「女性」と「男性」の「わかりあえなさ」を「わかりあおうと」した先にあるものとは
本を通じて特集テーマについて考えを深めていくトークイベント「She is BOOK TALK」。3・4月は「夢の時間」というテーマで、「眠るときに見る夢」と「これから叶えたい希望としての夢」の両方の「夢」を特集。想像力や妄想力、そして自分が信じる力を育むことで、日々や人生を前に進めて、見たことのない風景を見るための手がかりを得られるような企画を行なってきました。
今回の「She is BOOK TALK」は、山田由梨さん主宰の「贅沢貧乏」とコラボレーション。贅沢貧乏の舞台『わかろうとはおもっているけど』の公演後に、山田由梨さんと『HIGH(er)magazine』編集長のharu.さんが、上演された舞台と、「夢」にまつわるおすすめの本についてお話ししてくれました。
贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』
『わかろうとはおもっているけど』に登場するのは、二人でいることが馴染みすぎて、そろそろ結婚かな、なんて考えているような、なんの変哲もない1組のカップル。彼女の部屋でそれぞれにパソコンをいじったり、寝転がったりしながら、彼女が「友達がね」と話しかけると、彼氏が「その友達って誰だっけ? あ、会社でさ」……というふうに、意識することもないくらいにちょっぴり噛み合わない会話が日常のひとコマのようにゆるゆると進んでいきます。でも、彼女が妊娠した、という出来事から空気が変わり始め……。
贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』
性別というもの自体があまり好きじゃないのに、性別にとらわれてしまうジレンマがある
観劇後は山田さんとharu.さんによるトークを開催。意気投合した二人の話題は、舞台の内容から性差をとりまく社会の現状まで広がっていきます。
haru.:題材にしていることがすごく興味深かったです。私は24歳になったばかりなんですけど、まわりにも結婚や妊娠をする人が増えてきて。でも、実際にパートナーに結婚の話をされても自分ごととは思えないんですよね。次のステップにいこうといわれることに対してすごく恐怖感があって。
山田:東京医科大学をはじめとした大学で、女性や多浪生の得点を減点していたニュースがあったじゃないですか。あと政治家の差別的な発言とか、そういうものが作品をつくるきっかけになりました。「産む体」と「産まない体」があるという事実はどうしても変わらないし、お互いに代わってあげられないじゃないですか。だから双方にいちばんいいコミュニケーション方法を見つけて、わかりあいたいけど、どうやったらそれができるのかなって思って。
haru.:由梨ちゃんは自分が違和感を覚えた政治家の発言とかにちゃんと怒りを表明していて、それを作品にしているのがすごいと思った。私は、性別というもの自体があまり好きじゃないんです。たとえば「かわいいから損してる」と言われたことがあって、それってつまり裏を返すと、評価されるのも、頑張ってるからじゃなくて私が若い女性だからなのかなって思ったり。フリーランスで仕事をしているから、妊娠をして自分が働けなくなったらどうしようとも思うし、性別にとらわれたくないけどとらわれてしまう、この呪縛からとかれるにはどうしたらいいのかいつも考えているかも。
男性が育休を取りにくかったり、女性の賃金が低い日本。だけど、その問題が解決できている国もある
山田:それまでの仕事の流れが壊れるのがこわいっていうのはありますよね。そもそも妊娠自体が命がけだし、女の人にとっても初めてのときはどうしたらいいかわからないことじゃないですか。それはもちろんパートナーも同じだから戸惑いが生まれるのは仕方なくて。「わたし、性役割果たせよって感じ?」ってセリフがあって、けっこう強い言葉だけど、私はこれは「国に言われてることだ」って思って書いたんです。
今、日本では、男性が育休を取りにくかったり、女性の賃金が低かったりいろいろ問題があるけれど、そういう課題を解決して、世界のなかでジェンダーギャップ指数ランキングで1位になっている国だってあるわけで。同じ人間だから、私たちも1位の国のようにできるはずって思うんですよね。でも、さっき言ったように「産む体」「産まない体」があるから、「産まない」男の人はなかなか「産む」人のことを想像しづらい。それを疑似体験できれば、なにかが変わるんじゃないかと思って、今回の舞台ではそのきっかけをつくりたかったんです。
haru.:たしかに想像しづらいですよね。私たちは子どもを産む準備として何十年も生理が続くし……パートナーにPMS(月経前症候群)のことを伝えはするけど、目の前で泣きまくったらやっぱり戸惑われてしまうんですよね。脱走して木に登っておんおん泣いたりしたこともあって(笑)。パートナーは優しくしてくれるけど、そういうときは私も「あなたにはわからないじゃん」ってつっぱねちゃう。
山田:きっと「わからないじゃん」って言われるのもつらいんだよね。だからもっとコミュニケーションしたいと思いますよね。この舞台の最初のシーンも、仲良くしているようで、お互いがお互いの話をちゃんと聞いていなくて。自分がやりたいことをして、言いたいことを言って、それが会話っぽくなってるだけで、実はディスコミュニケーションが生じているんです。
最初のステップは「気づくこと」。「相手のことがわからない。じゃあどうしよう」というところに到達できたら、その先にはそれぞれの解決策が見えてくるはずです。大切な人はどうしてほしいのか? 自分はどうしてほしいのか? 本当に思っていることを伝えられる人はどれだけいるのか? そんなコミュニケーションを叶えるためにどんな心持ちでいればいいのでしょう。そのヒントになる3冊を、山田さんとharu.さんが紹介してくれました。
贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』
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