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第一回:男も女も、すべての人はメイクしたってしなくたっていい

美容ライター・長田杏奈による新時代のコスメ連載開始

連載:PUNK THE BEAUTY!越境するコスメティック
テキスト:長田杏奈 イラスト:はらだ有彩 編集:野村由芽
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美は無限に広がり、絶えず流動するもの。
それなのに、美しさへの憧れは、
ときに私たちを窮屈な、寄る辺ない気持ちに追いやることがある。
刃(やいば)や鎖となるBEAUTYなら、もういらない。
既成概念を小気味よく打ち破る、新しい時代のコスメを手に取って、
今こそ、美しさには限界も境界もないと知るべきとき。
「PUNK THE BEAUTY」は、
「生きとし生ける私たちの美」を解放する、レジスタンス活動である。
総員に告ぐ。ありとあらゆる美しさを見出し、フリースタイルで享受せよ!

1.男も女も、すべての人はメイクしたってしなくたっていい

こんな条文を考えてみた。

【顔面における自己表現・容姿選択の自由、美容幸福追求権】
すべての人間は、顔面における自己表現・容姿選択の自由、及びそれぞれ多様な美を養い幸福を追求する権利を尊重される。ジェンダーや年齢、〇〇(好きな言葉を入れてね♡)その他を問わず、好きなメイクをし、またはしない生来の自由を持つものであり、何者もこれを侵害できない。

つくづく思う。男も女も、いやそろそろ人間はみんな、メイクしてもしなくても好きなようにするのがいいよね! という時代に切り換わる潮時だ。

「メイクアップした男性」の最初の記憶は、歌手で俳優のジュリーこと沢田研二氏で間違いない。母が大ファンで、部屋に大きなポスターが貼ってあったのだ。頬骨の下にしっかりとシェーディングを入れ、鱗粉のような輝きを放つアイシャドウをまとったジュリーは、子供心にもどきっとするようなデカダンでミステリアスな色香を放っていた。
当時、我が家は、昼はレストラン、夜はお酒が飲めるパブレストランを営んでいて、父はマスター、母はママと呼ばれていた。パーティがあると、店内はディスコ風に装飾され、YMOやデヴィッド・ボウイみたいなメイクを施した常連さんが、ミラーボールの光にキラキラと照らされながら歌ったり踊ったりしていた。思い思いにメイクしてグラムに着飾る非日常に、男の人たちはとてもはしゃいでいて、楽しそうに見えた。これが1970年代後半から1980年代前半にかけてぐらいの話。

時は流れて、2018年。国内外で、ジェンダーフリーや男性向けを全面に打ち出したメイクアップブランドが続々とデビューを果たした。性別や年齢を超えたリミットレスな自己表現を讃える「FIVEISM × THREE(ファイブイズム バイ スリー)」、ラグジュアリーブランドの参入を印象づけた「ボーイ ドゥ シャネル」などが代表格だ。翌2019年には、パルファム ジバンシイのジェンダーフリーライン「ミスター」シリーズや、グルーミングを進化させた「トムフォード フォーメン」が登場。『メンズ美的』など、ネクストレベルの男性向け美容企画も生まれている。きっと近いうちに、眉毛が気になり出した中学生がお小遣いで買えるような、手頃な値段のかっこいいプチプラコスメも出てくるにちがいない。この流れを好ましく思い、とてもワクワクしている。

FIVEISM × THREE

She isにたどり着いた人には、「男がメイクなんて」という人はきっといないと思うけれど。念のために説明すると、古来メイクアップは男性にとって、今よりずっと身近なものであった。大昔の人々は、「悪いものが憑きませんように」「勇敢に戦えますように」「魚がたくさん獲れますように」などの願いを込め、おまじない感覚で顔に土や鉱物の粉(今でいうミネラルメイクですね)を塗り、入れ墨を施した。顔を白く歯を黒く、「麻呂眉」に整えることが、高貴なるステイタスの証だった時代だってある。だから、歴史的には「男がメイクなんて」の方が浅いということ。

まだニーズは限定的かもしれないけれど、まずは「THE女性向け一択ではないメイクアップ製品」を望む声が無視されず、手にとって塗ることができるものとして存在することに意義がある。そこから広がる現実や文化が、芽吹き結実していく過程を、これからともに目撃しようではないか。

【今月の越境コスメ】

今月は性別というものをスルーして使える超境コスメをリコメンド!

ルールは無用。
楽しんだもの勝ちのマルチカラー

目元、頬、唇、髪、眉、ボディなどのパーツに自由に使えるマルチカラー。ソフトマットな質感で、直塗りすればペイント感覚、ぼかせば内側からにじむようなふんわりナチュラルな仕上がりを楽しめる。このアイテムならではの醍醐味と使いやすさをどちらも叶えるなら、09のブライトオレンジが推し。

ミラークールタッチ バー 09 ¥4,000/FIVEISM × THREE

意志と知性が宿るボーイブロウは
グレイ、薙刀、ブラシ付きが条件

顔の額縁とも言われ、社会性を象徴するパーツである眉。人間は、眉を少し濃いめ&太めのボーイブロウに仕立てれば、他がちょっと手抜きだって素敵に見える。不器用でも安定したタッチで描きやすい斜めカットの薙刀芯と、毛流れを整えて自然にぼかせるスクリューブラシつきは絶対。色はグレーが今っぽい。

ボーイ ドゥ シャネル アイブロウ ペンシル 204 ¥5,000/©CHANEL(使い方を動画で見る

毛穴を補正し、清潔感を仕込む。
カラーレスなクリーム

シンプル&ミニマムなメンズコスメ界にあって、プレイフルなパッケージで異彩を放つBOTCHAN(ボッチャン)。エントリーアイテムとしておすすめなのが、ささっとなじませるだけで毛穴とテカリをさりげなく目立たなくして、素肌の清潔感に差をつけるカラーレスな肌補正クリーム。もちろん、洗顔料でオフできる。

BOTCHAN スキンパーフェクター マット 20g ¥2,300/アンド・コスメ

PROFILE

長田杏奈
長田杏奈

ライター。美容をメインに、インタビューや海外セレブなどの記事を手がける。趣味は花鳥風月。モットーは「美容は自尊心の筋トレ」。

INFORMATION

連載:PUNK THE BEAUTY!越境するコスメティック
連載:PUNK THE BEAUTY!越境するコスメティック
美容ライター長田杏奈のレジスタンス活動
美の限界や境界を打ち破る新時代コスメ

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