クッキーとタフィー 〜緑と楯のうた〜(短歌50首)/雪舟えま

愛のスピード狂である歌人が無限の創作欲で書く50首

2017年12月 特集:だれと生きる?
短歌:雪舟えま 編集:野村由芽
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クッキーをうまそうに食うからクッキーと呼ばれている 生きててよかった

毛づくろいしたい俺されたい君が同室にいるしずかな奇跡

グルーミングしあうブラシにからまった毛ははつなつの風に飛ばせて

君をつれ帰る気分でアスパラの手を取るごとくかごに入れたり

手にQを描いてクリーム出でにけり恋には嵌りたくて嵌った

AIのバースデーケーキを買いにゆくAIの前じゃ黙って

花に花とおなじ色の蝶がとまるくちづけ多き日々を生きおり

経験はあるよ王から人魚までこの人生がいちばんすきだ

砂糖 イイネ 砂糖は駄目 ソレモイイネ いいからもっと近くにおいで

恋人はなにかおいしいときにだけ興奮をする大天使かな

ただいマイラブ 木彫り熊・ニポポたち・廊下に立たされているジュース

可愛い人はお願いも可愛いくて 便せん透かしあるから見てね

ふつかめの野菜こんがらがりカレーおすすめですと澄ました顔で

便せんを透かせば外国のことば すべてが生きることを励ます

いま横でねているひとに書く手紙ずっと船旅してるみたいだ

腰に手をあてておまえはひとりごと「毎日ほんと日替わりデイズ」

おれたちは閉じてる? 二対九十億のゲームくらいに開いているさ

おしっこと出発直後にいう奴よ長男タイプというはまぼろし

台風のあとの道路は濡れて赤い実が落ちていてまるでおまえだ

はつなつの足きっちりと交差して信号を待つXエックスの女よ

リュックの底をぽんぽんと押しあげてくるきょう買ったものがうれしいらしい

神さま こいつをおれにくれ月夜抱きあうと歩きにくくて笑う

「Xの女をきょうはふたり見た」シティーでなにを見てるの君は

頬に雨 Xのうち何割がトイレをがまんしてるのだろう

猫飼うかといえばまにあってるという君の背中がなにやら広い

あの二本の木は何かの門かしらきみと通らば楽園の門

すごくすごく怒って「水切ってやる!」と濡れた茶こしをこちらへ振りぬ

君よそのキャンディ包みを解くようにかたくなな耳引っぱってくれ

君が君に似たケーキを食べていて全年齢の面影がある

おれに似たケーキってなに? ザッハトルテ。ときには胸が苦しいほどに

運命かもしれないと言い石けんを見せるは土曜の朝の化身

運命の石けん 浮気するでしょう素敵な石けんだらけの星で

雛鳥が身じろぎしたと思ったらネクタイを直してくれていた

室内が謎のすばらしさで満ちてなんだこれはと両手など見る

もしかしてぜんぶ流れていくのかと震えるときも隣にはきみ

いままでは気づかなかった光やら美に悶えてる君の服きて

おしゃべりはだめか言葉にしなければすべてがあるとおまえは笑う

花のごとき聴き上手なりなにかしら飲んでいつでも機嫌よき君

ベルが鳴り手紙をかいた君よりもあたらしい君が玄関にいる

横顔がタフィーを噛み砕きながらでれた手紙を読みかえしおり

大きめのミントグリーンのシャツから泡立つように君来る夕べ

パジャマにボウタイつけておまえがはしゃいでるそのために買った気がしてくる

おたがいに灸をすえあう夜きみががまんをやめる練習を兼ね

あついっていえてえらいね君の腰のもぐさをのけて麦茶をあげる

気前よく忘れて生きる夜をとぶ白蝶を見た気がしたことも

もう一度☆がれ何度でも鮭べ夜空の網にふたりでかかれ

「おやすみどり」「またあしたて」と体内がまぶしいままで眠っていける

裸眠すすめてはやんわりかわされることも愉しい朝の白湯かな

君の首わずかに細いことを知る君が遊んで飽きたボウタイ

むかしむかし缶をこぼれたクッキーとタフィーがあって、それがおれたち
 
 
 
 
 

PROFILE

雪舟えま
雪舟えま

愛のスピード狂!!

INFORMATION

2018年刊行予定の第2歌集を準備宙!

クッキーとタフィー 〜緑と楯のうた〜(短歌50首)/雪舟えま

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