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女優、趣里による人生相談のような一夜。生きてるだけで、大丈夫。

『生きてるだけで、愛。』試写。涙と優しさが渦巻く夜

2018年10月 特集:なにして生きる?
テキスト:羽佐田瑶子 撮影:竹中万季 編集:野村由芽
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「人は孤独を感じたとしても、ひとりじゃない」

趣里さんが主演の映画『生きてるだけで、愛。』も、不器用ながらも懸命に生きる主人公や周りの登場人物と自分を重ねて、「私はなにをして生きたいのか」を見つめるきっかけとなるような映画です。

趣里さんが演じたのは、鬱による過眠症で引きこもり状態の主人公・寧子。出版社で週刊誌の編集者としてゴシップ記事を書き続ける津奈木(菅田将暉)と同棲をしていますが、元カノの登場により、寧子は外の世界と関わり自分の生き方を見つめ直すことになります。

『生きてるだけで、愛。』 ©2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会(公式サイト

新たな夢に向かってどんどん進んでいるように見えますが、「今でも、怪我をしていなかったらと考えることはあります。(バレエを)続けていたかったなって」。そうした葛藤する気持ちを抱える趣里さんだからこそ、寧子という存在に自分自身を重ねます。「外と家では、全然違う自分であることって往々にしてありますよね。外とつながりたいけどうまくいかない、他人と関わりたいけど怖い、変わりたいけど変われない自分が嫌い。寧子の持っている葛藤というのは普遍的で、私だけじゃないんだと思えました」。

解き放たれるように走り出す寧子を演じ通し、趣里さんは「人は孤独を感じたとしても、ひとりじゃない」と実感したと言います。「この映画を撮影するときに、いろんな人の力を感じる瞬間が多くて、それがとても美しくて。こういう瞬間があるから、俳優として生きていき、前に進みたいとあらためて思いました」。

「根拠がなくても『大丈夫』という言葉はすごいエネルギーをもらえるんです」

イベントの後半は、「ひとりひとりの意見をできるだけ聞きたい」と趣里さんたっての希望で、参加者の方に映画の感想と質問を付箋に書いていただきました。書き連ねられた相談に真摯に、時間をかけて答えた趣里さん。その一部をご紹介します。

趣里さんはなんのために自己表現をされていますか? 私は、孤独になりたくなくて、誰かに認めてもらうために自己表現をしている気がします。

趣里:私もそうだと思います。きっと、多くの人が他人に認めてほしくて自己表現をしているし、同時に相手をわかりたいとも思っているはず。ただ、お互いに100%理解するのは難しいことですよね。役を他人だとすれば、私も役を100%理解することは難しいので、演じるときは共感する部分に血を通わせて、懸命に役を生きようとしています。生きることは自己表現だけど他人も大事なので、人と関わりながら楽しい時間を持てるといいですよね。もっと、意見が言いやすい間柄や社会であればいいなと思います。

自分が経験していない感情をどうやってインストールしていますか?

趣里:そうなんですよね、死んだ役とか変わった役が多くて困っちゃうんです(笑)。一見自分とは違うなと感じられる役柄であっても「なぜこの子がこうなったのか?」ということを想像して、考えていくと理解できることがあるので、少しずつすり合わせていきます。

(『生きてるだけで、愛。』を観て)今まで初めて観たような、味わったことのない感情になりました。愛がひとつも見当たらないように思ったのですが、どうしてこのようなタイトルなのでしょうか?

趣里:そうかーっ(笑)! 「愛」、見当たらなかったですかね? もしかしたら「愛」は見えづらかったかもしれないけれど、究極のところ、「生きているだけでいいよ」という映画だと思うんです。この世界からいなくなりたくなる気持ちもわかるけれど、たぶんいなくなったらダメなんですよね。寧子も周りに関わってくれる人がいるから危うくても前に進んでいて、そこに愛が生まれているなと思います。

仕事で気がすすまないことがあったらどうされていますか?

趣里:気がすすまないこと、ありますよね。そういうときはご褒美をつくるといいですよね……って急に軽い回答ですが(笑)。でもどんな人にも嫌なことは起こるものだし、時間は進むものなので、小さなことでも先に楽しみをつくるといいと思います。私は、大好きなかき氷を食べる時間をつくるようにしています!

趣里さんが女優になったきっかけとなった他者から言われた言葉や、他人から言われた言葉で変われたことはありますか?

趣里:私自身もコンプレックスがあって、世間の方に一人前の人間として認められることは難しいんじゃないかと感じることが多くて。きついことがあると「自分なんて」と思ってしまう性格なのですが、そんなときによく言い聞かせているのは亡くなられた塩屋先生からいただいた「大丈夫」という言葉です。「俺が大丈夫って言っているんだから絶対大丈夫」って何度も言ってくれて……(涙で言葉がつまる)。すみません、泣くつもりじゃなかったんですけど。今でも怖いことはありますし、自分の評価を毎回気にしてしまうけれど、観てくださる方の反応が本当に嬉しいし、自分にも負けたくないんです。そういう自分を奮い立たせるときに、根拠がなくても「大丈夫」という言葉はすごいエネルギーをもらえるんですよね。だから友達にも「大丈夫」って言ってあげたいです。もちろん、大丈夫じゃないときもあるけれど、そう言ってもらえたら、笑って「ありがとう」って思える言葉ですよね。

生きている限り自分と別れることはできませんし、「なにして生きる?」は常に考え続ける命題です。そんなときに「自分のままで」生きるために、「大丈夫」と自分に言い聞かせながら誰かを愛を持って思うことで、自分自身が奮い立つのかもしれません。

PROFILE

趣里

1990年9月21日生まれ、東京都出身。2011年ドラマ『3年B組金八先生ファイナル~「最後の贈る言葉」』(TBS)で女優デビュー。NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』への出演などで注目を集め、『リバース』(TBS)での狂気的な熱演や『ブラックペアン』(TBS)でのクールな看護師役も話題となった。一方、舞台では赤堀雅秋、根本宗子、栗山民也、串田和美、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、小川絵梨子ら巨匠から気鋭まで幅広い演出家の手がける作品に出演。『大逆走』『アルカディア』『メトロポリス』『陥没』『ペール・ギュント』『マクガワン・トリロジー』などで重要な役どころを演じる。また、主な映画出演作に『おとぎ話みたい』(13)『東京の日』(15)『母 小林多喜二の母の物語』(17)『過ちスクランブル』(17)『勝手にふるえてろ』(17)などがある。

INFORMATION

書籍情報
『ダニーと紺碧の海』
著者:ジョン・パトリック シャンリィ

1991年9月発売
訳者:鈴木小百合
発行:白水社
Amazon

作品情報
作品情報
『生きてるだけで、愛。』

2018年11月9日(金)から新宿ピカデリーほか全国公開
監督・脚本:関根光才
原作:本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮文庫)
出演:
趣里
菅田将暉
田中哲司
西田尚美
松重豊
石橋静河
織田梨沙
仲里依紗
配給:クロックワークス
映画『生きてるだけで、愛。』公式サイト

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