デートの待ち合わせなどで“ちょっと背伸びをする”瞬間を演出する助けになればという思いで服を作るBELPER
最後にご紹介するブランドは「BELPER(ベルパー)」。BELPERは、どこまでもリアルな感じのするブランドです。
そのリアルさは、デザイナーの尾崎雄一さんの想像力の丁寧さと正確さからきているのだろうけれど、男性である尾崎さんがウィメンズのお洋服をこんなにリアルに作っていて、かつミューズはいないとおっしゃるものですから、「一体どうやって考えているの?」というのが尾崎さんに対する私にとっての最初の疑問であり興味でした。
思い切って尾崎さんに、「どうやってアウトプットを考えているんですか?」とお伺いしたときに、「そのお洋服を着ている人との“待ち合わせ”を想像する」と言われ、そして、その流れで「デートの待ち合わせなどで“ちょっと背伸びをする”そんな瞬間を演出する助けになればとお洋服を作っている」なんて言われてしまい、ますます面白くて素敵なブランドだなと思ったのをよく覚えています。
BELPERのお洋服はTOKYO解放区でも何度かお取り扱いをしていて、年々本当に「リアルクローズ」になっていくのを感じています。映画をいつもインスピレーション源にしているBELPER(20SSは『華麗なるギャッツビー』です)ですが、シーズンコンセプトやシチュエーションを上手に「背伸び」を加えながら昇華させ、着たくなるリアルクローズにしてしまうのがBELPERのすごいところだと思っています。
BELPERデザイナーの尾崎雄一さんにも、「これからのルール」をテーマにコメントをいただきました。
着ていて、テンション上がるものでありたいですね。そして、作る上で意識しているものは「背伸び」の瞬間。例えば、普段スニーカーだけど、今日はヒールにしようかな、とか。それって精神的なものだとは思うんですが、日常のちょっとしたファッションでの背伸び(自己演出)が1日の気分を変えると思っていて、BELPERがその瞬間の一部になれればと思ってデザインをしています。
世の中のルールというのかはわからないですが、音楽でもなんとなく適したシチュエーションっていうものがあって、それを裏切ることを演出の一部として使うことってあると思います。適当な例で言えば、パンクバンドが綺麗なコンサートホールでライブをするってなったら良いか悪いかは別として何か意図してることがあるんだろうなと思ったり、はたまた、オーケストラがナイトクラブで演奏するっていうのもありなのかもしれません。
何がルール(正しいとされてること)かという部分と常に向き合って、逆らうのか逆らわないのかを選択して取り組むことが大事なことだと思います。
表参道で、着物を着て歩くということが日本なのにもはや浮いてしまう時代。街並み、車、音楽、テクノロジー、匂い、いろんなものが常に変化し続け、それに対していろんな形で服も同じく変わっていっている。その変化をいかに楽しんで向き合えるかが「背伸び」の瞬間を演出する上では大事な部分になるなと思っています。
お洋服の、「おまもり」みたいに自分を強くしてくれるところが私はとても好きです。もちろん、ファッションにはコミュニケーションツールの側面も多くあります。でも、誰かのため・社会のために装うだけでなく、おまもりみたいに、自分のために装うことも素敵だなと思っています。
そして、自分のために装うのなら、尚一層のこと、お洋服のことを知ってもらいたいですし、知りたいと思ってもらいたいです。知ることで同じ「纏う」行為に幾層もの意味を重ねることができるし、ファッションはたのしんで生きていくためのきっかけにいくらでもなれることや、愛しんでしまいたくなるものだということを再認識することになるはずです。
そして、一緒にファッションを愛しめるひとが世界にどんどん増えたら、TOKYO解放区の思いでもある「ファッションをたしなみ、カルチャーをたのしむ。」ことにつながると信じております。会期は二週間ございます。是非店頭にもあそびにきてくださいませ、お待ちしております。
- 5
- 5