ロンドンに来て、やりたくて仕方がなかった理想の仕事にやっと巡り会えた
ご縁があってロンドンより記事を書かせていただくことになりました、手塚よしこといいます。ロンドンにてArtist Representative(アーティストリプレゼンタティブ)という仕事をしています。
普段はロンドンの中でもアートやデザインの中心である、東に位置するHackney(ハックニー)という地区を中心に活動しています。Print Club Londonというスクリーンプリントの設備がついた素敵なシェアオフィスにデスクスペースを借りて、東京とロンドン間でのリモートワークをしています。仕事外では友人たちとSloganという名前でデザインをしたり、Art Book Fairに参加したりしています。
私が所属しているA-GENT TOKYOというクリエイティブエージェンシーは、イラストレーターのWALNUTやFAFIなど世界中のアーティストと共にプロジェクトを行なう会社。アーティストリプレゼンタティブとは、所属するアーティストとクライアントを繋いで、プロジェクトの進行やプロダクトの企画をしていく仕事です。
ロンドンのクリエイティブスタジオ、Studio Morossと手がけたAIのニューアルバム『和と洋(WAtoYO)』のアートディレクション
私の場合は、グラフィックデザインを勉強していたこともあり、プロモーションツールやパッケージ、ウェブサイトのデザインなどもしています。もちろん、アーティストたちのプロモーションもかかせません。現在は各国のアーティストやデザインスタジオと共に、様々なプロジェクトを同時並行で行っているところです!
東京ではこのような働き方はしていなかったのですが、ロンドンに来てやりたくて仕方がなかった理想の仕事にやっと巡り会えたと感じています。
イギリスが好きだったわけではない。なるべく多く、早く、しかも全部手に入れたいからここにいる
突然ですが皆さん、野望ありますか?
私がロンドンにいる理由は、イギリスが好きだったわけでも彼氏を追いかけてきたわけでもありません。何よりもやりたいことが山ほどあり、欲しいものもたくさんあり、それをできるだけ多く、なるべく早く、しかも全部手に入れたい! と思っているからです。そのためには東京が狭く、息苦しく感じることが多々あり、22歳の時に初めてロンドンに来てからというもの、現在25歳ですが、その欲しいものに着実に近づいている感覚があります。
東京の息苦しさとは、人種・文化的な多様性が少ないからこそ「こうあるべき」という姿がある程度きまっていたり(就活・新卒・女は30までに結婚……など)、外国や旅をすることがあまりにも日常生活からかけ離れていたり。ヨーロッパでは休暇も簡単にとれ、国同士も物理的に近いので、国をまたいで仕事をするのは当たり前。それぞれのバックグラウンドが違うので、履歴書を書くときも顔写真や年齢は必ずしも求められません。女性は若くてかわいくいることよりも、健康で自立していて、その人のやりたいことをやっている人が魅力的、といった印象です。
抑圧を感じて育ったからか夢は膨らみ、私の野望は東京と世界のアート・デザインを繋げることです。そして東京に今までにない多様性が生まれて、自分の生まれ育った場所をもっと面白い都市にしたいと思っています。
グラフィックデザイン、暮らし方、ファッション。ロンドンでの生活を選んだ理由
東京以外の場所を探したときにロンドンを選んだ理由の一つは、特にグラフィックデザインではロンドンが一番面白いのではないかと感じているから。最新のテクノロジーを使ったモーショングラフィックや、何百年も前からある印刷機械やレタープレス(活版印刷)まで、ものづくり好きにはわくわくするものが溢れています。ここ数年は日本の理想科学工業の作った印刷機、「RISOプリント」のどこか懐かしいレトロな印刷をモダンに使うのがヨーロッパで大流行中です。
もう一つは、ロンドンの暮らし方に共感しているから。朝早く夜も早い。その後は友達や家族と過ごす。私の暮らすハックニーでは特に「live local(ローカルに暮らす)」を気にかけている人が多く、スーパーや大きなブランドのお店で買い物するのではなく、地元のマーケットなどで食品を買う人が多く見られます。マーケットと言っても、カードが使えるお店がほとんどだし、アプリを使った地元だけで使える通貨なども出てきています。
私はファッションが大好きなので、何歳になっても好きなファッションをしている人が多いのも魅力です。「モテ系ファッション」なんて取り上げている雑誌はなく、自分らしい格好を楽しむ。男女共に、皆個性的で面白い格好をしているのでつい観察してしまいます。それぞれがスタイルを持っていて、ブランド物よりはビンテージショップで見つけた誰とも被らないものがかっこいい、といった感じ。
最近暗いニュースの続くロンドンですが、アートやデザインはまだまだ熱いです! 今後の連載ではロンドンの人々の働き方や暮らし、留学などについても書いていきたいと思います。