She isでは、特集テーマをもとにGirlfriendsに選曲してもらったプレイリストをSpotifyで配信中です。10月の特集テーマ「なにして生きる?」では、京都在住バンド、Homecomingsのギターボーカル・畳野彩加さん、ベース・福田穂那美さん、ドラム・石田成美さんの三人が選曲。
大学時代にバンドを結成し、卒業の際にバンド継続を悩んだ時期もあったという彼女たち。畳野さんと同じ高校出身のギターの福富優樹さんが貸してくれたMDに入っていた自分を変えた1曲や、バンド結成時に聴いていた思い出の曲など、自分たちが今の生き方を考えるときに思い出される曲のほか、なにか新しいことを始めたいときに背中を押してくれる曲をセレクトしてくれました。
映画好きが高じて映画と音楽のイベント『New Neighbors』も開催している彼女たち。『シング・ストリート 未来へのうた』や『グッド・ウィル・ハンティング』など、映画のサントラも交えた10曲をどうぞ。
01:The Pains Of Being Pure At Heart “Young Adult Friction”(畳野彩加)
「ギターポップのバンドをやろうよ」という言葉がきっかけで始まったHomecomings。当時このようなジャンルを聴いていた人はあまり周りにいなかったけれど、そんな中で見つけた先輩二人を誘ってバンドがスタートしていった。初期衝動でどんどん曲ができあがっていったあの感覚は今でも忘れられない。ちょうどその頃に聴いていたThe Pains Of Being Pure At Heartは、当時はただ好きで聴いていただけだけれど、今となればバンドの原点とも言える大事なアーティストです。
02:スピッツ “冷たい頬” (畳野彩加)
高校に入学したての頃、バンドというものに全く興味がなかった私に、同じクラスだった福富が1枚のMDをくれた。彼の作ったオリジナルプレイリストの中には知らないバンドの名前ばかり。唯一知っていたスピッツも初めて聴く曲ばかりだった。今まで全く触れてこなかったバンドサウンドはすごく衝撃的で、どうしてもじっとしてられなくなった。すぐにバレーボール部をやめてアコースティックギターを片手に駅前でこの曲を弾き語りした。できすぎたドラマみたいな話だけど、バンドを始めるきっかけとなったお話。
03:Sing Street “Up” (畳野彩加)
映画『シング・ストリート 未来へのうた』のサントラに入っている曲。好奇心たっぷりなティーンのパワーがすごくエネルギッシュで、何かに行き詰まったときや迷ったとき、先が見えなくなったときとかに背中を押してくれる一曲。新しいものやことに踏み入れるのに心配ごとは付き物だけれど、誰でも余計な心配なんてしたくない。たまには怖いもの知らずでいてもいいよね、ってことを思い出させてくれる。映画も最高ですがサントラも全曲最高なので是非。
04:Daniel Johnston “Don't Let The Sun Go Down On Your Grievances”(畳野彩加)
永遠の片思い(それが叶わないものだと知っていても)を続けるミュージシャン、ダニエル・ジョンストンにとって生きるとはどういうことなのだろうか。そんな彼が古ぼけたコードオルガンをがしがしという音が鳴るほど力強く打ちつけ歌う<あなたの失望の上に太陽を上らせないでね>という言葉には、特別な感情を持たざるを得ません。私にとってずっと大事な曲です。
05:Max Jury “Love That Grows Old” (福田穂那美)
いつのことだったかは記憶がぼんやりとしていてはっきり思い出せないけれど、あれはまだ冷え込む夜で、家へ帰っている途中にこの曲を聴いていると、あまりのあたたかさに胸が苦しくなったことがあった。そのとき私は自分の意識の外で渦巻く何かに囚われていたのかもしれない。この曲はいつの間にか自分の中で蓄積されていたそれを溶かし、背中を押してくれたような気がして、私にとって大切な1曲になりました。
06:Elliot Smith『Miss Misery』(福田穂那美)
大好きな映画『グッド・ウィル・ハンティング』で使われているこの曲は、私の大好きなElliot Smithの曲。大学生のときに初めて彼の曲を聴いて、「こんな曲を自分は聴きたかったのだな」ということをぼんやりと思った。それは私の中で大きな発見であり、今は毎日聴くわけではないけれど、ふとしたときに聴くとやはりしっくりと自分に馴染んでそっと寄り添ってくれる。映画の中では主人公が街を出ていくときにこの曲が流れる。自分がこの街を出ていくとき、どんなことを思うのだろう、そんなことを思わせてくれる曲でもあります。
07:Boygenius “Salt In the Wound”(福田穂那美)
アメリカの女性シンガーソングライター、Julien Baker、Phoebe Bridgers、Lucy Dacusによるプロジェクト、Boygenius。異なった声質の三声が重なり合う心地よさ。今まさにこのEPの存在を知って、リピートして聴いています。新しく何か好きなものを見つけたときの嬉しさ、それはいつになっても変わらずあって、生きていればどんどん増えていくし、色が加わっていく楽しさは何物にも代えがたい。これからもそんな出会いがあるのだろうとわくわくさせてくれるEP。
08:ユニコーン “すばらしい日々”(石田成美)
<すばらしい日々だ 力溢れ すべてを捨ててぼくは生きてる> 朝起きて、仕事をして、ご飯を食べて、家に帰って眠るだけの毎日。そんなあたりまえの日々がどんなに素晴らしく格好いいか、なかなか自分では気付くことができない。自分が何者か、なんのために生きているのかわからなくなったとき、誰か(自ら)の代わりにこの「すばらしい日々」を讃えてくれるような一曲。
09:シャムキャッツ “GIRL AT THE BUS STOP”(石田成美)
この先のことを考えるのは、移動中であることが多い。バスや電車や車の車窓から外を眺めているといろいろな街が流れていって、ふと目についた植物がたくさん飾ってあるベランダに新しい暮らしを想像してみたり、行き詰ったときにそういうことを考えるのは楽しい。そうしてどんどん膨らむ想像の中に、思わぬヒントがあったりする。そんな移動中のBGMにはシャムキャッツがぴったり。
10:Rocketship “I Love You Like the Way That I Used to Do”(石田成美)
自分の中でHomecomingsが始まるきっかけとなった一曲。だいたい同じくらいのタイミングで、4人がそれぞれこのRocketshipというバンドと出会っていて、なんだかそういう偶然が今でもときどきあったりする。お昼ご飯に何を食べるかも、人生における大きな決断も、実はその小さな偶然が重要な要素だったりするんじゃないか? と最近よく思う。