恋のロマンスはインターネットにも落ちている/榊原綾香

PairsやTinder、マッチングアプリという選択肢ってどう?

2017年12月 特集:だれと生きる?
テキスト:榊原綾香 イラスト:Shogo Yasuno 編集:野村由芽
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デザインの力が、「出会い系」のイメージを変える

人でもモノでも、その「見た目」が相手に与える影響は大きい。例え、中身がどんなに素晴らしいものだとしても、「見た目」の印象があまり芳しくなければ、深く知ってもらうチャンスを逃してしまうことも多いのではないだろうか。中学生の頃に父親から「自分の身は自分で守れよ」と持ち歩くように言われたコンドームはそのパッケージのダサさから嫌悪感を先に抱きました。でも、よくよく考えてみれば、自分と同じくらい大切な人と使う、二人の身を守るためのもの。それがもっとオシャレで可愛くて、ギフトとしてプレゼントしても成立するようなデザインだったならいいのに。コンビニでこっそり買うものではなく、セレクトショップでお気に入りの服を買うときのような気持ちで買えたなら素敵なのに。そのような想いから、デザインがなおざりにされがちなコンドームやメンズのアンダーウェアを扱うブランド「shyboi | シャイボーイ」をはじめました。

shyboi | シャイボーイ

以前は、「オンライン・デーティング・サービス」(一般的にはマッチングサービスとも呼ばれる)や、カップル専用のコミュニケーションアプリを開発・運営する会社でプロダクト・マネージャーを務めていました。当時は世の中にまだまだ受け入れられていなかった新しいサービスも、デザインを工夫することで親しみやすく感じてもらえることを、アプリ開発を通じて実感した経験があります。なかなかデザインが更新されづらいコンドームというプロダクトも、思わず手を伸ばしたくなる可愛さを纏わせることでイメージを変えることができると考えています。この記事を読み終わった後に「シャイな気持ちを乗り越えて、手にとってみようかな?」と感じてもらえれば嬉しいです。

「インターネットで出会いました」と「友人の紹介で出会いました」の何が違うのだろう?

街コンや合コンに婚活サービス。それらの看板や広告はどうしてか毒々しいピンクが目立つし、そのネーミングもなんだかオシャレじゃない。それゆえに人は馴れ初めを尋ねられたときに、「友人の紹介で出会いました」なんて口にしてしまうのではないでしょうか?

「Pairs」や「タップル誕生」、「Tinder」などのオンライン・デーティング・サービスが、従来の「出会い系」サービスと異なるのは、クリーンでスタイリッシュなデザインで「誰もが安心して気軽に使えるもの」であり、「素敵なパートナーと出会えそう」というメッセージを打ち出したところにあると言えるでしょう。そんなサービスの原型が生まれたのは時を遡って1995年。アメリカで「match.com」という最初のオンライン・デーティング・サービスが誕生しました。当時はWindows 95の発売やISP(インターネット・サービス・プロパイダー)の急増に伴い利用料金が下がるなど、まさにインターネットが一般消費者に普及し始めていた年でもあります。ちなみに、今や私たちの生活に欠かせない存在となったAmazonがサービスを開始したのも同じ1995年です。

20年以上が経過した今、アメリカでは2,000を超えるサービスやアプリが存在し、オンラインで出会ったことがきっかけで結婚したカップルの割合が3割を占めているといいます。海外の映画やドラマの中に「match.com」や「Tinder」、「OkCupid」などのオンライン・デーティング・サービスの名称が登場することも珍しくはありません(日本語字幕では出会い系なんて訳されていたりしますが……)。それほどにまで恋愛のきっかけとして人々に定着しているのです。日本と比較して、インターネット・サービスが発達していたことに加え、オープンなコミュニケーション文化も相乗し、早期より多くの人に受け入れられたのではないでしょうか。

会話の糸口を与えてくれるから、気軽にコミュニケーションできる

それでもやはり、「オンライン」であることに抵抗を持つ人が日本には多いのですが、シャイな気質の日本人にこそ、テキスト・コミュニケーションから始められるオンライン・デーティング・サービスが実はぴったりなのではないかと思います。そして何より、インターネットが日常に入り込んだ今では、オンラインで出会うことは何も特別なことではなく、想像以上に自然な出会いでもあります。

インターネットで恋人を探すことに抵抗がある人でも、こと恋愛以外においてはきっと抵抗なく、「目的のものをネットで検索する」といった同じような行動をとっているのではないでしょうか。例えば音楽であれば、SpotifyやApple Musicに予め登録した嗜好や過去の傾向からレコメンドされる楽曲を試聴する。気に入ればもう少し探ってみるだろうし、お眼鏡に適わなければさよなら。それが映画であればNetflixやHuluが、書籍であればAmazonが、好みに合いそうな選択肢を提示してくれる。

自分のタイプにぴったりなパートナー探しも、それらと同じように最初の出会いをウェブサービスに委ねることは、あらゆることがスマートフォンを介して行えるようになった現代ではごく自然のことではないかと思います。大人数が苦手なタイプの場合、合コンや婚活パーティーに赴き、ましてやそこで気になる相手を見つけ、会話の糸口を探し、勇気を振り絞って声をかけるなど頻繁にできることではないでしょう。

でも、それがPairsやTinderであれば、共通のコミュニティをチェックしたり、連携しているInstagramのアカウントから相手の趣味を垣間見ることができます。それらは本人が望んで開示している情報なので、気軽にコミュニケーションのきっかけとして使えるカード。まだアナログしかなかった時代、気になる相手のファッションや持ち物から会話の糸口になりそうなネタを探した記憶はありませんか? 価値観が多様化して、趣味趣向のコミュニティが細分化している今だからこそ、相手の好きなものを会う前に詳しく知ることができるというのは、自分に合ったパートナーを発見する近道でもあります。

海外ではユニークな切り口のマッチング・アプリも続々登場

昨今では、マジョリティーではなく、特定の層に向けたサービスやブランドを多く目にするようになっていますが、オンライン・デーティング業界も例外ではありません。日本よりも数年先行してデーティング・サービスが一般的となったアメリカやヨーロッパでは、今やシチュエーションや趣味、民族、宗教、性的志向等のジャンル毎に特化した多種多様のサービスが次々に登場しています。例えばGBTQ(ゲイ、バイ、トランスジェンダー、クイア)に特化した「Grindr」や、マリファナ愛煙家向けの「High There!」なんてユニークなものも。最近では日本国内でも、メッセージをやり取りする手間を省き、マッチング時に初回デート場所を提案してくれる「Dine」というサービスも登場しています。需要のある限り、これからもまだまだ細分化されたデーティング・サービスが誕生するのでしょう。

欧米では普段から恋愛に限らずとも、初対面であってもフランクにコミュニケーションをとる風土も後押しとなり、オンラインでの新たな出会い方が根付きやすかった背景もあるのかもしれません。でもこれだけ誰しもがスマートフォンを片手に街を歩くようになった時代なのだから、日本でも臆することなく「デーティング・アプリで出会ったんだよ」と二人の馴れ初めをノロけてもらいたいもの。

トラディショナルな始まりも美しいけれど、偶然のリアルな出会いを待つばかりではもしかしたら出会える相手とも出会えないかもしれない。それに、「暇つぶしにスマホを触っていた1分間で運命が決まっちゃった」なんてロマンチックなエピソードも実際にありえるのです。ロマンチックの価値観も、時代と共に増えていく。ほんの少しの勇気を出して、先入観と保守的な理想を捨ててみると、最高のパートナーと巡り会えるかも。

PROFILE

榊原 綾香

プロデューサー。1989年生まれ。カップルコミュニケーションアプリ「Couples」やソーシャルゲーム・Webメディアのプロダクト・マネージャーを複数経験した後にフリーランスとして独立。2017年にchill & work ,incを立ち上げ、ボーイズ・エチケットブランド「shyboi」をスタート。カルチャーメディア「FNMNL」のPRも兼任。

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