時代を超える名建築、お菓子に雑貨。街には好きなものがつまっている
短い夏の夜に揺らめく線香花火、海沿いを駆け抜ける晴天のドライブ。She isでは7月の特集を「旅に出る理由」と銘打って、日常と非日常を行き来する「旅」の魅力について考えました。
その連動企画として、毎月の特集テーマから連想する本をゲストに選んでいただく恒例のイベント「She is BOOK TALK」を東京・下町に位置する本屋Readin' Writin' BOOKSTOREにて開催。
ゲストは、旅や散歩、お菓子に手土産、クラシック建築やホテル、雑貨と暮らしなどを題材に執筆をおこなう文筆家・エッセイストの甲斐みのりさん。「時代を超える名建築」をテーマに選んだ本たちを紹介しながら、トリップ感の味わえる建物やお店についてお話しいただきました。「旅」という大好きな時間に飛び込み、自ら旅を盛り上げる甲斐さんのパワーあふれる「旅に出る理由」をお届けします。
迷うことを恐れず、出会いを楽しむのが旅の醍醐味
実際に様々な場所に足を運び、身近なところでも日常的に「旅」のスイッチを入れて楽しんでいる甲斐みのりさん。「暮らすように旅をしているんです」と話すように、甲斐さんにとって旅とは決して特別なものではありません。
「建築やお菓子、パン、街の中に自分の好きなものがつまっているので、街歩きが大好きです。初めて修学旅行で京都に行った時に、古い建物や街並みの中で人々の生活が営まれている光景に感動しました。今でも人の営みが感じられる街が好きなので、夢中で街を歩いています」と話します。
街歩きのきっかけは、植草甚一さん。欧米文学や映画評論の傍ら『ぼくは散歩と雑学が好き』など、散歩に関する雑学本を発行していた彼の著作に出会い、彼の旅路を追うようになったそう。
「京都の地図に、植草さんが行ったところに印をつけて、でかけました。迷うこともあったけれど、目的地にたどり着くまでに新しいものを見つけるのが楽しくて、そういう発見が自分をときめかせてくれるのだと知りました。旅は迷うことを恐れず、出会いを楽しむことが大事だと思います」
そこからつながって池波正太郎の『散歩のとき何か食べたくなって』を読み、作中に出てくるほとんどすべての場所に足を運んだという甲斐さん。
「誰よりも意地を持って、好きなものを見つけようとしてしまう」と話す通り、旅先では行きたいところ、やりたいことが溢れ、常に小走りなんだそう。
旅は自ら盛り上げることも大事と語る甲斐さんの旅の楽しみ方は「まず、迷いなく買うこと。お菓子という存在が好きなので、自分の味覚に合わなかったものでも愛せます。美味しさだけでなく、その背景や生産者のことをきちんと知って伝えたいので、全種類を買うなど、大人買いでリスペクトを示します。また、行程には余裕を持つこと。目的地は決めつつ、途中でいいお店を見つけたら立ち寄れるようにします」と話しました。
不思議なトリップ感をもたらしてくれるお店や建築
これまで旅をしてきた場所から、特にトリップ感がもたらされるお店や建築を紹介いただきました。まずひとつ目は、愛知県犬山市の「博物館明治村」です。
移築されたフランク・ロイド・ライトの帝国ホテルや聖ザビエル天主堂など、1日では回りきれないほどの日本中の名建築が立ち並ぶ施設。「すべての建物に当時の気配と物語がつまっていて、その建物にまつわる書物をすぐに読みたくなるほどパワーがあります」と話す甲斐さん曰く、1日は犬山、翌日に名古屋観光をするのがおすすめとのこと。
ふたつ目は「ホテル大野屋」。昭和14年にオープンした大型観光ホテルで、映画『おもひでぽろぽろ』に出てくる大きなローマ風呂が有名です。
ほかにもカラオケやキッチュな浴衣など、大型観光ホテルの魅力満載。「大勢で泊まるのが楽しい場所。団体行動が苦手でしたが、ここで一緒に泊まった人と一生の友だちになることができました」と甲斐さん。スリッパに書かれた「人生は旅」というひと言もお見逃しなく。
みっつめは、YMCA東山荘。国際青少年センターのYMCAが運営する宿泊・研修施設で、黙想館の窓からは富士山が拝める穴場とのこと。
ほかには甲斐さんの新刊『東京のおいしい名建築さんぽ』の番外編として、東京でトリップ感覚を味わえる「アテネ・フランセ」や喫茶店「蔦屋珈琲店」を紹介くださいました。
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