きっと今この瞬間にしか切り取れない光に、背景に、表情に「今の、まさにあなたなんだよなあ」と思ってスマホを取り出すと「撮っていいって言ってないでしょ」と怒られる。ちょっと本気の喧嘩になったこともある。あなたはカメラを向けられるのを好まない。カメラ越しに見るあなたはいつもフイと横を向いている。だからいつしか、横顔ばかり撮っていたことに気づく。気づかれないように、私ではない何かに向けた穏やかな笑顔を撮影していた。
あなたが私の存在を忘れて、私ではない何かに向けている笑顔はとても素敵だ。だから撮る。バレると、睨まれる。調子がよければちょっと顔を手で隠しながらはにかんでくれる。
そんな写真が積もって、積もって、「笑った顔が撮りたいよ」と言ったら「ソロはいやなのよね」と、ふたりで映ることを条件に、とびきりあなたらしいあなたを撮らせてくれた。やったね。