つらい生理のときだからこそ、自分がときめくデザインのナプキンは、気持ちに大きくプラスの影響を与えてくれると思います。(犬山)
―従来の生理用品は、ハートやお花があしらわれていて、パステルカラーで、キラキラで……というデザインが多かったと思います。このように落ち着いたグレイッシュトーンのパッケージをつくるのは、挑戦だったのではないでしょうか?
長井:そうですね。生理用品はぱっと見で購入されてしまうものなので、パッケージでアピールできる時間は、たった数秒しかないんです。だから、強く鮮やかなトーンで目を引いたり、多くの方に支持されやすいピンクを多く使ったり、という施策がとられてきました。でも、そうした商品群のなかに、凛とした佇まいの「ソフィ ORGANIC® オーガニックコットン」シリーズが入ることで、むしろたくさんの視線を集められたんです。テストで、しっかりと結果も出ています。
犬山:すばらしい……! 私はもともと洋服が好きだったり、コスメもパッケージまで凝ったりするタイプなので、商品のビジュアルが気になるんですよね。自分がかわいいと思うものを身に着けると、テンションが上がる。でもこれまで、生理用品だけはデザインを諦めていたから、買うときもつけるときも全然うきうきしなかったんです。パステルカラーやキュートなデザインが好きだったらよかったんだけど、私はそうじゃなかったので……。
だからこの、シンプルなビジュアルが本当にうれしい。つらい生理のときだからこそ、やさしくて落ち着いている雰囲気のものを使いたかったんです。この対談のお話をいただいたときも、製品を見て「やりたいです!」って即レスしちゃいました(笑)。
―こういった商品がきっかけになって、ブルーデイが逆にちょっと楽しみになる……なんて未来も来るかもしれませんね。「生理が来たら、かわいいナプキンを持ち歩こう!」「お気に入りのサニタリーショーツが履ける!」みたいな。
長井:ちなみに私の場合は、生理がきたら、いろんな製品サンプルを使わないといけないんですよ。「あの新しいやつ試してみよう」「あれも使ってみようかな?」って。だから、生理という現象はもう、プラスでもマイナスでもありません(笑)。
犬山:なるほど! 気になるナプキンをピックアップしておけば、私たちも生理がちょっと楽しみになるかもしれないですね(笑)。
長井:お客様相談室に寄せられる声には、近しい感想もあるんですよ。「お花のパッケージがかわいくて、生理を明るく迎えられました」とか「ナプキンに印刷されたメッセージに癒されました」とか。ナプキンのパッケージやデザインによって飛び跳ねるほどうれしいとまではいかなくても、少しだけでもそんな気持ちになっていただけたら、私たちもやりがいがありますね。いろんなお客様のお好みに寄り添える、さまざまな選択肢をご用意していけたらと思います。
そのためには、女性像を決めつけないことが大切。「○○女子はハートが好き」「生理の重さはみんなこのくらい」みたいにカテゴライズしないで、インタラクティブな対話を重ねていきたいと思っています。私たちが向き合っているのは「個の集団」だということをしっかり意識して、製品開発を進めていきたいですね。
犬山:そんな気持ちで開発してくださっているということ自体が、希望です。生理のときに気持ちを上げるって、本当に大切なことですよね。自分がときめくデザインは、気持ちに大きくプラスの影響を与えてくれると思います。
ごきげんな女性のパワーは、性別を超えて伝播し、今度は世の中を元気にしていけると信じています。ソフィができることは、そのお手伝い。(長井)
―これからの「生理」や「生理用品」についても、考えを広げてみたいです。たとえばソフィは、製品やサービスを通じて、どんな変化をもたらしたいと考えていますか?
長井:ソフィをつくる私個人としては、ごきげんな女性を爆発的に増やしたいと思っているんです。
犬山:最高! 同意しかない……!
長井:女性って、すごくパワーに満ちていると思うんです。職場にも女性がたくさんいますが、ちょっと疲れた気持ちで会社に来ても、みんながシャキッとしている様子を見るだけでうれしくなる。女性が持つ前向きさや気遣いに、私自身がいつも助けられています。
それはネガティブな感情も同じで、たとえば家のなかで私がイライラしていると、夫や子どもにも伝播して、みんなの居心地が悪くなってしまうんですよね。だからこそ、世の女性たちがごきげんになれば、社会に与える影響力も大きいはず。その変化をかなえるために、生理用品は、強い存在価値を発揮すると感じています。
生理にまつわる「ちょっとした嫌なこと」は、生理用品が進化することでかなり解決できると思うんです。そうすれば、忙しい現代の女性が、生理のことを考えるパワーをほかのことに充てられる。自分が大切にしたいことに集中できれば、女性はきっともっとごきげんになれるでしょう。そして、ごきげんな女性のパワーは、性別を超えて伝播し、今度は世の中を元気にしていけると信じています。ソフィができることは、そのお手伝いなんですよね。
まだ気づけていない呪いを洗い出して、一つずつ変えていく。そういうアクションをとるためにもパワーが必要だから……「じぶんにいいこと」が大切になってくる。(犬山)
―女性がごきげんになれば、まわりの人たちもごきげんになれる、というのが素敵ですね。ジェンダーの問題もまだまだ課題はあるけれど、最近は少しずついい方向に進んできていて、希望が持てます。ここからさらにごきげんになるために、私たち個人は、どんなアクションができると思いますか?
犬山:呪いって、かかっている最中にはなかなか気づけないんですよ。たとえば昔は「女は生理があるから政治ができない」なんて言われていた時期があって、いまから思えば信じられないけれど、当時はその差別に疑問をおぼえる人が少なかった。こんなふうに私たちは、女の子がまだたくさん背負っている呪いを、すべて見つけられていないと思います。もちろん、性別を問わずさまざまな人が個々の呪いや生きづらさを抱えている。だからこそお互いに寄り添って、敵対せず、これからのことを考えていきたいですよね。
まずは、いろんな呪いを、ひとつずつ洗い出していく。「なんで女性のほうが家事をやらなくちゃいけないの?」「男性は、どうして家族を養わなくちゃいけないんだっけ?」などの「おかしな圧」を見つけて、一つひとつ変えていくフェーズです。そのときには、これまでその価値観で生きてきた方々への寄り添いも必要だと思っています。たとえば、男尊女卑の激しい時代に頑張ってきた先輩女性たちには、リスペクトとねぎらいの気持ちを忘れたくないですよね。そのうえで適切な情報を発信しつつ、世の中をよりよい方向に変えていきたい。
だけど、そういうアクションをとるためにもパワーが必要だから……「じぶんにいいこと」が大切になってくるんでしょうね。長井さんもおっしゃっていたけれど、内側に元気がないと、間違ったことに怒る力すら湧いてこないから。
長井:生理って、一生分を合計すると約6年9か月にも及ぶんですよ。それだけの長い期間を、無駄にするわけにはいきませんよね。
犬山:本当だ! 私たちの子どもの世代が生理を迎えるとき、もっとごきげんでいられるような状況を、少しずつつくっていけたらいいですね。
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