能町みね子とジェーン・スーが語る「結婚と恋愛は切り離して考える」

能町みね子とジェーン・スーが語る「結婚と恋愛は切り離して考える」

結婚のシステムを「型にはまる」という視点で考察

2020年1・2月 特集:これからのルール
テキスト:阿部洋子 撮影:中里虎鉄 編集:野村由芽
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2018年にゲイ男性・サムソン高橋さんと「結婚(仮)」をした能町みね子さん。最新作『結婚の奴』は、サムソンさんとの結婚に至るまでのプロセス、そして二人の生活を綴った私小説。こちらの刊行を記念して、能町さんとジェーン・スーさんのトークイベントが12月22日に日比谷コテージで行われました。

選択的夫婦別姓や同性婚を求めるアクションが活発な今、従来の「結婚」は窮屈だと感じている人も多いのではないでしょうか。それでも人が「結婚」を選ぶのは一体なぜ……?

結婚について考え抜き、新しい形の結婚生活を実践しているお二人のお話は、結婚したい人もしたくない人も考え中の人も、必見です。

完璧な結婚式に行って、再度結婚に打ちのめされる。(ジェーン・スー)

能町:スーさんとのトークイベントは、2019年4月の代官山蔦屋ぶりですね。今回は第4回目。私たちはお互いの生活についての定期報告会をわざわざ人前でやっている感じですね。

スー:一度、非公開で飲んだこともありましたよね。神楽坂でスタートしたけど、最終的に上野の不忍池でずっと喋ってるっていう(笑)。今日は能町さんの新刊『結婚の奴』の刊行記念ということですが、各話の見出しが「ジェラートピケ」とか「ストロングゼロ」とか全部7文字で、本のタイトル自体も7文字ですよね。最初から狙っていたんですか?

能町:もともと「ウェブ平凡」の連載のときから見出しは7文字にしていたんですけど、タイトルは意図していなくて。ウェブ連載のタイトルは「結婚の追求と私的追求」だったんですが、書いているうちにイメージが変わってきてしまったので、それはやめたかったんです。それで他のタイトルを考えているときに、新宿二丁目の「Bar星男」のマスターから「あの結婚のやつ、本になるんでしょ?」と言われて、「あ、それだ!」って思ったんですよ。

能町みね子さんと『結婚の奴』

スー:そういう経緯があったんですね。

能町:そこから「やつ」を漢字の「奴」にして。他にも「結婚という概念に対する奴隷」や「結婚という憎たらしいやつ」という意味も込めたトリプルミーニングです。音数も7文字だし、すごくいいなと。

スー:それでこのタイトルになったんですね。実はちょうど昨日、親戚の結婚式に行ってきたんですよ。

左からジェーン・スーさん、能町みね子さん

能町:おお! すごいタイミング。

スー:この結婚式が、最近の「我が我が(われがわれが)」ブームとは一線を画す、親及びお世話になった人をちゃんと安心させるタイプの完璧な結婚式だったんです。私と血が繋がってるとはとても思えない(笑)。多くの場合、新郎新婦のどっちかがやりすぎてしまったりするじゃないですか。

能町:ありますよね。まあ別にやりすぎたとしてもそれはそれで悪いことではないんですけどね。

スー:そうですね。昨日のはちゃんとしたホテルのチャペルで式を挙げて、披露宴も大広間で丸いテーブルを囲んで、最初の乾杯の挨拶は小学校の先生。お友達も、ここは「お世話になった人たちに感謝を伝える場所」だってちゃんと理解して振舞っていたんですよね。

能町:すごいですね……。和装だったんですか?

スー:洋装なんですけど、新婦は白のオフショルダーのオーソドックスなドレスを着ていて。これを選べるということは、今までの人生にある程度満足しているってことだと思うんですよ。ここが一世一代の舞台だ! と思っていたら、もっと髪型やドレスを派手に盛ったりすると思うんです(笑)。

それで改めて「ちゃんとした結婚式、私にはムリ!」と思ったんですよ。もちろんこのトークイベントもあったから、「シメシメ結婚式だ、観察してくるぞ」なんて思っていたんだけれど、行ってみたら再度結婚に打ちのめされるというか。

私は「型にはまることへのパロディ」みたいなことがやりたい。(能町)

能町:絵に描いたような結婚式ですよね。私はそこまで打ちのめされるのは出たことないですねえ。

スー:20代だったら泣きながら帰ってきたと思うんだけど、そこは40代なので(笑)。それで改めて、どうして結婚は「おめでとう」って言うんだろう? と考えた結果、誰かと一緒にいることを選び、生活が始まる、回っていくということに対して「良かったね」っていう意味合いなのかなと思って。能町さんは「結婚(仮)」とおっしゃっていますけど、「おめでとう」という感覚についてどうですか?

能町:その意味だと、私が選んだ結婚の形は自分ではおめでたいことだと思います。でもそういう一般的な、形のしっかりした結婚のおめでたさっていうのはよく分らなくなってきますよね。

スー:あ、まさにその「形が作られた」ということが世間的にはめでたいんじゃないですかね。

能町:「世間が求める結婚という形にはまりました。おめでとう」っていうことですか?

スー:そうじゃないかな。いちおう、幸せの形として認識されてるし。あと、ある程度大人になると、新しい生活は結婚という「形」を通して進められるんだ、このくらいの年齢になればパートナーがいて当然だっていう、暗黙の了解みたいなものがまだあると思うんですよ。

能町:ああ、そこに沿っていくことが良しとされると。

スー:昨日は親族の席に座っていたんですけど、周りには乳幼児や子供がいて、そうすると私だけ手持ち無沙汰で忘れ物したみたいな感じになっちゃったんですよね。「レンタル子供」とかいればいいのにと思って。

能町:まさに形だけの子供ですね(笑)。

スー:そうそう。やっぱり当事者も周囲の人にとっても、型にはまっていたほうが安心するじゃないですか。

能町:型からはずれると居心地悪いですもんね。確かに自分からどんどん型にはまっていく人もいますよね。私、この間二子玉川に行ったときにそれをすごく感じて。

スー:二子玉川! あの街はあの中で完結されている感じがありますよね。ディズニーランドみたいな、架空の街のような雰囲気があるというか……。

能町:人の服装も似ているんですよね。私が行った時期は、オフホワイトやベージュのトレンチコート、もしくは長いダウンの人が多くて、「まさかこの服しか着てはいけないのか……?」と。まさにメルヘンの世界のように感じて。

だからこそというか、私は「型にはまることへのパロディ」みたいなことがやりたいと思っているんです。私とサムソンさんの関係も「結婚」といわずに「単なる同居です」「同棲です」「ルームシェアです」って言ったとしても、実態は別に変わらないんですけど、「結婚」って言ってみたいんですよね。おもしろいから。

スー:「結婚(仮)」をしてもうそろそろ2年が経ちますよね。いかがですか?

能町:私自身が型を愛しちゃってるのかもしれないのですが、さほど不安定な感じにならないんですよねえ。大げんかも皆無。猫も飼い始めましたし。

スー:猫が写っているインスタ、拝見してますよ。猫がいることによって、これまであまり表に出ていなかったご家庭の様子が写真に出てくるようになってきたじゃないですか。

能町:猫がいたらインスタをやらざるをえないんですよ……。部屋が汚いのもだんだんどうでもよくなってきちゃうんです。

スー:むしろそういう部分が見えると、ちゃんと生活があるんだなっていうのが伝わってきていいんですよね。能町さんも前にどこかで「それもある種の惚気だ」っておっしゃってたじゃないですか。

能町:そうですね。「結婚(仮)」を通して、結果的に私は「惚気」をやっているのかもしれません。夫のサムソン高橋さんに恋愛感情はないけれど、人としてありがたいなと思っていますし、猫はただただ好きだし。さらに猫がいるから家に帰らなきゃみたいになってくると、どんどんある種の型にはまっていっている。

PROFILE

能町みね子
能町みね子

北海道出身。近著「雑誌の人格」「雑誌の人格2冊目」(共に文化出版局)、「ほじくりストリートビュー」(交通新聞社)、「逃北」「言葉尻とらえ隊」(文春文庫)、「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。ほか雑誌連載多数、テレビ・ラジオにも出演。

ジェーン・スー
ジェーン・スー

コラムニスト/ラジオ・パーソナリティ/作詞家
東京生まれ、東京育ちの日本人。現在、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~金11:00~)のパーソナリティを担当。2013年に発売された初の書籍『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)は発売されると同時にたちまちベストセラーとなり、La La TVにてドラマ化された。2014年に発売された2作目の著書『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』は第31回講談社エッセイ賞を受賞。毎日新聞やAERAなどで数多くの連載を持つ。最新著書『これでもいいのだ』(中央公論新社)が発売中。

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『結婚の奴』

著者:能町みね子
2019年12月23日(月)発売
価格:1,650円(税込)
発行:平凡社
平凡社サイト:『結婚の奴』

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  • 有島緋ナ
    何十年もモヤモヤしていたことが、まさに言葉になって目の前に現れたと感じました。
    今、私は50代で、恋愛も結婚も自分には合わないと実感してきた、学んできた人生でした。ですが、今回の対談を拝見して、私はもっと自由に感じて自分なりのスタイルを探せばよかったのだと後悔しております。

    今の私は、健康寿命を意識してできるだけ楽しく過ごせるようにとか、その後の本当の寿命がくるまでをどうやって経済的に乗り切るのかという現実が目の前に立ちはだかっています。恋愛も結婚からも遠いところへ来てしまったので、お二人が大変うらやましいと同時に、若い世代の方々には、家族・親戚・友人といった周囲の常識や世間の目は脇へ置いて、ご自身の本当の幸せを模索していただければと切に願っております。
    Feb 22.2020

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