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ハロー・ナイストゥミーチュー・ガールフレンド
Vol.1麦島汐美さんに会いに行く

日記本、雑誌『文鯨』、1995年生まれの「希望」のこと

連載:吉野舞のハロー・ナイストゥミーチュー・ガールフレンド
インタビュー・テキスト・撮影:吉野舞 編集:竹中万季
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「日常の中でどんな辛いことがあっても、どう立ち振る舞おうとするか、希望をそこから見つけるかどうかが私たちの世代の使命みたいなものじゃないかな」

吉野:趣味とかってある? 人生の中で最も自分の時間を費やしてることとか。

麦島:人の日記を集めるのがすき。

吉野:他人の日記を?

麦島:そう。でも、作家とか本として出版している中での「日記」。その人のこと知りたいってなったら、まず日記を読みたくなっちゃうの。

吉野:作家の日記って、人に読ませる前提で書いている内容より、どこにも公表しないつもりで「あいつ、ウザい」や「あの番組つまんない」とかも書いてる方がリアルで読みたくなっちゃうよね。

麦島:そうだね。人を読ませる前提の日記もあるけど、リアルさとの兼ね合いがあるような気がして。日記ってノンフィクションとフィクションが交じり合っているもので、自分の中でも書く時に「これは書いていいけど、これは書いちゃダメ」みたいな一つの基準がある。

吉野:「リアルさとの兼ね合い」って話が出ていたけど、ここ10年、他の国からミサイルが飛んできたり、電車に乗っていたらみんなの携帯電話から地震速報が鳴ってたり、ある意味現実よりもファンタジーのような時間を生きている気がするの。

麦島:わかる。ニュースで目に飛び込んでくる映像が国内のことでもすごい自分との距離感を感じてしまう。

吉野:全部を他人事のように見てしまう癖とかってない? 事あるごとに熱狂的に物申す人がいると「すごいな~」って感じてしまうことも。それって時代特有のもつ感情なのかなあ。

麦島:私たちの年代(1995年生まれ)って「いろいろ大変な年だね」って言われるよね。これからの日本も明るくなると思えないし。

吉野:そうだね。大きな震災を共有している世代だから、みんな内心とても繊細かもしれない。

麦島:大きいことが起こると、人々が発言しづらくなるというか。川上弘美さんの『大きな鳥にさらわれないよう』(講談社)という本があって、SF的な内容なんだけど、自分の考えがある一方で、社会で大きな動向や災害があると、どうしてもみんなそっちのことを考えないといけなくなってしまう。それに支配させられると何も思考できなくなるって書いていて……。

吉野:似たような話で、映画『ジョーカー』って見た? 国内では増税や政治のこともあって、みんな何かしら社会に対する不満が募っているんじゃないかと思う中、あの作品が国内で大ヒットしたのも映画と現実の空気感がぴったり重なったからだと思う。主人公が社会に馴染めなくて疎外感を味わう姿はリアルで見てられなかったし。『ジョーカー』も川上先生の本も、まさに現代で生まれるべくして生まれた作品かなって。

麦島:『ジョーカー』も然り、大きいことにとらわれて、自分が爆発しちゃうことは防がないと。日常の中でどんな辛いことがあっても、どう立ち振る舞おうとするか、希望をそこから見つけるかどうかが私たちの世代の使命みたいなものじゃないかな。

吉野:100万%同意! いつだって心ひとつで生まれ変われるし。

本当にそうだ。同じ時代に生きている中で、私たちが本当に気づかないまま、気づかないフリをしていていいのかと思うことは山ほどある。何でも時代のせいにするのは簡単だけど、悲劇のヒロインぶるのにも飽き飽き。起こってしまったのなら、そこから学んで、もう進むしかないはずだから。話題に出てきた『大きな鳥にさらわれないよう』の文中にも物事の捉え方についてこう書いてある。

「注意深く観察すること。結論はすぐに出さないこと。けれど、どんな細やかなこともおろそかにせずに記憶にとどめておくこと」

麦島:本や映画を出すことが誰かの希望であってほしいよね。

吉野:その「希望」の気持ちはどこから湧くの?

麦島:好きなアイドルとか誰かを元気にする存在がいると、安心感からか自分も好きなことをしようと思えるの。東京でもどこかの街にいると思うと、大丈夫だと思える。

吉野:麦島さんにとってその存在は誰?

麦島:多くの人々を元気をあたえてくれる人。例えば、X1のみんなとか。

吉野:友達だろうが恋人だろうが例えその存在が離れていようが、心がそっちに向かってたら何とかなるよね。最後に、VOICEでも書いていた「休みを取って香港へ行こう」へは行くことはできたの? あと、夢も聞きたい!

麦島:まだ。でも年内には絶対に行こうと思う。夢は「いつか本を出すこと」。

世界のどこかで探している人がいる。だからGirlfriendsに会いに行く

喫茶店を後にして私たちはデパートの屋上に行って写真を撮ろうということになった。彼女が「持っていると思うことで、より能動的に生きていけるように気がする」とVOICEの文章でも話していた「フィルムカメラ」を取り出し、私たちはお互いの存在を忘れないように撮り合った。

人は自分の人生しか生きられない。だから、本を読んだり、映画をみたりして。または自分でふとつくってみたりして、毎日多くの情報の中を生き抜く。私たちが情報を得るのは、それに「共感」をしたいわけではなく、ただ単に自分の人生だけを生きるのがいやだからしているのだと思う。誰かの日記を読むことや、私がこうやって人に会いに行っていることは、自分以外の人生に対する「嫉妬」なのだろうか。

でも、自分が欲しかったはずなのに、現実と情報の間で毎日すりきれそうな気持ちになるのはなぜなんだろうと思った。だって情報は現実を裏切る。それでも彼女が言っていた通り、「日常の中でどんな辛いことがあっても、どう立ち振る舞おうとするか、希望をそこから見つけるかどうかが私たちの世代の使命」という言葉が全ての答えだと思った。

夢と現実の世界で迷子になっても、私は頑張ってどんどんGirlfrendたちに会いに行かないと。彼女たちは本当に存在してるのだから、世界のどこかに。きっと誰かが彼女たちを探している。人の物語は当然のようにどこでもこぼれ落ちている。それを自分の目線で拾って、貪欲に知りたい。

単純な毎日の中で、何かがちょっとずつ変わっていくことを確かめることしかできなくても、こうやって会いたい人がいて、会いにいける人は誰よりも自由だと思う。

PROFILE

麦島汐美
麦島汐美

ステージで歌って踊るあの子も、50年前にひとりの部屋で小説を書いていたあなたも、いま隣で餃子を頬張っているこの子も私のアイドルなら、いつか私も誰かの小さい光になれたらと目論んでいる。1995年生まれ。ミスiD2018文芸賞。「文鯨」編集部。インターネットで文章と写真を発表。本を出すのを夢見て24時まで働く会社員。
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吉野舞
吉野舞

1995年秋生まれ。兵庫県淡路島出身。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。
やりたいことをやりたいと思った時に、すぐにやらないと自分を裏切ったようで落ち着かないので、興味があることは、何でもやろうと思います。座右の銘は「人生の大体の出来事は、自分のせいで人のおかげ」。今、東京。オフィスレディやりながらも書いてます。

INFORMATION

吉野舞のハロー・ナイストゥミーチュー・ガールフレンド
吉野舞のハロー・ナイストゥミーチュー・ガールフレンド
どう日々を過ごし、何を夢見て、
何に打ち破れているのかを知りに、会いに行く

Vol.1麦島汐美さんに会いに行く

書籍情報
書籍情報
麦島汐美のzine「鏡台 2017.06.12-2017.10.14」

2017年の初夏から秋にかけて、
ミスiDという講談社のアイドルコンテスト一次通過のお知らせが来た日から、最後の面接へ行くまでを「鏡台」というtumblrページで連載したテキストです。

mugibook

書籍情報
書籍情報
あたらしい言葉をつくる雑誌『文鯨(ぶんげい)』 (2016.5〜)
【第2号<特集: 叫びを翻訳すること>2017.2.20 発売 】

<装画>
-表紙:菅野静香
-「文鯨」題字:岩井悠

<目次>
・楠田ひかり「断片から衣服をたどってーsuzuki takayuki marriageー」【批評】
・嶌村吉祥丸「between」【作品】
・城李門「葉月あるいは明くる日のこと」【作品】
-特集:叫びを翻訳すること
・山本浩貴+h 「草のあいだから」【作品】
・柳澤田実「死のない生活」【批評】
・荻野洋一「被害者とは誰か?」【批評】
・渡部純「<さけび>が<語り>にかわるとき」【批評】
・吉田アミ「Voices」【作品】
・水沢なお「墨流し」【作品】
・上田由至「プロレタリアと分裂症」【作品】
・石川初/伊藤隼平「ささやかれたランドスケープ」【批評】
・三浦翔「わたしはどこから見ている−抜け落ちた足元に目を向けよ−」【批評】
-リレーエッセイ
・丹治史彦「言のはざまを泳ぐ」

『文鯨』第2号<特集:叫びを翻訳すること> 通販

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