2020年4月4日、8日(かとうさおり)/違う場所の同じ日の日記

初めて自転車に乗れた幼い頃の、世界が動き出したような感覚

テキスト:かとうさおり
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4月4日(土)

朝起きてメールチェック。

She is編集部さんから、コロナウイルスと向き合うプロジェクトを立ち上げたとのメールが届いていた。昨晩、SNSで目にしていて改めて彼女たちの行動力や考え方、大切にしているものへの思いに感銘を受けていたところ。
ROOKIEのコントリビューター達が立ち上げたというオンラインコミュニティのコラージュキットをメインビジュアルに使ったというのも、親和性を感じて素晴らしいなと思った。
ぜひこのプロジェクトに参加させて頂きたいと即、返信する。

パンとコーヒーの朝食の後、軽く掃除をして洗濯物を干す。
春らしく穏やかな天気。ベランダで栽培しているスナップエンドウもいくつか実をつけていて、近々食べてみようと思う。実は小さく、さやもツヤツヤしていない。スーパーで売っているものの方が絶対に美味しいだろうな。。

午後の仕上げ作業のために、ラップチャートを流しながら作っているポーチのファスナーだけ先に作業しておく。少しでも細かな作業を進めておくと随分とその後の作業が楽になる。ドレイクの新曲がリリースされていた。最近はダベイビーが聞きやすくて良く聞いている。

パパッと昼食の焼うどんを作り、食べる。

週末は不要不急の外出は自粛となっているのだけど、もう数ヶ月美容院に行けておらず人前に出る予定が迫っていたので、どうしようもなく罪悪感を感じながらも堀江へ向かう。
駅に向かうまでの公園は賑わっていて、最近はスケートをする人が増えたように思う。漫画「SKETCHY」みたいなかわいい女の子スケーターがいて、目を奪われる。神々しいレベル。いいな。
公園の霞みがかった桜が、恐ろしいぐらい綺麗。

御堂筋線は、いつもの週末ならぎゅうぎゅうに混んでいるのだけど、とても空いていた。椅子に座る余裕があるぐらい。平日に仕事に行く時の方が、めちゃくちゃ混んでいる。いつも満員電車に気持ちが負けてしまうので、いつもA$AP ROCKYの「F**kin’ Problems」を爆音で聞いている。

今日はもうすぐ読み終わりそうなジョージ・オーウェルの「パリ・ロンドン放浪記」を読みながら地下鉄に揺られる。
心斎橋で下車し、駅構内のドラッグストアへ寄る。もう滅多にお目にかかれない除菌ハンドソープが奇跡的にたくさん売られている。職場の皆と使おうと思い、一つ購入。野菜ジュースも。

御堂筋を南に下りながらアメ村を抜けて堀江方面へ。
車道も歩道もガラガラで、アップルストアが休業していた。

堀江オレンジストリートに到着。いつも堀江に来た時は、SUPREMEの混雑状況でどれだけ人が多いのか計っているのだけど、今日はSUPREME自体が休業していた。あの筋肉もりもりの屈強なガードマンたちはどうしているのだろう。BIOTOPにもえさんはまだいるかな? と思ったら、BIOTOPもお休み。

美容院に到着。誰かのおうちみたいなインテリアの、のんびりと静かな店内がいつも以上に和む。いつも髪の毛をお任せしているゆめちゃんと、色々話す。仕事のことやコロナウイルスのこと。見ているドラマや女子アナファッションが似合わないことについて。おしゃべりしていたら、あっという間に時間が経ってしまい髪の毛は可愛くさっぱりと仕上がっていた。

お店を出て斜めにFastcut Recordsの看板が見えた。開いてる。
もうすぐ堀江のお店をクローズして、お店は加古川に戻ってしまうとSNSで見たばかりで、自粛自粛と思いながらも、村上くんにしばらく会えなくなるなと思い寄ってみる。今日はお休みとのこと。残念。。今度いつ会えるのだろう。
この場所や、いつも誰かしらライブやイベントをやっているから会えているみんな。今や随分と会えていないけど、元気かな。また早くみんなのライブが見たい。
いつもなら寄り道して帰るところだけど、また御堂筋線に乗ってそのまま帰宅。

Men I TrustのTシャツが入荷していたと帰ってからFastcutのインスタグラムで気づく。見逃した。。

コーヒーを淹れて飲み、夕飯まで制作の続きとメールチェック。

元町映画館の支配人、林さんよりメールが来ていた。関西の映画館を支援するプロジェクトについて。
わたしの影響力など微力すぎるけれど、一人でもわたしの発信でこの情報を知ったという人が現れるかもしれない。そうだとしたら絶対に協力したい。メールに書かれている関西の映画館は、わたしの活動・心の拠り所でもあり、今まで本当にお世話になった。支配人さんたち、スタッフの皆さんの顔が浮かぶ。映画館のお客さんのためにも、絶対に最悪の事態になってほしくない。

もっとダイレクトにお金に変えることができる支援はできないかと考えてみる。販売物をお世話になった本屋さんと映画館にそのまま寄付するとか。。など考えてみるけど、現実的に一人で全てをやっている状況で、今でも一人明け方までミシンを動かしているというのに、そのための販売物を作ることが物理的にできない。無力すぎて悲しい。それでも、何か考えてみよう。

夕食後、さっき誠光社さんのインスタグラムでの紹介で見たブローティガンの「芝生の復讐」からの一編、「いまいましい四月」がどうしても読みたくなり本棚から探す。意外と手前の方にあった。読むのは10年ぶりぐらいで内容はほぼ忘れていた。面白い。。
巻末の岸本佐知子さんの解説を読む。初めて読んだ時もただならぬ感銘を受けたのを覚えていた。
訳者の藤本和子さんが「クールエイド・ワイノ」の「illuminate」という単語を「黙示」と訳したことについて。「illuminate」という単語自体もとても美しい単語だけれど、この訳によって生まれる神秘性は計り知れない。「小さいながらも奇跡的ともいえる黙示の世界」。わたしもそんなものづくりがしたいと思った。
岸本さんは、「藤本和子のいなかったアメリカの読者を、気の毒に思う」と締めくくっているが、岸本さんこそわたしにとってそんな存在だ。素晴らしい訳で海外文学を読めることにひたすら感謝の気持ちでいっぱいだ。

お風呂まで一心不乱に制作の続き。
明日の朝には商品を発送したいし、なんならスムーズに作業が進んだら今日は「スケート・キッチン」を観たいとさえ思っている。DVDがやっと出てとても嬉しい。あの女の子たちがスケートで滑ったNYは、今は人のいない街角になっていることだろう。。
胸が締めつけられる。

休憩しながら、次に頂いている仕事のあれこれを考える。
この状況で楽しいお仕事をたくさん頂けるのは、とても恵まれているとしみじみ思う。
そして、わたしにお仕事を依頼してくれる皆さんはファイターばかりなので、元気も頂いている。未来を見ている。

一件はこれで行こうと思うカラーリングが先に降ってきた。
あとはデザイン。
わたしを指名してくれた方のために意地でも売らなければというプレッシャーもあるけれど、任せてもらえることをただ幸せに思う。

やはり「スケート・キッチン」は明日になりそう。

Spacemothのかすみさんとメール。いつも暖かく柔らかい雰囲気なのに、とんでもなくエッジーなかすみさんは、常にわたしの憧れの女性だ。

P.D.ジェイムズのこれまでの作品について解説を読み、考えながら就寝。リモートワークしている西田が家から全然出れないので手紙を送ってと頼まれているけど、ほぼ毎日LINEしているので最新情報がほぼ無い。何を書こうかな。ということも考えながら。

4月8日(水)

起床し、メールチェック。朝食。

昨日、大阪にも緊急事態宣言が出た。

昨日の夕方の時点で、すでに梅田の人通りはかなり減っていた。
これが梅田か。
少しでも電車に乗りたくないので、職場から梅田まで最近は歩くようにしているのだけど、昨日は地下街に入るとディアモールのファミリーマートでペットボトルの飲み物が100円セールになっていた。明くる日からの売り上げを考えてのことだろう。コンビニがセールをするのを初めて見て、ざわざわと暗い気持ちがにじり寄ってきた。

簡単な買い物もできなくなるかもしれないと思い、破れたまま気づかぬふりをしていた靴下を、昨日のうちに無印で買い換えておいた。3足で790円。どれも味わいのある色味でかわいい。

今朝調べてみると、いつも利用しているうめだ阪急、ルクア大阪、阪急三番街、紀伊国屋書店、丸善ジュンク堂、などなど全て5月までまたは当面の間は休業とのこと。お取引先の梅田蔦屋書店さんの担当さんの顔が浮かぶ。みなさん、大変な時を過ごしておられるだろう。。

さらに千里中央の商業施設も軒並み休業とのこと。もはやユニクロにさえ行けない。
JWアンダーソンコラボのワンピースの生地感を触って確認したかったけれど、もはや叶わない。あきらめよう。

地元のTSUTAYAで借りていたDVD(しかも「ジュマンジ/ネクストレベル」)を今日のお昼までに返さないといけないので、10時に家を出る。地元のTSUTAYAは開いているらしい。アマゾンプライム、ネットフリックスにも加入していることだし、あらゆる可能性を考慮して実店舗でレンタルするのはしばらくやめておこう。

車で10分弱、自転車なら20分ほどの距離。車で行こうと思ったら、家族が車で出勤してしまっていて影も形も無かった。一瞬殺意が浮かんだが、お天気もいいし、自転車で行くのもいいかも知れないと仕切り直し。

緊急事態宣言の街に初めて降り立つわたし。少し緊張感がある。

どのお店もだいたい開いていて、いつも通りだった。大阪市内とは別世界のよう。
お花屋さんだけしまっていたけど、定休日かもしれない。

暖かく、桜も満開。信号待ちで目を閉じてみる。瞼にあたる風が、とても心地よい。
初めて自転車に乗れた幼い頃の、世界が動き出したような感覚を思い出す。
あらゆるシーンにおいて、手を離さないと誰かが言う時、ほぼその手は離される。また、それを薄々そのことに気付いてしまっているあの感覚。そんな事まで。

TSUTAYAに到着。なんと一人ずつ検温必須とのこと。37.5度以下なら入店できるそうだ。隣のドラッグストアでは、スタッフ総出で買い物かごを一つずつ消毒していた。あれは大変そう。。ご苦労様です。。

お向かいのスーパーで食料品を買う。うちから一番近いスーパーではプチ買い占めが始まっているが、ここは商品が豊富でのんびりした雰囲気。少しエリアが変わると全然違うものだ。
非日常の時ほど生々しい物を喰らいたくなるもので、生産者の顔が見える系のアスパラやいちごなど新鮮な野菜などを買って帰った。

さっき買ったアスパラ(なんと12本も入っていて嬉しい。アスパラ大好き)とベーコンでパスタを作り、昼食。

午後からは頂いたお仕事のお題である本の続きを読む。

この際にと本棚とワードローブの大掃除をしたり、飽きたら本をまた読んだり。また掃除したり。アイスを食べたり。

SNSでspacemothさん、1003さん、toi booksさんの休業のお知らせを目にする。
いつもの日常はなんて尊いものだったのだろう。そこにあるということ自体が嬉しい存在のお店ばかり。次に訪ねることができる日が、できるだけ早ければいいな。
Fastcut Recordsは堀江のお店のクローズを一気に早めてしまったそうだ。。新店舗で再会したい。

夕方のニュースで神戸の街の空撮と、大阪心斎橋のレポート。
知っているいつもの街に全然人がいない。

神戸元町に遊びに行くと、元町商店街の隙間から、 spacemothさんのある栄町の路地から、ちらっと見えるポートタワーが好きだった。そんなことを思いながら、上空から写るポートタワーを眺める。

しょうちゃんから、日本紐釦(読み方は「にほんちゅうこう」。大阪本町にある手芸問屋)が11日からしばらく休むらしいと連絡が入る。
布がないとトートバッグが作れなくなるので、シーチングは大量に買っておいたのだけど、ポーチ用のファスナーのことを忘れていた。なにしろ、ユザワヤはもうしばらく開かないのだ。もしチャンスがあれば、この日までにまとめ買いに行かなければ。

紐釦に行くときは、だいたいtoi booksさんにも寄るのだけど、今は開いてないのだと思うとまた寂しくなる。オンラインショップがスタートしたら、たくさん利用しよう。

しょうちゃんとは常々、手芸情報を交換しているのだけど、広い心の持ち主である彼女はこの間マスクゴムも分けてくれた。
マスク不足の中、マスクを手作りする人が増えていて、マスク同様にマスクゴムも希少化しているのだ。入荷したら人が殺到し、一瞬で売り切れるらしい。わたしはマスクゴムの姿を見たこともない。先日行った手芸屋さんでは、マスクゴムを作る事ができるという代用品の布が売られていた。代用品って。

spacemothかすみさんとメール。大変な時期にも関わらず暖かいお言葉を頂く。。

インスタストーリーにアップした、しょうもない投稿に1003千織さんがDMをくれた。
必ずまた元気に乾杯しようと誓い合う。

緊急事態宣言1日目。大きく困ったことは何も起こらなかった。
何日かしたら気持ちも慣れてくるだろうか。

今日は一枚も縫っていない。5月にお誘い頂いているイベントがどうなるかは分からないが、毎日少しずつでも作業して、作りためておいたほうが身のためだろう。

気分転換にiphoneの壁紙を変えて就寝。大好きなイラストレーター、ピエール・ルタンが描いた絵にした。

「違う場所の同じ日の日記」
この日々においてひとりひとりが何を感じ、どんな行動を起こしたのかという個人史の記録。それはきっと、未来の誰かを助けることになります。
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PROFILE

かとうさおり
かとうさおり

色彩、記憶、物語をテーマに2014年にNINE STORIESとしてものづくりの活動を衝動的にスタートする。
活動名の由来は、たくさんの物語を作っていきたいという思いを込めて。
百貨店催事や個展を中心に大阪にて活動中。
自主企画として映画上映やトークイベントの企画に携わるほか、
映画館、配給とのコラボレーション企画も行っている。
読書好きが高じて、読書の楽しみを広める活動として古本市への出展、企画にも携わる。

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