私のからだは、私のもの。けれど、パートナーとの関係で、友達との関係で、性にまつわるあれこれで、いつの間にか自分を押さえつけてしまう。誰にも話せない、相談できない。そのことが苦しい。そんな経験をしたことがある人って、意外と多いのではないでしょうか。
She isでは、水曜夜に編集部とMembersで語らう会「She is MEETING」をオンラインで実施中。9回目となった7月8日(水)は、現在の日本のフェムテック市場を牽引するfermata(フェルマータ)とコラボレーション。普段なかなか話す機会のない「セルフプレジャー」をテーマに、自分が自分のからだの理解者になるための、活発で親密なトークセッションを開催しました。
fermataから参加してくださったのは、片山晴菜さんとカマーゴ李亜さん。海外留学の経験もあるお二人のグローバルな視点で、女性の身体にまつわる不思議や、課題をわかりやすく解説してくださいました。ご参加くださったMembersの皆さんからも、様々な疑問や意見があり、トークは穏やかに盛り上がりました。いつもの自分の声の大きさや温度で、性を語ってみる。今回はそんな試みの一部をレポートします!
(メイン画像:7月中旬に開催したfermataとREINGの共同イベントにて /撮影:REING)
「気持ちいい」を感じることには男女で差がある? プレジャーギャップとは。
李亜:みなさん、「プレジャーギャップ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? アメリカの研究(※1)では、セックス中にいつもオーガズムを得られると回答した人の割合は、シス男性(生まれ持った身体の性別と、自身の性自認がどちらも男性の人。同様に、シス女性は、どちらも女性の人)が91%。その一方で、シス女性は39%なんです。この数字が表しているように、セックスで「気持ちいい」を感じられる人の割合って、ジェンダーで違うんですね。
さらに、セックスを楽しくないと感じたことのあるシス女性の数は、シス男性の4倍(※2)。セックスにはいろんな形がありますが、ペニスを挿入することのみでオーガズムに達成することができる女性は18.4%(※3)しかいないんです。少ないと思いませんか? そして、4人に3人の女性が、オーガズムとその質の向上のために、クリトリスの刺激が必要であると答えていて(※4)、60%近くの女性がオーガズムに達したフリをしたことがあると回答しています(※5)。これらのデータが示しているのは、女性と男性の間で、セックス関連の「プレジャー」つまり、楽しさや気持ちよさに、かなりのギャップがあるということなんです。
この図を見てください。文字が何も書いていなかったら、なんだろう……?と思う人も多いのではないかと思います。実はこれがクリトリスの全容です。
晴菜:私もこの図を見る前は、クリトリスって小さなボタンみたいなものだと思っていました。でも、こんなに巨大な生物が体の中にいたのか! と思って(笑)。しかもクリトリスに通っている神経の数は、約8000本と言われています。これはペニスの海綿体組織の2倍という風にも言われているんです。このポテンシャルを引き出せたらいいなと。
李亜:わかりやすい「ボタン部分」だけじゃなく、いろんなところを刺激することがセックスライフの楽しさに繋がるわけですね。プレジャーギャップが生まれるのにはいろんな理由がありますが、その一つに、シス男性によるクリトリスの過小評価があると言われています。必要性や重要性がわかっていなかったり、挿入しただけで気持ちいいだろうという誤解が根強くあるという状況があります。それから、シス女性が自分の「気持ちいい」ポイントを知らない、というのも大きな理由の一つ。そこで、今日の会のテーマである「セルフプレジャー」が大切になってくるんです。
「セルフプレジャー」によってもたらされる、たくさんのメリット。
李亜:「セルフプレジャー」という言葉は、人によってセックス関連だけではなく、例えば本を読んだり、美容マスクをしたり、自分の体と向き合って「気持ちいい」を探すということも意味の中に入ってきますが、今日は一人で性器などの性感帯を刺激する行為について話せたらと思います。自慰やオナニー、ご自愛など様々な呼び方がありますが、自分が一番使いやすい言葉で表現するのがベストです。
晴菜:「セルフプレジャーをしすぎたら『バカ』になるんじゃない?」とか「ニキビがたくさんできるんじゃない?」というような、セルフプレジャーまつわるさまざまな都市伝説が世界各地であるのですが、体に悪いことではありません。むしろメリットがたくさんあります。
晴菜:セルフプレジャーをする人としない人との比較研究を見てみると、する人の方が性生活の満足度や、自己肯定感が高いという結果も出ています(※6)。さらに、性機能の低下や性交痛にも効果が認められています(※7)。例えばバイブレーターでクリトリスを刺激すると、膣分泌液が生成され、性交痛が緩和されますし、血液が循環されるのでオーガズムを得やすくなるんです。アメリカにはFDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局。医療品の規制や食の安全を担う、日本の厚生労働省に似た公的な機関)という機関があり、バイブレーターは性機能障害の治療用に認められています。実際に性交痛の患者さんの一部に、バイブレーターが処方されているんです。日本では「大人のおもちゃ」と言われがちですが、お医者さんもその効能を認めているものなんです。
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