「なんでだろう?」という違和感を、ずっと大事に持っておく。
野村:「小さな選択」の話でいうと、たとえば日々のルーティンのようなものはありますか?
和田:そうですね……意外とありません。食べ物もその時食べたいものを食べますし、気ままに生きているのかもしれないです。あ。でも、部屋の窓は開けています。自然の空気が入ってくることが単純に好きなので、いつもそうしていますね。
野村:先日のインタビューでは、服を決めるときも「気分で選ぶ」とおっしゃっていましたが、自分の気持ちに正直になるというのは難しいことだとも思います。和田さんはどのように向き合われているのですか?
和田:服なら、着てみて「違う」と思ったら全部着替えます(笑)。私の場合、自分の気持ちに気がつくのは違和感を持った時だと思います。「なんでだろう?」と思った、その気持ちをずっと大事にしますね。考えてわからなくても、いつか気づくきっかけになるので、わからないままその瞬間を心にとどめておくようにするんです。もともとの性格が、「なんでだろう」って思いやすいんでしょうね。
野村:和田さんの「なんでだろう」は、なんというか、キラキラしていますよね。
和田:そうですか?(笑)
野村:私も「なんでだろう」とよく考えるし、聞いてしまうタイプなのですが、ある時その言葉を言われると、責められているようにとらえてしまう人もいると知ったんです。「なんで〇〇しないの?」あるいは「なんで〇〇してしまうの?」といったニュアンスにとらえられることもあるというか……。だけど、和田さんの「なんでだろう」は、世界に対する純粋な疑問なのだろうなと感じます。
和田:日常生活の中で「なんでだろう」と思うことは、たくさんあるじゃないですか。たとえば、私は普段から「あー」って口を大きく開けるのが癖なんですが、グループ(アンジュルム)に所属していた時は注意されていました。あとカメラを睨むように見てしまうのも、ダメ。私は自然な感じで自分を表現したいのに認めてもらえなくて、なんでだろうって思いました。あの時はほんとうに悔しかった。
自分で「アイドル」と名乗っていれば、その人は「アイドル」。
野村:和田さんの新しい曲“Une idole”は、「アイドルはこうじゃなきゃ」という固定観念から逸脱することを歌われていますよね。
和田:この曲で伝えていることをストレートに訳すと、「私はアイドルだけど誰のものでもないから偶像崇拝しないでほしい。でも、私がどんな表現をしたとしてもアイドルと呼んでほしい」と歌っています。ソロになってからは全曲自分で作詞しているのですが、すっごく矛盾したメッセージですよね。ごめんなさい。
でも、アイドルも普通の人間なんだと思います。私は「アイドル」と呼んでほしいけれど、そもそもは人間として生きています。どんな職業でも、みんな同じ人間であることに違いはないと思いますね。
野村:髪も振り乱して、口も大きく開けて、これまでのアイドルの概念から逸脱していても「アイドル」と呼んでほしいと願う、和田さんにとって「アイドル」とはどういうものなんでしょうか?
和田:「アイドル」という言葉を考えるきっかけがあったんです。今、いろいろなタイプのアイドルがいますよね。ロックを歌っていて見た目もカッコいい感じのグループもあれば、気だるい雰囲気が印象的なグループもあって、それぞれに魅力があるじゃないですか。
そういう話を人としていた時に「でも、それはアイドルじゃない」と言われたことがあって。アイドルの王道をいっていなければ排除されてしまう、違ったらアイドルの枠から出して話そうとする、その時にものすごく違和感を感じました。アイドルのあり方だって豊かでいいはずなのに。
野村:多様なアイドルがこれからも生まれるでしょうし、それぞれに魅力や素晴らしさがあるはずですよね。そうなったときに、和田さんにとって、アイドルの定義みたいなものはあるのでしょうか?
和田:そうですね……アイドルの定義については考えないといけないと思っているけれど、今はまだ考えてもわからないですね。ただ、私がアイドルでありたい、ということはひとつあると思います。
野村:たとえば周りからはシンガーソングライター、と言われている人がいたとして、その人自身が「アイドルです」と言っていたら、その人はアイドルなんでしょうね。
和田:そうですね! その人の心の持ちようですよね。