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haru.と山田由梨が考える、性差を超えてわかりあうこと

贅沢貧乏の公演レポ&女性が夢を叶えるための3冊の本

2019年3・4月 特集:夢の時間
テキスト:飯嶋藍子 撮影:Kengo Kawatsura 編集:野村由芽
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昔話に出てくる女の子、本当は何を考えていたの?『日本のヤバい女の子』

『日本のヤバい女の子』(著:はらだ有彩)(Amazonで見る

haru.:昔話に出てくる女性たちを、今の視点でどういう女の子だったか想像して掘り下げている本です。昔話って、長い歴史を経て、いろんな物語や視点がつけたされているじゃないですか。それらを取り払って、登場する女の子たちの考えていることや、置かれていた状況を考察し直して、彼女たちが今の世の中だったらどんなふうに生きるだろうってことを探っているんです。

山田:いい本だよね。ヘマをしてしまった大工がいて、その奥さんが彼にアドバイスをしてそれが採用されたんだけど、アドバイスをされたことが知られたら彼のプライドが傷つくと思った妻が自害してしまって。それを作者のはらだ有彩さんが、どうして死んだのかその妻に聞きにいく、みたいなファンタジー要素がある本だよね。

haru.:私が好きなのは、人魚の肉を食べて不老不死になった八尾比丘尼(やおびくに)という女の子の話。不老不死だから、この子はひとりでずっと生き続けていて、愛する人はどんどん死んでいってしまって。この子の話を読んで、私、結婚できないかもって思ったんですよね(笑)。生きている間にできるだけたくさんの人にたくさんの愛情を与えるべきって思っているから、ひとりの人を愛し続けるのは無理かもしれないなって。

山田:昔は寿命が短くて40歳とかで死んでしまっていたから、パートナーと一生添い遂げるっていうのはリアルだったけど、いまはもっとずっと長生きだから、それくらいのサイクルで添い遂げていけばいいのかもしれないですよね(笑)。

自分のために生きていい。『プリンセスメゾン』

『プリンセスメゾン』(著:池辺葵)(Amazonで見る

山田:ある女の子がマンションの部屋を購入するために奮闘する漫画です。年収200万円ぐらいのアルバイターで、マンションを買う夢を持っていて。そういう夢っていいなって思ったんですよね。誰かパートナーがいるわけでもないし、自分がこれからどんなふうになっていくのかもわからないけれど、それでも、自分のための自分の場所をつくるってありだなと思いました。自分のためにひとりで生きることはかっこいいし、これからの女性の生き方のひとつだなと思って勇気をもらいました。

自分ひとりだけで完全体になりたい。『ミルクとはちみつ』

『ミルクとはちみつ』(著:ルピ・クーア、翻訳:野中モモ)(Amazonで見る

haru.:作者のルピ・クーアさんは絵と詩を書く人。私の好きな詩があるんですけど、読みますね。

私の空っぽの部分を埋めるために
あなたが欲しいわけじゃない
私は自分ひとりだけで完全体になりたい
私は完全無欠になりたい
私はひとつの町をまるごと照らすこともできるようになって
そしてそれから
あなたとつながりたい
私たちふたりが結びついたら
そこに火を放ちかねないから

由梨ちゃんが紹介した『プリンセスメゾン』の主人公が自分のためにマンションを買う話とも繋がってる感じがするんだよね。自分ひとりで「完全体」になれるはずだって、私もいつも思っていて。自分が自分であることへの祝福って、他人から評価されなくてもわかっておくべきことだと思うし、そうありたいなって。ひとりで立てる人たちが結びつくとすごいパワーが発せられると思う。

山田:私の劇の最近のテーマも、「人間はもっと個別になるべき」ということ。今回の舞台も、だれも同じ意見がいないっていう人をつくりたかったんですよね。ひとりで立てる状態であることって大事ですよね。

ひとりで立つというのは、「すべてにおいて完璧で欠点がないようにいるべき」ということではありません。ひとりで立てる自分でありたいと願う力と志が、あなたの美しさとなって自分の中に満ちていき、大切な人ともよりよい形で結びつくことができるのではないでしょうか。

人というのはそもそも、バラバラな存在です。でも、バラバラのままは生きていくことが難しい。それぞれに足りないところがあっても、お互いが心地いい存在であるために、自立した個でありたいものです。そんな個が重なった瞬間に、かけがえのないコミュニケーションが生まれていくのかもしれません。

PROFILE

haru.
haru.

同世代のアーティストやクリエイターを中心に制作されるインディペンデントマガジン『HIGH(er)magazine』の編集長(なんでも屋)を務める。『HIGH(er)magazine』は「私たち若者の日常の延長線上にある個人レベルの問題」に焦点を当て、「同世代の人と一緒に考える場を作ること」をコンセプトに毎回のテーマを設定している。ファッション、アート、写真、映画、音楽などの様々な角度から切り込む。

山田由梨
山田由梨

劇作家・演出家・女優。贅沢貧乏主宰。2012年の旗揚げ以来全ての贅沢貧乏の作品のプロデュース、舞台作品の劇作・演出を手がける。自身も役者として出演するほか、デザイナーとしても活動中。主な出演作に舞台 ベッド&メイキングス『墓場、女子高生』(脚本・演出:福原充則)(2014年)、映画 『みちていく』(監督:竹内里紗)(第15回TAMA NEW WAVEコンペティション ベスト女優賞受賞)(2015年)など。2018年1月三島由紀夫×デヴィッド・ルヴォー『黒蜥蜴』出演決定。
http://zeitakubinbou.com/

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『日本のヤバい女の子』
著者:はらだ有彩

2018年5月28日(月)発売
価格:1,512円(税込)
発行:柏書房
Amazon

書籍情報
書籍情報
『プリンセスメゾン』
著者:池辺葵

2015年5月12日(火)発売
価格:596円(税込)
発行:小学館
Amazon

書籍情報
書籍情報
『ミルクとはちみつ』
著者:ルピ・クーア

2017年11月17日(金)発売
訳:野中モモ
価格:1,512円(税込)
発行:アダチプレス
Amazon

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