス)翻訳書にレナ・ダナム『ありがちな女じゃない』(河出書房新社)等。

トミヤマユキコ
トミヤマユキコ

ライター/早稲田大学文化構想学部助教。
『FRaU』『ESSE』『エル・グルメ』などで日本の文学、マンガ、フードカルチャーに関する連載を持つ一方、大学では少女マンガ研究をメインとしたサブカルチャー関連講義を担当。著書に『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(清田隆之との共著、左右社)、『パンケーキ・ノート』(リトルモア)がある。

INFORMATION

リリース情報
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サイモン・ドゥナーン『ワッキー・チックス―人目なんて気にしない、ありえないほどエキセントリックな女たちに学ぶ人生のレッスン』

2004年9月29日発売
価格:2,376円(税込)
発行:青土社
amazon

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鳥野しの
『ボーイ☆スカート』

2015年6月8日(月)発売
価格:734円(税込)
発行:祥伝社
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ヴァージニア・ウルフほか
『新装版 レズビアン短編小説集: 女たちの時間 (平凡社ライブラリー)』

2015年6月12日(金)発売
価格:1,404円(税込)
発行:平凡社
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ユペチカ(著)、西森マリー(監修)
『サトコとナダ 1 (星海社COMICS)』

2017年7月8日(土)発売
価格:691円(税込)
発行:講談社
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森茉莉 『贅沢貧乏のお洒落帖』

2016年12月7日(水)発売
価格:842円(税込)
発行:筑摩書房
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池辺葵
『プリンセスメゾン 1』

2015年5月12日(火)発売
価格:596円(税込)
発行:小学館
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