どこかへ行きたいーーーー。
朝起きたとき、残っているタスクを思い返しているとき、プレッシャーを感じる撮影を控えてるとき、いろんなときに思い浮かぶ。何もないところでも全然いい、東京じゃないところなら。できたら沖縄とかだと嬉しい。そんなことを幾度となく思い浮かべても、東京を出ることはできない。
東京生まれ、東京育ちで、親の両親も東京にいたので夏休みに遊びに行く田舎もなかった。小学生の夏休みに祖母に連れていかれる場所の定番は池袋のサンシャインシティだった。東京じゃないところに行くことは、私にとってとても非現実的なことだ。その非現実的な逃避行欲が私にはすごくある。
しかしその逃避行はなかなか実行するのは難しい。東京で育ち、都立の高校に入り、そこで出会った女の子と都内の美術館に行って庭でシャボン玉を吹いているあの子を撮ったときに、私は写真による小さな逃避行を覚えた気がする。
女の子と写真を撮りましょう、となったとき小さな逃避行は始まる。
どこへ行こうかと考えるとき、「どんな服を着ますか?」と質問がきて一緒に考えているとき、どのカメラを使うか選んでいるとき、当日の天気予報を見たり、撮影の後は何を食べようかと考えてるときから、とても楽しい。
今回は、三人の女の子と小さな逃避行をすることに。チェキを使うことはたまにあるけれど、初めて「Lomo’Instant Square Glass」というインスタントカメラをメインに使ってみた。
千史と、伊東笑ちゃん、中尾有伽という、もう何年も撮り続けている三人の女の子との小さな逃避行の記録。
千史と行く、小さな逃避行。浅草、花やしきにて。
千史と連絡をとったときに最近のマイブームを聞いてみたら「ちっちゃいぬいぐるみ集めです!」との返事がきて、なぜだか連想したのが東京の遊園地、浅草の花やしきだった。早速、花やしきに二人で行くことに。
撮影当日、浅草駅で待ち合わせていたら平日なのにとても人が多くて驚いた。とりあえず人が多かったので下からあおりで雷門と千史の写真を1枚撮る。真夏日な日差しに眩しそうな顔。
浅草、さすが観光地だな、と思っていたら、花やしきに向かう途中の浅草寺のあたりでほおずきを持っている人とたくさんすれ違い、ほおずき市をやっていることを知る。お祭りの雰囲気も少し感じながら久々に花やしきに入る。
まず目に入ったのがパンダカー。これは絶対撮ろうと思っていたものだったので撮ろうとしたところ、このカメラの難しいところで、室内や日陰はなかなか暗くなってしまう。でも、暗がりだからこその青色も綺麗で。
花やしきには不思議なモチーフがところどころにあって、園内を散策しながら気になったものと一緒に撮ったり、ちょっとセンスが一昔前のザ・フォトスポット的な場所や輪投げで遊んだりしてるところでも撮った。
スワンボートに乗ってみたら、思いのほか動きが速くてブレてしまった。でも、それもなんだか可笑しくて楽しかった。メリーゴーランドは一緒に乗ったらこのカメラで撮るには距離が近すぎて、無理やりノーファインダーで勘で撮ったら全然写ってなかったり、ちょっと明るく撮れすぎてたり。
今回使ったカメラは近距離が難しく、ボケやすい。ただ、インスタントカメラは別にボケてたって、ブレてたって、その場に一緒にいた楽しかった記憶の空気感がたった一枚に閉じ込められる、それがいい。この一枚しか世界に存在しないのだ。
花やしきの屋上に行って上から園内を眺めたら、園内がだいぶ工事中で、狭くなっていたことを知る。
屋上には謎の曲が流れているほこらがあったり、スカイツリーと夏の雲がCGのようで、それも入れ込んだ写真の写りがあまりにシャープすぎて二人でとても笑った。
ちょっとした室内の休憩スペースが青い空間で非現実的で面白かったので一枚撮って、花やしきを後にした。
せっかくなので、ほおずき市に行った。カメラの形が面白いので、お姉さんやおじさんに話しかけられて喋ったりしながら、暑いのでかき氷を食べてそれも撮る。季節ものと撮れるのは良い。どんな季節にその子といたのかが残せる。
最後は私が行きたかった喫茶店で涼んだ。千史は抹茶アイスクリーム、私はバニラアイスクリームを頼んだ。実はこのアイスがすごい。しゅわ~~~っとドライアイスがもくもくと煙を出している器の真ん中にバニラアイスが。これを千史に見せたかったし、期待通りに千史も喜んでくれた。びっくり顔も可愛かった。
千史とは夏の本番を強く感じる日差しの中、花やしきと喫茶店の予定だった中に不意なお祭りという写真を撮ることが引きつける楽しい遭遇のある逃避行だった。
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