今は未完成でも将来的に全部網羅できるように「やりたい」仕事のスキルを磨いていきたい。(東)
―ここまで何度が出てきた「客観的」というキーワードにも繋がるかと思うのですが、お二人とも、特定のカテゴリーやジャンルにおしこめられそうになったら、そこを自ら抜け出していこうとする軽やかさがあります。
たとえばゆうこすさんは美容やモテに関するYouTuberでもありながら、現在は事務所経営もされて、家入一真さんや堀江貴文さんといった方々との交流があったり。東さんは縷縷夢兎の衣装デザインの他に、現在は映画も撮られていますよね。お二人とも、意識的に違う環境に身を置くようにされているのですか?
菅本:SNSの世界を中心に生きているような私にとって、ひとつのことしかしないのはリスキーです。「モテ」という軸はぶらさずに、モテクリエイター、YouTuber、インスタグラマー、SNSアドバイザーといろんなことに挑戦しながら新規ファンとも接点をつくって、今までのファンにも一緒にがんばろうと刺激を与えて、常に半年先のことを意識して行動していますね。
東:たとえば、キャラがかぶりそうな人が出てきたら、ゆうこすはどういう動きをするの?
菅本:そうだな……あんまり、ゆうこす自身がかぶらないかな(笑)。もちろん、ぶりっこだけ、YouTuberだけだとかぶるけど、いろんなことに挑戦しているから、ゆうこすという分母が1のまま。替えがきかないから、依頼された仕事に対しても、予算やスケジュール面で条件を提示できて、より価値を高められるし、いろんな強みやスキルを組み合わせることで、オリジナリティという軸を強くしていけるのかなとも思っています。でも、佳苗さんも唯一無二ですよね。
東:私の場合はやれることをやっていった結果、今に至るという感じで。デザイナー、映画づくり、アートディレクター、スタイリスト……と他業種に少しずつ挑戦しているけれど、どれをとってもまだ完成形ではないんです。ゆうこすはひとつひとつを疎かにしていないのに、両立できているところがすごいと思う。私も今は未完成でも将来的に全部網羅できるように「やりたい」仕事のスキルを磨いていきながら、総合力を高めていきたいな。そうやって過去の自分に勝ちたいよ(笑)。
東さんが監督を務めたGOMESS『Fake』のMV
監督・脚本・衣装・美術を東さんが務めた、SNSをテーマにした作品『My Doll Filter』
「あれだけ叩かれていた子が好きなことを仕事にしていて楽しそうだな」って可能性を感じてほしい。(菅本)
―『SNS展 #もしもSNSがなかったら』では、「#もしもSNSがなかったら」をテーマにお二人にも作品をつくっていただきます。それぞれどんなものをつくられますか?
菅本:SNSで大変なこともあったけど、また楽しく活動できているのはファンのおかげだと心の底から思っているので、今回はあえてファンの方たちだけに、ここでしか見られない作品をつくります。Twitterで募集した応援メッセージと私の写真を組み合わせて、ゆうこすからファンのみなさんへのお手紙をつくりました。改めて感謝の気持ちを伝えたいです。
#もしもSNSがなかったら というアート展にゆうこすも作品を展示します。さて、何を作ろうか。
逆に考えてみよう。SNSがあって1番よかった事。やっぱり、ファンのみんなと出会えた事😉!
作品の中に、みんなからのメッセージを盛り込みたい!
続く
— ゆうこす♡菅本裕子 (@yukos_kawaii) 2018年4月9日
『SNS展 #もしもSNSがなかったら』ではファンの方のメッセージを集めて、展示会場で作品として発表。
東:ファン感謝祭だね! 私もSNSがなかったら夢が夢のままで終わっていたこともあるので、SNSがまだ盛んではなかった時期に鬱々と、部屋にこもって作品づくりしていたころをイメージして、服をつくろうと思います。なんだか怨念みたいだけど(笑)、伝わらないからこそ伝えたいという、誰にも発見されていなかったころの発信を欲望する熱量は表現の原動力だと思うので、もう一度それを思い出して服に込めたいです。
―お話をうかがって、ゆうこすさんも東さんも自分の核を発信しながらも、同時に自分や他人のために変わっていける人なのだと感じました。これからはどのような活動をされていく予定ですか?
東:これまで作品モデルとなるひとりの女の子を「muse」として、それをテーマに作品をつくってきました。でもひとりの女の子のある一瞬の美しさや輝きを記録するということは、もちろんやりたかったことではあるのですが、彼女たちを神格化してしまうことで、知らぬうちに消費のサイクルに放り込んでしまったのではないか、傷つけていたんじゃないかとも一方で感じるようになりました。
それは縷縷夢兎を好きでいてくれる、信じてくれるファンの方たちにも思うことで、「muse」を選ぶことは、ある意味でそこに選ばれなかった人をないがしろにすることだとも言える。
『ミスiD』の審査員などを通して関わった女の子が徐々に増えて、自分も女の子たちも年齢を重ねるにつれて、そのことに対しても考えをめぐらせるようになりました。
東:だからこれからは縷縷夢兎というブランドを閉じられたものにするのではなく、今までは超少量生産だった販売にも力を入れていきたいなと。男女問わずいろいろな人が服を手にとれるようなラインも並行して展開したいと思い「no muse by rurumu:」というカジュアルラインもつくりました。男性でも応援してくれる方はたくさんいるので、女の子でなくても縷縷夢兎の魂を持ち運べるというか、心に持ってもらえたら、みたいな願いがあるんです。
縷縷夢兎初のアパレルライン「no muse by rurumu:」
―クローズドなコミュニティというのはある種、ダイヤモンドみたいに強い輝きを放っているけれど、脆さや壊れやすさもはらんでいますよね。縷縷夢兎には、儚く輝いていたある時期が過ぎ去り、やがてそのコミュニティを卒業するときがやってきたとしても、それ以降の人生を生きて続けるための力を与えたいと願う気持ちがあるように思います。
その「一緒に上がっていこうぜ、生き延びようぜ!」という、ファンの方たちの人生にも関わっていこうと思えるのは、SNSを通してファンの温度を感じ、声を聞いてきたからこその選択なんじゃないかなと。それはゆうこすさんにも共通していると思うのですが。
菅本:ゆうこすファンはきっと、容姿よりも生き方のファンが多いと思うんです。だから私は、これからもずっと可能性を提示したいですね。「あれだけ叩かれていた子が好きなことを仕事にしていて楽しそうだな」って。これからも無茶なことにどんどん挑戦していくので、みなさんにも自分の可能性を閉ざさずに夢を感じ続けてほしい。
私は「元アイドルだから成功した」と言われることも多くて、それがすごく悔しいんです。今、「やりたい事をやって生きたいの」というオーディションを主宰して、4,000人のなかから選んだ子たちがこれからゆうこすの事務所に入るので、プロデューサー業にも注力して、悔しい気持ちは結果で晴らしたいです。私の姿を見て「やれるかもしれない」と思ってもらいたいから。ずっとそんなふうにポジティブになれる存在でありたいです。
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