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2020年4月6日、7日、8日(つめをぬるひと)/違う場所の同じ日の日記

気持ちや人を立て直すためのものをちゃんと抱えていたい

テキスト:つめをぬるひと
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4/6(月)

会社を辞めてフリーランスになり、数日が経つ。
自分でも笑ってしまうくらい、ものすごいタイミングでフリーになってしまった。
不安はもちろんあるけど、意外と暇にもなっていないので、
関係各所はもちろん、こんな不要不急のものを楽しんでくださる方には、
一人一人のお宅をまわって菓子折でも持っていきたいくらいだけど、
受けたご恩は爪で返していくのが筋なのかなと思う。

夫は今でも平日は会社へ出勤している。
手洗いや消毒は徹底しているけど、単純に、切実に、何事も起こってほしくないという思いでいる。
どうしたら夫が会社に行くことを止められるかな。クビになるようなことを会社に吹き込んでやろうかしら。
そんなどうしようもない案が頭をよぎるくらい、平日はどうしたって少し不安定になる。
もちろんそんなことするわけないんだけど、頭をよぎるくらいは許してほしい。
家族の命を守りたい、みんなで生きていきたい、というまっとうな願い。
さまざまな思いをぐるぐるとめぐらせる平日がまた始まった。

4/7(火)

付き合いの長い2歳上の先輩と、オンライン飲み会なるものをやってみた。
適当におつまみを揃えて、4時間くらい喋ったり喋らなかったりしながら
緊急事態宣言の会見をテレビで流していた。

途中で、お互いが家事をする時間があった。
相手が洗濯物を畳んでいるところを見ながら私も洗濯物を畳む。
この場だからこそできる、不思議で楽しい時間。
飲み会が終わってもその場は既に家だし、なんならお酒じゃなくてもいい。
この時代にインターネットがあってよかった。

4/8(水)

夫の出社時間が少し後にずれた。電車がかなり空いていると言っていた。
だからといって、安心できるはずもない。
何かを楽しもうとする思いと、家族への不安の間を行ったり来たりしている。

今日はオンラインショップ用のつけ爪制作。
最近は委託店舗の中でも通販に移行するお店が増えた。
爪を置いてくださるお店にはちゃんと売上で貢献したくて、SNSでは販売のお知らせばかりになってしまうので、
もっとなにか見ている人が楽しめることができないかを模索している。

そんな賑やかしではコロナは消滅しないけど、「家にずっといる」という状況はきっとこれからもしばらく続く。
なにか気分を変えるものがないと、長く続けられるものも続けられなくなってしまう。
気分転換も許されないような、医療の現場に立ってらっしゃる方々がたくさんいて、
せめてそんな方達の仕事を増やさない(感染を広げない)ようにしたい。
この生活を続け、順応できるように、気持ちや人を立て直すためのものをちゃんと抱えていたい。

「違う場所の同じ日の日記」
この日々においてひとりひとりが何を感じ、どんな行動を起こしたのかという個人史の記録。それはきっと、未来の誰かを助けることになります。
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PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

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