2020年4月4日~10日(大崎清夏)/違う場所の同じ日の日記

ふたりと繋がったまま外に出て、海と富士山に沈む夕陽を見せてあげた

テキスト:大崎清夏
  • SHARE

4月4日

朝、ひとけの少ない近所の広いカフェでコーヒーとハンバーガー。陽射しが暖かくて気持ちいい。午後、電話がふたつかかってくる。用件はともかく、人の声を聞けるのが嬉しい。
夜、ワタナベマキさんの『まずは塩しましょう。』のレシピで、塩セロリとアーモンドの混ぜごはん、塩セロリ入り納豆。デザートにホワイトミント&ショコラ味のハーゲンダッツ。ずっと見たかった「POSE」がNetflixに入ったので見よう見ようと思いつつ、なんとなく見る元気がない。

4月5日

晴れ。予定がなさすぎて、何をすればいいかわからない。窓を拭いたり、放ったらかしだった鉢に多肉植物を植え替えたりしてみる。請求書を一通、ポストに投函しに出かける。自転車だと運動不足になりそうなので歩く。その足で明日のオンライン飲みのための缶ビールを買いに行って、広いカフェですこし読書。周りは普段と何も変わらないように見える。うまく呼吸ができなくなってくる。帰宅。
夜、ヨガ動画をネットで探してヨガをして、テレビは一瞬つけてすぐ消して、適当に音楽をかけたらUAが「温度」を歌ってくれて、タテタカコさんが「今日を歩く」を歌ってくれた。泣いてしまった。

4月6日

仕事仲間のMさんKさんと陽が暮れる前からオンライン飲み。ビール2缶ですっかり酔っぱらう。最後はふたりと繋がったまま外に出て、海と富士山に沈む夕陽を見せてあげた。

4月7日

スーパーへ買い出し。「TVで話題 免疫力アップ!」という文句の掲げられたバナナの棚が空っぽになっていた。

4月8日

先月から予約してあったヘアサロンへ髪を切りに。行くのを迷って迷ってやっぱり行くことにする。いつもは自転車で行くけど、運動不足なので歩く。ヘアサロンのAさん、マスク姿で迎えてくれる。髪を切られながら「どうすりゃいいんですかねえ」と喋ったり笑ったり。来てよかった。Aさんは「(昨日会見した)小池さんの襟足が伸びちゃっていた、いつもはきれいにしているのに、根元も伸びて白髪が見えちゃっていた。そういう時間ないんだろうなあ」と言っていた。いい目を持っているなあ。ヘアスタイリストの目。
帰り道、マクドナルドの前を通るとドライブスルーの長い列。店内はすし詰め。みんなが呑気な気分の捌け口をさがしている。

4月9日

朝、ヨーグルトいりパンケーキ。薄力粉が切れたので強力粉も入れる。おととい依頼を受けた自作詩の朗読動画を撮る。昼、塩ねぎと豚肉のゆず胡椒パスタ(フジッリで)。合間に原稿の一行目を書く。三月に編集者とカメラマンとバスに乗って出かけていった最後の取材が懐かしい。
午後四時、手紙を出しがてら散歩。風はあるのに海は凪いでサーファーはほとんどいない。からすたちが人間のサーファーそっくりに互いに距離をとって柵に並び、順番に風のサーフィンをしている。

4月10日

五月下旬に予定していた詩のワークショップと朗読会が中止になってしまった。予感はしていたけれどやっぱり寂しい。チラシもすごくかわいいのを作ってもらってあった。ポスターも貼りだしてくれてあった。まだ随分先なのに予約が11名も入っていた。担当のHさんが予約した人に電話で中止の連絡をしたら「えーーー」とか「とても残念……」という声が聞かれた、とメールをくれた。その人たちに会えない。寂しい。予感はしていたけれど、一日ぽかーんとしてしまう。
夜、嬉しい報せがひとつ来る。「POSE」の第一話をやっと見る。

「違う場所の同じ日の日記」
この日々においてひとりひとりが何を感じ、どんな行動を起こしたのかという個人史の記録。それはきっと、未来の誰かを助けることになります。
ほかの方の「違う場所の同じ日の日記」へ

PROFILE

大崎清夏
大崎清夏

1982年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。2011年、ユリイカの新人(伊藤比呂美・選)としてデビューし、第一詩集『地面』を刊行。第二詩集『指差すことができない』で中原中也賞受賞。近著に詩集『新しい住みか』(青土社)、絵本『うみの いいもの たからもの』(山口マオ・絵/福音館書店)ほか。ダンスや音楽、美術といった他ジャンルとのコラボレーションも多数手がける。15年以降、ロッテルダム国際詩祭をはじめ世界各地の国際詩祭への参加を通じて出会った海外現代詩の翻訳・紹介を少しずつ推し進めている。

2020年4月4日~10日(大崎清夏)/違う場所の同じ日の日記

SHARE!

2020年4月4日~10日(大崎清夏)/違う場所の同じ日の日記

She isの最新情報は
TwitterやFacebookをフォローして
チェック!

コメントする前に こちらの利用規約
必ずご確認ください

コメント

コメントはMembersのみ行うことができます
Membersについて詳しくはこちら
/ Membersの方のログインはこちら

RECOMMENDED

LATEST

MORE

LIMITED ARTICLES

She isのMembersだけが読むことができる限定記事。ログイン後にお読みいただけます。

MEMBERSとは?

members01

この場所を一緒に育てていく力を交換しあうために。She isのMembersを募集中です