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どんな「美」を感じてる?はくる×石山蓮華が言語化する美の感覚

どんな「美」を感じてる?はくる×石山蓮華が言語化する美の感覚

「言葉」と「電線」に美を感じるふたりの眼差しとは

2019年2月 特集:美は無限に
インタビュー・テキスト:飯嶋藍子 撮影:小島直子 編集:竹中万季
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言葉の解像度を上げれば、魂の網目の細かさみたいなものが似ている人にやっと少し届いたりする。(はくる)

どうしたら、はくるさんのように自分のイメージを誤解されたとしても心を健全に保っていられるのでしょう。

はくる:学生時代、派手な人たちがやっていることが全然わからなくてストレスに感じていたのですが、それは自分こそその人たちのことを認められていないんだって気づいて。相容れない人がいたとき、自分が相手に認められていないということに意識が向きがちですが、同時に自分だって相手を認められていないとい場合が多々あるはず。

理解することは困難だったり不可能だったりするけれど、「私はこの人を見てこう思うんだな」「この人は私を見てこう思うんだな」っていう客観的な事実を、一歩引いて見るだけでもかなり変わってきますよ。

はくるさんのように少し俯瞰してものごとを受け取ることで、誰かの価値基準によって悩まされることは少なくなっていくのかもしれません。フラットにものごとを観察しつつ、「自分が欲するもののセンサー」を鋭敏に保っているはくるさん。このような視線の裏にはお父さんの影響があるようです。

はくる:父はいわゆるハイカルチャーの人で、私が好きなもののなかでもアンダーグラウンドなものに対しては全然理解がなかったんです。だから私は父に「この音楽はこう思われているけど、こういう美しさがあって、私はこういう思いで聴いているんだよ」ってずっとプレゼンをしていて。

幼い頃から自分の好きなものの美しさについて言語化してきたはくるさん。言語化することによって、自分が求めているものや美の輪郭がはっきりしていったのかもしれません。

石山:言語化するのってすごくしんどいものなんです。私が電線好きということを会社の人に最初に言ったときに、「電線のどんなところが好きなの?」って聞かれて。「じつは有機的で……」みたいな、キーワードでしか答えられなかったんですけど、それがすごく悔しかったんです。

めちゃくちゃ泣いてブチギレながら勉強して、一生懸命言語化して、できるだけストーリーとして人に理解してもらえるようなかたちで説明できるようになりました。一度、美しいものや好きなものに対して血反吐を吐くまで夢中になるのも楽しいですよ(笑)。できることは頑張ってやってみたらいいと思います。

はくる:自分の好きなものを伝えるのってエゴだし、受け取るほうにもエゴがあって。だから伝わる伝わらないってどうしても限界もあると思うんです。だからこそ言葉の解像度を上げようと日々努力しているわけじゃないですか。そうすると魂の網目の細かさみたいなものが似ている人にやっと少し届いたりするんですよね。

解像度を上げれば上げるほど共通言語・共通認識を持つ人にはより通じるようになるけれど、それがない人にはより伝わらなくなっていく。でも、それもひとつのやり方だと思います。100人に誤解されて1人友達ができるかもしれないし、そしてその1人は得難い。好きなものの美しさを語る中で獲得した1人はすごく強いと思う。

いろんな美の種類があること、多様性とは豊かさだと思う。(はくる)

今回She isでは2月の特集「美は無限に」のギフトとして、はくるさんと「on a daily basis clothing」をつくりました。SNSでアンケートを実施し、集まったたくさんの意見をもとにつくりあげたこのカットソーは、性別、年齢、体型を問わず、美しく、心地よく着られる、こだわりの一枚になっています。

はくる:みなさんの意見を見ていると、着心地や質感を重視している方が多かったので、プレーンなものだけれど、素材、襟ぐりの開き方、袖や裾の丈など細部をこだわってつくれたらと思いました。チクチクしないように洗濯タグは印刷にしたんですよ。クリームソーダのロゴがいいとか、お化けのワンポイントがほしいとか、叶えてあげたくて仕方がなくなるようなディテールの希望もありましたね。

襟ぐりはクルーネックを選ぶ人が58%、Vネックを選ぶ人が34%、それ以外が8%という結果に

「丈感もかなりわがままを言わせてもらいました」というはくるさん。胴が長く見えないようフロントは少し短めで、「お尻を隠したい人も多いと思うから」とバックは長めになっています。

はくる:この服をつくるなかで、あらためて美って多様なものだなと思ったんです。はじめはワンサイズで誰もが美しく着れる服を目指そうという話だったけれど、サイズ展開をすることにしたのは、人によって体型も、着た感じの雰囲気の好みも異なるから、カットソーであればサイズがあったほうが自分に合った美しさを選べると判断しました。

服ってサイズや形や色の展開がたくさんありますけど、そうしたさまざまな種類があることにはそれぞれちゃんと意味があるんだなと実感しました。もちろん、ワンサイズの服にも、最大公約数的な美しさが存在している。いろんな美の種類があって、多様性とは豊かさだと思いました。

石山:うん、多様性は豊かさだよね。私は電線柄のスカートに合うトップスをずっと探しているんですけど、これは合わせやすそう。私、Tシャツってライブに行ったときくらいにしか買わないんですけど、こういうシンプルなものがあるとぜったい着るんだよなってしみじみ思いました(笑)。首がスッキリして見えそうなのもいいですね。

Sサイズを着用した身長161cmの石山蓮華さん

はくる:蓮華ちゃんみたいにふだんTシャツを着ない人ももちろん、なにが似合うのかわからないとか、なににこだわればいいのかわからないって迷っている人に着てほしいと思っています。いろいろな要素がちょこちょこ入っているから、これを着ると「もうちょっとこうだったらいいのに」っていうことがわかると思うんです。このカットソーを指針として、自分のほしいものがわかるといいなと思います。

あなたがいま感じている「美」とはどんなものでしょう? 感覚的なものだから、もしかしたら言葉につまる人も多いかもしれません。でも、それは誰にも奪うことのできない、唯一無二の感覚なのです。

誰かが判断した「美」に押しつぶされそうになったら、はくるさんのように一歩引いて周りの人の「美」も受け入れながら、石山さんのように自分が信じる「美」を大切にしてあげてください。それぞれが自分の「美」を抱きしめることで、世の中の「美」は無限に、豊かに広がっていくはずです。

タンクトップが入っている2月のギフト「美は無限に」のページはこちら(お申込みは2/28まで)

PROFILE

石山蓮華
石山蓮華

女優 アミューズ所属。日本テレビ「ZIP!」にレポーターとして出演中。
主な出演作は、映画「思い出のマーニー」、舞台「遠野物語-奇ッ怪 其ノ参-」「転校生」、ラジオ「能町みね子のTOO MUCH LOVER」テレビ「ナカイの窓」STOLABO TOKYO 「石山蓮華の電線礼賛」など。コラム「電線読書」連載中。
趣味は電線、配線の写真を撮ること。
(photo:©atsuko Kitaura)

はくる
はくる

根暗ポップ・ゴールデン街『バー新子』の日曜ママ・愛と情緒がだいすき

INFORMATION

リリース情報
リリース情報
『石山蓮華の電線礼讃 オリジナルDVD』(DVD)

2019年3月6日(水)発売
価格:4,104円(税込)
Amazon

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