昔話に出てくる女の子、本当は何を考えていたの?『日本のヤバい女の子』
haru.:昔話に出てくる女性たちを、今の視点でどういう女の子だったか想像して掘り下げている本です。昔話って、長い歴史を経て、いろんな物語や視点がつけたされているじゃないですか。それらを取り払って、登場する女の子たちの考えていることや、置かれていた状況を考察し直して、彼女たちが今の世の中だったらどんなふうに生きるだろうってことを探っているんです。
山田:いい本だよね。ヘマをしてしまった大工がいて、その奥さんが彼にアドバイスをしてそれが採用されたんだけど、アドバイスをされたことが知られたら彼のプライドが傷つくと思った妻が自害してしまって。それを作者のはらだ有彩さんが、どうして死んだのかその妻に聞きにいく、みたいなファンタジー要素がある本だよね。
haru.:私が好きなのは、人魚の肉を食べて不老不死になった八尾比丘尼(やおびくに)という女の子の話。不老不死だから、この子はひとりでずっと生き続けていて、愛する人はどんどん死んでいってしまって。この子の話を読んで、私、結婚できないかもって思ったんですよね(笑)。生きている間にできるだけたくさんの人にたくさんの愛情を与えるべきって思っているから、ひとりの人を愛し続けるのは無理かもしれないなって。
山田:昔は寿命が短くて40歳とかで死んでしまっていたから、パートナーと一生添い遂げるっていうのはリアルだったけど、いまはもっとずっと長生きだから、それくらいのサイクルで添い遂げていけばいいのかもしれないですよね(笑)。
自分のために生きていい。『プリンセスメゾン』
山田:ある女の子がマンションの部屋を購入するために奮闘する漫画です。年収200万円ぐらいのアルバイターで、マンションを買う夢を持っていて。そういう夢っていいなって思ったんですよね。誰かパートナーがいるわけでもないし、自分がこれからどんなふうになっていくのかもわからないけれど、それでも、自分のための自分の場所をつくるってありだなと思いました。自分のためにひとりで生きることはかっこいいし、これからの女性の生き方のひとつだなと思って勇気をもらいました。
自分ひとりだけで完全体になりたい。『ミルクとはちみつ』
haru.:作者のルピ・クーアさんは絵と詩を書く人。私の好きな詩があるんですけど、読みますね。
私の空っぽの部分を埋めるために
あなたが欲しいわけじゃない
私は自分ひとりだけで完全体になりたい
私は完全無欠になりたい
私はひとつの町をまるごと照らすこともできるようになって
そしてそれから
あなたとつながりたい
私たちふたりが結びついたら
そこに火を放ちかねないから
由梨ちゃんが紹介した『プリンセスメゾン』の主人公が自分のためにマンションを買う話とも繋がってる感じがするんだよね。自分ひとりで「完全体」になれるはずだって、私もいつも思っていて。自分が自分であることへの祝福って、他人から評価されなくてもわかっておくべきことだと思うし、そうありたいなって。ひとりで立てる人たちが結びつくとすごいパワーが発せられると思う。
山田:私の劇の最近のテーマも、「人間はもっと個別になるべき」ということ。今回の舞台も、だれも同じ意見がいないっていう人をつくりたかったんですよね。ひとりで立てる状態であることって大事ですよね。
ひとりで立つというのは、「すべてにおいて完璧で欠点がないようにいるべき」ということではありません。ひとりで立てる自分でありたいと願う力と志が、あなたの美しさとなって自分の中に満ちていき、大切な人ともよりよい形で結びつくことができるのではないでしょうか。
人というのはそもそも、バラバラな存在です。でも、バラバラのままは生きていくことが難しい。それぞれに足りないところがあっても、お互いが心地いい存在であるために、自立した個でありたいものです。そんな個が重なった瞬間に、かけがえのないコミュニケーションが生まれていくのかもしれません。
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