「新卒」ブランドが通用しない? ロンドンと日本の就職活動の違い
私は去年の初めに日本からロンドンに移り住み、今はA-GENT TOKYOというアーティストエージェンシーで働いています(渡英のきっかけについては前回の記事をどうぞ)。
年末年始で、念願だった南アフリカのヨハネスブルグとケープタウンに行って来ました! 北半球とは正反対で真夏の南アフリカ。年越しでフェスに参加したり、野生のペンギンと泳いだりと盛りだくさんでした。
昨年の10月には、仕事でイラストレーターのDan Woodgerと一緒に台北へ。SAMSUNGの大きなキャンペーンで台北大学の図書館の外壁にプロジェクションマッピングを行ったり、『 Taipei Art Book Fair 』に参加したりと大忙し。彼のことは知らなくても、彼が手掛けたLINEのステッカーならみんな知っているはず。
そのあとは東京に移動し、ロンドンのクリエイティブスタジオStudio Morossがアートディレクションを手がけたAIのツアーにグラフィックデザイナーのKate Morossと一緒に行ったりと、最近は旅の多い生活をしています。
現在はそのような仕事をしていますが、去年の初めに日本からロンドンに来た頃は、こちらのクリエイティブエージェンシーをメインにデザイナーやプロジェクトマネージャー関係の職探しをしつつ、フリーランスのグラフィックデザイナーをしながら、バリスタとしてカフェで働いたりしていました。
ロンドンで就職活動する場合、日本のように合同説明会などがあるわけではありません。自分の就きたい職種や職業がある程度決まっていて、その業界や会社についてリサーチをしていないと、いつ募集がかかるか分からないので、常に求人情報や会社のウェブサイトをチェックしている必要があります。
さらに、日本での就活との一番の違いは、「新卒」というブランドが全く通用しないこと。たとえ新卒で職業経験がなくとも、ポートフォリオやインターンシップでの経験、今の自分に何ができるかを一番に見られます。厳しいことに、例えば全く違う業界・学位からクリエイティブ業界に転職したい場合は、その分野について学べる学校にもう一度行って経験を積む、というのが通例です。
日本ほど福利厚生は充実していない。代わりに、柔軟な働き方に対応しているところが魅力
東京で就活をしていた時の感覚と比べて、ロンドンにはデザイン関係の求人の数がものすごく多いです。ただし、競争率もものすごく高い。私も自分の履歴書を何通送ったか分かりません。大体の場合は返信が来ませんでしたが、どうしても日本語の環境で働くことや日本のクライアントとだけ仕事をするのが嫌だったので、根気が鍛えられました!
履歴書(CVやresumeと呼ばれる)は、日本では決められたフォーマットのものを使うことが多いですが、ロンドンのデザイン関係の仕事の場合では多くの応募の中で目立つために凝って作る人が多く、自分の名前のロゴを作ったり、オリジナルのレイアウトを使って自分をアピールしています。履歴書が通過すると面接を受けますが、私が経験した面接では、初めにSkypeで話して、それを通過すると実際に会って話すというのが多かったです。応募した会社が雇っている外部の人事専門会社の人との面接だったことも一度あって、がっかりしたことも今となっては思い出です。
働き方はフルタイム、パートタイム、プロジェクトベース、期間限定の契約など多種多様です。福利厚生は日本ほど充実していません。イギリスでは医療費がタダなので会社で健康診断はありませんし、交通費も出ません。ただし病欠などの私情で休みを取るのは日本より簡単で、有給も多いです(ほとんどの労働者に法律で年間5〜6週間の「Paid Holiday(有給休暇)」が与えられているそう)。
ただ、全ての人が物価の高いロンドンでクオリティの高い仕事や生活をしているかといったら全くそうではありません。人の入れ替わりの激しい街なので、転職や海外への引越しは当たり前。会社側もそれを前提に、柔軟な働き方に対応している印象があります。働いている人たちも権利を主張するし、会社側もそれが当たり前。仕事によっては、残業した翌日は始業を遅くする、体調がすぐれないので家で作業する、などはもはや個人の裁量に任せられているように見えます。
私が好きなのが、この柔軟性。仕事に限らず人間関係でも、まずその人の生活や気持ちを大事にして、お互いを尊重し合う多文化な街ならではの雰囲気はとても居心地が良いです。
私自身も、毎日決められたオフィスに決められた時間に通うのではなく、スクリーンプリントの設備がついたPrint Club Londonというシェアオフィスでデスクスペースを借りながら柔軟な働き方をしています。
人種や年齢・性別なく活気で溢れるロンドン。ネットワーキングやマーケットなどのイベントも
ロンドンは小さなお店やビジネスもすごく活気があり、有名なハイブランドだけでなくインディペンデントで生まれた新しいものが多い街でもあります。さらに、それが20代の若い人から起こっているからこそ面白い。そして、その人が何歳か、女性なのか男性なのかは日本ほど話題になりません。
Googleが運営し、ビジネスなどのアイデアを持った人が集まってディスカッションしたりデザイナーやディベロッパーを見つけることができる誰でも参加可能のスペース「London Campus」や、アーティストやイラストレーターが作品などを売ることができる「Hackney Flea Market」など、ネットワーキングやマーケットなどのイベントも頻繁に行われています。
また、アジアン、ブラックなど人種的マイノリティである「BAME(Black, Asian and Minority Ethnic)」をクリエイティブ業界で積極的に雇用するためのプラットフォームを展開する「Creative Access」のようなサービスもあり、人種や年齢・性別など関係なく、街を盛り上げる活気で溢れています。
次回はロンドンの暮らしや恋愛について話したいと思います!