林試の森公園(東京都目黒区・品川区):歩いているだけで森林浴気分。園内にいる動物たちが堪能できる公園
遠出が難しくなってしまったことにより、もっぱら家の周辺ばかりうろうろと散歩していて、ご近所への解像度が過去最高に高まっている。
気のよさそうなゴールデンレトリーバーがいつも玄関先で寝そべっている家を見つけては勝手にMBGS(マイ・ベスト・ゴールデンレトリーバー・スポット)に認定したり、蜂蜜味の手づくりアイスクリームを売る店を発見したり、どことなく入りづらかった花屋に初めて入ってみたらお店の人が意外と優しくてうろたえたりする日々のなかで、足しげく通っているのが林試の森公園。東急目黒線の武蔵小山駅か、不動前駅、どちらからも10分ほど歩いた場所にある。その名が示す通り、もともと林業のための樹木の試験場だったことを活かした公園で、園内にはうっそうと木々が繁っており、初めて訪れたときは、そうだねたしかにこれは森であるね、とけっこう驚いた。
そこでの過ごし方を固定されず、きままでいられる自由度が高いことがいい公園の条件であると思っているので、そのためにはある程度の広さを公園には望んでしまうのだけど、林試の森公園は、都心にほど近い公園としてはなかなかに広く、園内をのんびり一周すると、ざっと30分ちょっとはかかる。舗装された広い道だけでなく、木々の間にほんの少しだけ草木がかき分けられた、生ぬるめのけもの道のような道もあるので、ときにはあえてそちらを通り、そのちょっとした歩きづらさを楽しんでみたりもする。
そんな園内は、ただ歩いているだけでも普段の靴や服装で森林浴気分が味わえてけっこう気持ちいいけれど、散歩しながら園内にいる動物たちの姿を眺めるのがもっとも好きな過ごし方だ。池で甲羅干しをする亀たちを数えたり、散歩に連れられてきた大小さまざまな犬の生態を観察するのは、わりと飽きない(ちなみに亀はめちゃくちゃ多くて、いまだ一族? の全貌がわからない)。都内にはあまり似合わない、大きな美しい鷺がとつぜんあらわれたときにはすこしぎょっとした。公園を出てすぐの場所で2匹のたぬきを見かけたこともあるので、きっとたぬきもここに住んでいるんじゃないだろうか。
なかでも一番のお目当ては、あちらこちらの木陰でくつろぐ猫たち。猫たちはそれぞれにきっぱりと自分の縄張りを持っているようで、各自が適切な距離を保ちながら香箱座りでうとうとしたり、樹木の根元でお腹を舐めている様子を見るのは、嬉しくて仕方ない。たまにちゃっかりベンチに座っていたりもする。猫には、猫の数だけ固有の魅力があるので、家にも猫がいるというのに、いつまでだって見つめていたくなってしまう。
そんな林試の森公園を訪れるのは、自然も動物ももっとも躍るようにいきいきして見える春先が、やっぱり一番おすすめ。桜の季節であったなら、帰り道に公園の東側から出てかむろ坂へ抜けると、貴族の食卓のように大盤振る舞い状態で咲き誇る、立派な桜並木を見ることができるしね。