十三公園(大阪府大阪市):こんなに人が力を抜かすのは公園しかない。衝撃のおじちゃん二人組を目撃した場所
「公園」と聞いて、人に話したいエピソードがあります。それは大阪の十三(じゅうそう)という街にある「十三公園」で起こった本当の話です。
その日、私は友人の実家がある大阪に遊びに来ていました。「The観光地ではなく、地元民の生活が垣間見れるような場所に行きたい!」と、友人を引き連れて、隣駅だった十三駅周辺の街に繰り出し、道で靴が片一方だけで売られているのを見たり、喫茶店「泉」でコーヒーとたこ焼きというなかなかない組み合わせを食べたりと、それなりに街を楽しみ歩き疲れた私たちは、「ちょっとひと休みしよか」と、繁華街を外れ目についた近くの公園へ向かったのでした。
着いた瞬間すぐに、おじちゃん二人組が地面に倒れているのを見つけました。私は反射的にこれは何か大変なことが起こったと判断し、「ちょっと……! 人が倒れてるで! き、救急車呼ばなっ!」と、人生で一番お腹の底から大きな声を出し、驚く友人を横目におじちゃん達の元へ走って行きました。 近くまで行き、「おじちゃん! どないしたん! え、大丈夫!」と必死に声をかけますが、おじちゃん達は両足が綺麗に重なったまま無言で倒れています。辺りに人もおらず、振り返ると友人が「やばいな! やばいで! やばいやん!」と、頭が混乱しているせいなのか「やばい」しか言っていません。何回か声をかけると、様子のおかしいことに気がつきました。一人のおじちゃんの口から「スゥーヒュー」と、一定のリズムを刻む寝息のようなものが聞こえてきたのです。そこでさっきまで「やばい」しか言えなかった友人が、「なあ、この人ら寝てない?」と急に冷静な言葉を話し、よく見てみるとおじちゃん達はガッツリ就寝中。
その瞬間に緊張の糸が切れたからなのか、もうおかしくてたまらなくなり、「あははははははははははははははは!」と、私は噴き出してしまいました。それにつられて友人も「ぶっ」と噴き出し、腹を抱えてその場に転げました。目の前で笑いすぎて瀕死状態の私たちがいるのにも関わらず、おじちゃん達は態勢を変えることなく寝息を吐きながら寝続けてるのでした。私の友人は後日、その重なり具合のことを「コンビニなどで手軽に手に入る『紗々』というチョコレートみたいに綺麗な二重構造やった」と、例えていました。2人で体温を分け合うためにあえてそう寝ていたのか、寝ている所を誰かが重ねたのか未だに謎しか残っていません。もう十三、最高! 吉本新喜劇でもこんな場面ありませんよ。今、思い出してもこのおじちゃん達の行動と間抜けな寝顔に胸がきゅんとします。
私はその時思ったのです。これは「公園」だからこそ成り立つ場面だと。こんなに人が力を抜かすのは公園しかない。そして、誰にもみせびらかそうと思わず、自分の心地良いことを貫くことができる場所だと。人は生涯のうち公園で育ち、公園に戻ってくる。それが良いことなのか悪いことなのかは分からないけど、そんな場所がそれぞれの住む街にひとつでもあるのは心強いし、なくなったら公園の代わりとなる場所ってどこにもないですよね。ヨーロッパでは公害があった時期、週末にいい空気を吸ってリフレッシュをするための場所として作られたことをきっかけに公園を「都市の肺」と呼ぶようになったんだとか。公園を「都市の肺」と呼ぶのは、すごく腑に落ちます。一日は長いけど、人生は短い。だから、映画や小説を楽しむのと同じくらい日々の些細な出来事にも感動できればいい。今住んでいる東京でも、よく公園を散策しています。だって、願わくばもう一度あんなにお腹がよじれるほど笑う経験をしたいからです。皆さんも十三公園に行ってみると、衝撃の場面に出くわす可能性があるかもしれませんよ。
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