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FENTY BEAUTY、#NoMakeup。美の基準を更新する黒人女性アーティスト

リアーナ、アリシア・キーズ、ビヨンセ、ソランジュほか

2019年2月 特集:美は無限に
テキスト:渡辺志保 編集:竹中万季
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自分の身体を肯定するビヨンセやプリンセス・ノキアの楽曲、アリシア・キーズが立ち上げた#NoMakeupキャンペーン

2001年、ビヨンセがリード・ヴォーカルを務めていたR&BグループのDestiny's Childは、“Bootylicious”という楽曲を発表し、リスナーたちを驚かせました。「Bootylicious」とは、「booty(お尻)」と「delicious(美味しい)」を掛け合わせた造語。もともと、1992年にラッパーのスヌープ・ドッグが使ったフレーズではありますが、ビヨンセはそのフレーズを大きなお尻の女の子を肯定するための言葉にトランスフォームさせたのです。

昨年、『VOGUE』誌の表紙を飾ったビヨンセは、いつも付けているウィッグやエクステンションを外し、最小限のメイクで撮影に挑みました。その時のインタビューでは「女性も男性も、自然な体型の美しさを認めることが大事。私も、帝王切開で出産した後、ウエストがぽっこりしてるけど特にそれを無くそうと急いでいるわけじゃない」と発言しています。

2018年9月号の『VOGUE』の表紙を飾ったビヨンセ。125年の歴史上初めて黒人フォトグラファーが撮影した

スリムではなく、ハリとボリュームのある豊満なボディラインが魅力的なビヨンセですが、その反対が、NYの女性ラッパーであるプリンセス・ノキアです。彼女の代表曲“Tomboy”では<小さなおっぱいとぽっこりお腹(my little titties and my phat belly)>と繰り返すコーラスが印象的。ノキアはもともと痩せ型の女の子。彼女はカリブ海にルーツを持つ女性ですが、特に南米では大きなお尻が人気で、ノキア自身もお尻をボリュームアップさせる手術を考えていたそうです。しかし、男性から「逆に、君の体型は個性的だからストリップクラブで働いたら一番稼げるタイプ」だと言われ、自信がついたそう。

つい最近、グラミー賞授賞式の司会を務めたアリシア・キーズは、<メイベリン(のファンデーション)が私の自尊心まで覆い隠してしまったらどうしよう、今日はヒールも履きたくない>と歌う楽曲“Girl Can't Be Herself”を発表し、女性としての生きづらさや、求められがちなステレオタイプへの反発心を露わにしました。彼女が2016年に打ち出したのが、#NoMakeup キャンペーンです。社会の基準に合わせてメイクをするのではなく、周りからどう見られようと気にせずに女性としてありのままの自分であることを誇ろう、という意志のもと立ち上げられ、現在も多くの人がそのハッシュタグでノーメイクの写真を投稿しています。

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Lenny Letter』で「包み隠すことをやめる」というタイトルのエッセイを綴ったアリシア・キーズは、その後もライブや雑誌のカバーなどでノーメイクで出演している

黒人女性アーティストによる様々な美しさを表現したパワフルな楽曲

私が好きなヒップホップアーティスト、ラプソディがNetflixの番組『Rapture』で語っていたセリフで、とても印象的なものがあります。「地元では、たくさんの女性の親戚と一緒に暮らしていた。彼女たちは、集まるたびにお互いを褒め合うの」。そこでラプソディが学んだことこそが、自尊心や、自己愛といったものでした。

自分たちのルーツを共有しながら常にお互いを鼓舞しあい、認め合いながら美しさを追求している黒人女性アーティストたちの姿からは、どれだけ勇気をもらったか分かりません。様々な美しさを表現したパワフルな歌の数々を、ぜひ皆さんにも聴いてほしいなと思います。

1:Destiny's Child “Bootylicious ”

<アンタに(私のボディを)操縦するのは無理よ!>と歌う歌詞はいつ聴いても堪りません。

2:ビヨンセ “***Flawless ft. Chimamanda Ngozi Adichie”

曲間に、ナイジェリア出身のフェミニスト、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェのポエトリーリーディングをフィーチャーした曲。女性を最も美しくさせるのは、圧倒的な自信なのかもしれません。

3:ミッシー・エリオット “She's A Bitch”

まるでマーベル映画に出てきそうな漆黒の出で立ちのミッシー・エリオットはとにかく大迫力。自分のイメージをこうした形で美しくトランスフォームさせるセンスに脱帽。“ビッチ”という言葉にも「強い女性」という新たな概念を加えました。

4:リル・キム “No Matter What They Say”

盛ってナンボ! のリル・キム・スタイル。「誰に何と言われようと、ウチらはこのまま行くよ!」と呼びかけるコーラスも頼もしい。

5:アリシア・キーズ “Girl Can't Be Herself”

実生活では三児の母でもあるアリシア。そして、ニューヨークに生まれ、競争の激しい音楽業界を生き抜いてきた、文字通り強い女性でもあります。そんなアリシアからのメッセージは、とてつもないほどの大きな包容力が。

6:City Girls “Twerk ft. Cardi B”

激しくお尻を揺らすダンスを「トゥワーク」と言いますが、女性は男性の気を引くためだけにトゥワークするのではなく、我々女性のエンパワーメントのためにトゥワークするのだ、ということを教えてくれた楽曲。

7:ソランジュ ”Don't Touch My Hair ft. Sampha”

黒人女性の髪は、ルーツに宿る美の象徴でもあります。ソランジュは、その美意識をモダンアートと結びつけ、極めて多面的に表現しています。

8:プリンセス・ノキア “Tomboy”

タイトル通り、ボーイッシュなファッションもお似合いのプリンセス・ノキア。彼女はチャリティー活動や、国境・ジェンダーを超えたコミュニティのサポートでも知られており、新世代のアイコンともいうべき存在。

9:リアーナ “Bitch Better Have My Money”

これぞ、私の生きる道! とでもいうべきリアーナの代表曲。「忘れたふりしないでよ!」と嫌いな女に一杯喰らわせる曲ですが、こんな強気なアティチュードのリアーナに共感する女性も多いのでは。新たなスタンダードを作り続ける彼女らしい一曲。

10:リゾー “Tempo ft. Missy Elliott”

ボディ・ポジティヴ、そしてジェンダー・フリーな思想でも知られる注目のディーヴァ、リゾーが発表した最新シングル。ヒップホップ・シーンではアイコニックな存在のミッシー・エリオットをゲストに招き、カーヴィーな女性へ向けたアンセムを歌い上げている。

PROFILE

渡辺志保
渡辺志保

音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタヴュー経験も。block.fm「INSIDE OUT」を始め、ラジオMCとしても活躍中。共著に『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門』などがある。

INFORMATION

毎週月曜日22:00〜 インターネット・ラジオ局block.fmにてヒップホップ専門番組「INSIDE OUT」放送中!
block.fm

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