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2020年4月4日、5日(植本一子)/違う場所の同じ日の日記

「私たちがいるから書けるんでしょうが!」

テキスト:植本一子
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2020/4/4 土曜 晴

朝起きて冷凍庫を開けると、まさかの冷凍ご飯ゼロ。パンもゼロ。仕方ないのでご飯を炊くところから。お腹が空いてイライラするけど、作らなければ始まらない。いりこで出汁をとって味噌汁。具には麩、ネギ、わかめ、だし殻のいりこの身。昨日の夕飯の残りの鶏胸肉のピカタ、ひじき、きんぴらと、炊き立ての白ごはんで朝とも昼ともいえない時間に4人で食事。
食後、ミツと子供達が公園にボール遊びをしに行くというのでついて行く。天気がいいこともあり、子供連れの結構な人出がある。外出自粛要請ということで、みんな家の近くでのんびりしているのだろうか。公園くらいは、行ってもいいんだよね? と思いつつ、政府の指針がいまだによくわからないので、みんなが探り探りやっているように感じる。東京の公園ではボール遊びが禁止されているようで散歩に変更。ぐるっと歩いてスーパー経由で帰宅。風があるので桜の花びらがばんばん飛んでくる。
家に帰って賞味期限の近い強力粉を使って食パン作り。子供達がずっと家にいることもあり、常に食事を作っている気がするが、とうとうパンまで焼き始めることに。久しぶりにホームベーカリーを引っ張り出し、ネットでレシピを調べてスイッチオン。4時間ちょっとで焼き上がる。
夕飯はミツの提案でたこ焼きに。さっきスーパーでボイルだこを見つけ、今日は簡単に済ませよう、となったのだ。土日はミツが率先して料理をしてくれることもあり、準備もてきぱきと進む。私はさっき買った新玉ねぎでサラダを作る。スライスしたものを水にさらし、水気を切ってお皿に盛り付けたら鰹節をかけるだけ。テレビで『天才!志村どうぶつ園』の志村けん追悼特番を見ながらたこ焼きを焼く。千円ほどで買ったたこ焼き器のテフロンが寿命なのか、最近うまく焼けなくなってきた。あまりに焦げ付くので、その場でヨドバシカメラのオンラインで新しいたこ焼き器を注文。腹が立つのでガス式の今より数段良いものにした。一生使ってやる。食後に愛媛産のオレンジ。
夜なかなか寝付けず、いとうせいこうさんと星野概念さんの共著『自由というサプリ』(リトルモア)を読む。装丁が凝っていて可愛い。

2020/4/5 日曜 曇り

朝、チャイムの音で目が覚める。娘が出ると、なんともうヨドバシからたこ焼き器が届いた。そんなに急がなくてもいいのに、なんだかすみません……。最近はクロネコヤマトが、新型コロナウイルス感染予防のために、対面での受け取りではなく、インターホンなどで非対面での受け取り希望を伝えると、玄関の前などに置いて行ってくれるサービスを始めたという。それはいい! と子供達にやり方を教えようとしていた矢先に、またチャイムが。結局対面での受け取りで、今度は目黒の「花すけ」から花が届いた。花すけは友達のジロケンが一人でやっている花屋さんで、コロナでしばらく買いに行けていなかったこともあり、いっそのこと送ってもらうことにしたのだ。お花はお任せでお願いしたが、いろんな花の入った賑やかなブーケが届いた。上の娘に花瓶にいけてもらい、玄関に飾る。花があるだけで気分がずいぶん変わった。嬉しい。
昼間は延々原稿の直し。3月の1ヶ月間、毎日日記を書いていた。推敲するためにも時系列に読んでいくが、最初の頃はコロナを甘く考えている自分がいて辛い。後半は感染者数も増えて、これからどうなるのかが見えなくて辛い。総じて辛い。最初は、これを4月中には自費出版で出し、友達のお店に卸そうと考えていたのだ。今、どこの個人店も経営が厳しくなっている。書店なんて特にそうだろう。なので、私なりの友人支援策でもある。しかし、まだまだコロナの渦中にいることもあり、これ売れるのか? とも考える。タイトルは『個人的な三月 マイコロナジャーナル(仮)』とした。
夕飯はほたるいかの炊き込みご飯と、ゴボウと豚肉の甘辛炒め、味噌汁は大根と麩とワカメ。おかずは下の娘がお手伝いをしてほとんど作ってくれた。
明日子供達は始業式。寝る時間になったので、居間で原稿を書こうとしていると、娘がパソコンを覗いてくる。見ないでよ、と隠すと「私たちがいるから書けるんでしょうが!」と言い出すので笑ってしまった。全くその通りです。
昼間のコーヒーのせいか、なんだか寝付けず、夜中に結び昆布を煮た。

「違う場所の同じ日の日記」
この日々においてひとりひとりが何を感じ、どんな行動を起こしたのかという個人史の記録。それはきっと、未来の誰かを助けることになります。
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PROFILE

植本一子
植本一子

1984年、広島県生まれ。2003年、キヤノン写真新世紀で荒木経惟氏より優秀賞を受賞し写真家としてのキャリアをスタートさせる。広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活動中。13年より下北沢に自然光を使った写真館「天然スタジオ」を立ち上げ、一般家庭の記念撮影をライフワークとしている。著書に『働けECD わたしの育児混沌記』『かなわない』『家族最後の日』、共著に『ホームシック 生活(2〜3人分)』(ECDとの共著)がある。

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