2020年4月4日、6日、9日(羽佐田瑶子)/違う場所の同じ日の日記

当たり前ではない、生きていくことの事実を守りたい

テキスト:羽佐田瑶子
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4月4日

7時起床。青(1歳1ヶ月)の夜泣きがひどく、身体がしんどい。朝も昼も夜もひとりの時間がないため、ほんとうは5時半に起きて本を読んだり映画を観たりしたいのに難しい。日中、食欲が止まらない。朝食にパン、の後にケーキ。外出していないのに、このままでわたしの身体は大丈夫なのだろうか? と、不安ばかりつのるため、一旦休憩。なかしましほさんのレシピでスコーンをつくる。小麦粉、ベーキングパウダー、牛乳、甜菜糖、バターを混ぜるだけ、おいしいというのは最高の幸せ。庭の家庭菜園に種を植える。青とドキュメンタリー『人生フルーツ』を見返す、そういう気分のよう。

コロナの状況は刻々としんどい方へ向かっている。いまは自分のできることをするしかない。大好きな本屋さんにせめてもの力を、とSunny Boy Booksさんのオンラインストアで買った2冊が届く。野中モモさんの『「ZINE」小さなわたしのメディアを作る』(晶文社)と、fuzkue阿久津さんの『読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹』(numa books)。街に残ってほしいお店や映画館をどうにか助けたい。文化に支えられて生きてきたから、なくなってしまっては辛い。かつて、何度も通った渋谷のミニシアター、シネマライズがなくなったときの淋しさをもう一度思い出した。
対して、自分もフリーランスで今後の不安もあり、貯金への意欲も高まる。引き裂かれる思い。どう消費するかは、しばらくの課題になりそう。夜はたなかれいこさんのレシピでもやしひたすら炒め(もやしを圧力鍋に入れ、醤油をたらして20分ほどひたすら炒める)、里芋の味噌ころがし、味噌汁、キムチ、五分づき玄米。眠る前にアンジュルムの「コンサートツアー2018春十人十色」DVD、全員主役メドレーを見返して元気をもらう。全員が自分の衣装と楽曲を選んだ”“わたし”が生き生きしている最高ライブ。ライブに行けないためか、元気が欲しいためか、いつも以上にアイドルの映像を見あさってしまう。

4月6日

6時半起床。よく晴れていたので、庭遊び。母が手入れをしている庭にはフリージア、マーガレット、チューリップと春の花が満開。青は最近歩けるようになり、黙々とうろうろしている。マーガレットの花びらで「好き/嫌い」を数える遊びをする。たのしそう。パン屋さん「クク」へ食パンを買いに行く。近所に天然酵母で自然食に詳しく、とても美味しい場所があることは救い。青は「天パちゃん」と呼ばれている。

青の存在にも、随分と助けられている。いい意味で世の中のことを知らず、目の前のことに懸命。青がいることでわたしは日々を守ろう、という強さを持てるのだと思う。最近はバイバイとこんにちはができるようになった。毎日できることが増えていく。当たり前ではない、生きていくことの事実を守りたい。

昼過ぎに、母とShe isのインタビューを受ける。随分緊張したが、インタビューを受けると頭や心がスッキリした、ありがたい時間。あらためて、わたしはわたしを取り戻したいんだと思った。母という役割を担ってみて思う。本名で呼ばれず、青の代理ばかりし、よりより母という役割を担うことを社会から求められる。母になることを選択したのはわたしだから特に窮屈に思ってはいないけれど、暗黙の“よりよい母像”を擦り付けられることは、とても心地よくない。ルールがいっぱいあり、他の子と違ってはダメで、久々に子どもの時感じていた違和感を思い出した。見た目も振る舞いもなんだって、個人の自由でいいのでは? 青が昼寝の間に上野千鶴子さんと田房永子さん『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』(大和書房)を読み終える。産んでから、フェミニズムへの関心が高まっている。以前、She isで和田彩花さんにインタビューさせていただいた際に「フェミニスト的な視点を持って女性のあり方を考えているし、フェミニズムやジェンダーという言葉を知ったからこそ、いろんな言葉を持って発信できるようになったけれど、まだ自分がフェミニストであるかどうかについては疑問もある」という発言を聞いて、ふっと軽くなれたのだと思う。「無名通信」というフェミミニコミを作っていた森崎和江さんの言葉「わたしたちは女にかぶらされている呼び名を返上します。無名に帰りたいのです。なぜなら様々な名でよばれているから」を、メモ。母親のいろんな在り方を探りたいし、いろいろな人の母の話を聞きたい。夜、茹でたほうれん草のオリーブオイル和え、じゃがいもとマスタード和え、人参とサツマイモのサラダ、味噌汁、五分づき米。

4月9日

7時半起床。昨夜の尊敬している方の発言にどうにも納得できず、驚くほど精神的に疲れてしまい青を寝かしつけながら21時に寝てしまった。でも、青の夜泣きがひどく、身体は疲れたまま。やっていること、とやりたいことが違っているのかもしれない。自分に素直ではない状態が心と身体を引き裂くようで、しんどい。朝は納豆ごはんと味噌汁、美味しいもので清算。晴れていたので、青と手をつないで周りをお散歩。歌って、歩いて、しあわせな気持ちですこし回復。

書くことで吐き出すしかないと思い、noteで日記をはじめる。武田百合子さんの『富士日記』、高山なおみさんの『日々ごはん』など日記文学に支えられてきた。最近は滝口悠生さんの『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』が素晴らしかった。書いてみると心の中が整理され、救われる。昨日ははじめてZOOMをした。生まれる前から親友の川口ミリちゃんと、数秘術でつながるmuskaやFEMALE GIANTデザイナーのゆかさんと。ハーブティーと菓子片手に(名付けて、魔女たちのお茶会!)。お家でも素敵な服を着ていて、いいと思った。「こんなにショックな時代に生きると思っていなかった」と言っていた言葉が、いまも頭の片隅にずっと残っている。朝昼晩きちんと食べて、適度に身体を動かして、これまで以上に健やかに過ごしているはずなのにどこか倦怠感がある。日々をたしかに生きていくしかない。自分をこれだけ見つめる時間があると、この先働き方も生き方も変わってくるだろうし、日本に残る、という選択肢以外を選ぶことだってあるはず。区によって保育園を強制休園/自粛など考えが異なるように(わたしは自粛を選択)、国でこれだけスタンスが違えば、自分の意思で暮らす場所を変える又は整えていきたいと強く思うようになった。もらった力を思い出すように日記を書いた。
夜はかけ蕎麦、長野県テンホウから取り寄せた野沢菜餃子。YouTubeで期間限定公開されている私立恵比寿中学の「クリスマス大学芸会2018」を青と観る。彼女たちのパフォーマンスは借り物じゃない、自分たちで生み出した傑作の連続。寝る前に積読していた『エトセトラvol.2 We Love田嶋陽子』を読んで、いい気持ち。アイドルのオタクでよかった、フェミニズムに興味を持ってよかった、と思う。

「違う場所の同じ日の日記」
この日々においてひとりひとりが何を感じ、どんな行動を起こしたのかという個人史の記録。それはきっと、未来の誰かを助けることになります。
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PROFILE

羽佐田瑶子
羽佐田瑶子

1987年生まれのライター。女性アイドルや映画などガールズカルチャーを中心に、インタビュー、コラムを執筆。主な媒体はShe is、Quick Japan、テレビブロスなど。映画『21世紀の女の子』パンフレット編集。岡崎京子とグザヴィエ・ドラン、ハロープロジェクトなどロマンティックで力強いカルチャーや人が好きです。2019年、2月に出産。「親」についてのZINEを目論み中。

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