身につけておくべき知性や、勉強しておいたほうがいい教養ってやっぱりあると思う。(東)
―東さんはさきほど、SNSへの危機感を言葉にされていましたが、縷縷夢兎はSNSの発展とともにブランドが成長してきたからこそ、ある意味いまひとつの成熟を迎えていて、変化の時期にさしかかっているのかもしれません。だからこその問題提起というところもあるのでしょうか?
東:これからの働き方について、最近よく考えているんです。10〜20代のどうしたらいいのかわからないモヤモヤしていた時期は、作品づくりするためにもSNSが必要な場所だったし、その場所にどっぷり浸かっていたから、同志を見つけるためにも、承認欲求を満たすためにも一番簡単な方法でした。
30歳を前に思うのは、人生プランを考えずにただ流されるようにSNSに依存するような形で活動してしまうのは怖いことだなって。長期的な視野で、身につけておくべき知性や、勉強しておいたほうがいい教養ってやっぱりあると思う。
菅本:うん。SNSは簡単に参加できるけれど、生々しい世界だよね。「好き」を仕事にしたくても最初は絶対失敗するし、難しい。
東:改めて私が言うことでもないけれども、YouTuberやインスタグラマーなど、インターネットを主軸として生業にできる人は、まわりを見ていてもやっぱりごくわずかです。これから表現によって夢を叶えたい人には絶望してほしくないから、そのことを頭に入れてほしいなと思うんです。
SNSで自分から見えている範囲って、とても狭い世界ですよね。「いいね」やフォロワーの数だけを見て、自分の欠点を伏せたままSNSの世界のなかで生きることもできてしまう。それは気持ちいいけど、狭い世界で自己肯定感に自惚れてしまったら、ひとたび外に出たときに、落とし穴に落ちてしまうから。
「知らなくて良いことを知って好きじゃなくなるくらいなら、知らないでいることを選択する? 私は全部知った上で失望して残る執着を信じたい」
他人からの意見にも触れないと自己分析や客観視はできないので、意見をもらうことが大事。(菅本)
菅本:狭い世界にとどまらないという意味でいうと、今後の展望を考えるときは、自分の行動に対して客観的になろうとしていますね。今だったら、フォロワーだけに向けた発信にならないようにしようってことを考えています。私は結構自己分析をしていて、デスノートばりに日々思ったことを書いていて(笑)。そうすると、だんだん考えがまとまっていくんですよね。
あとは、他人からの意見にも触れないと自己分析や客観視はできないので、意見をもらうことが大事だと思っています。身のまわりの人の意見はフィルターがかかっていますが、私のことをなにも知らないSNS上の人からの意見に気づかされることもあって。
HKT48の脱退から再スタートするまでの叩かれていた時期は、自己分析するには充分すぎるほど長い時間でした。その期間、ずっと自分のやりたいことを考えながら、他人の意見に耳を傾けていたのが今に繋がっているので。
東:私も最近はよく、私の活動に興味のない人からの意見を聞くことで自分の立ち位置について考えることが増えました。考えていることを突き詰めつつ、知らない人からの意見も聞く。軸を持ったうえで、自分のことを客観視することが一番大事で、難しいことだよね。
菅本:よく10代の方から「なにが好きかわかりません」と相談を受けるけど、まずはSNSで自分がわくわくすることだけ発信してみてほしいです。発信して初めて意見がもらえて、それを自己分析に活かせる。そのサイクルにまずは飛び込んでみる。最初は絶対失敗するけれど、その失敗をプラスにとらえて挑戦していけば、自己プロデュース能力はあがるはずです。「好き」を仕事にできる人は、自己プロデュース能力が高い。顔や才能だけでなくて、魅力的な仲間を惹きつけられることが大事だと思います。
でもそれが大前提としてある上で、コアなファン向けに本を作ったり、イベントをしたりして、目先のマネタイズをすることばかりやっていてもきっとだめなんですよね。村化した場所で、内輪にしか見られない状態が続いてしまったら、消費スピードは早いんじゃないかな。
やりたいことがある全ての女の子を応援するプロジェクト『やりたい事をやって生きたいの』もゆうこすさんが自主開催。心のなかにある「好き」を引き出し、「個人力」を高めるノウハウをどんどん広げていくそう。
東:早いよね。昔よりも誰でも手軽に注目を浴びるチャンスが増えたけど、ファンもその人だけに執着していないし、他にも魅力的なカリスマはいっぱいいるから、その人がいなくなっても替えがいるという。一部の人たちのカリスマである自分に自惚れていたら、あっという間に身も心も消費されて終わってしまうんじゃないかな。
それは縷縷夢兎というブランドの成り立ちや、自分自身へのこれからの課題でもあるので、自戒をこめて言っています。だからこそ自分のことを客観視し続けて、やりたいことをアップデートさせていきたくて。
菅本:SNSは、同じコミュニティにとどまっていたら狭い世界だけど、踏み出す場所をずらしていけば広い世界が広がっていると思っていて。だからたとえば会社員の方々も、もっと仕事でSNSを使って外の世界を学んで、それを会社に持って帰るようなことが増えたらいいなあと思うんです。