大切なものは守り抜く。
たとえ友達をなくしたとしても
/YUKI

17歳の私がzineやレコードを買い続ける理由

2017年9・10月 特集:未来からきた女性
テキスト:YUKI 編集:竹中万季
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「ロリータ街道爆走中なのです。」

私はロリータのお洋服を身に纏ってはいないけれど、好きな洋服を着てお気に入りの場所へ出向く時には必ずこの台詞が心の中に浮かぶ。小説ではなく映画の『下妻物語』(2004年)に出てくる桃子の言葉だ。私は嶽本野ばら先生原作のこの映画を、MILKというブランドをきっかけに知った。

桃子は兵庫県の尼崎から茨城の下妻に引っ越してきた、「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」というロリータのメゾンのお洋服で固め、ロココに生きる女のコだ。「どんなに非常識な生き方だとしても、幸せならいいじゃん、気持ち良ければオッケーじゃん。ロココの精神は私にこう教えてくれました」と言うように、彼女は17世紀フランスのロココ時代の貴族女性たちが持っていた「好き勝手に生きる」精神を貫いている。

桃子は中学生の頃からMILKやJANE MARPLEのお洋服に魅力を感じており、高校生になって大阪・梅田のマリアテレサにその二つのメゾンのお洋服を買いに出向いた。そこで、一緒に扱われていたBABY,THE STARS SHINE BRIGHTに出会い完全に心を打ち抜かれた桃子は、ロリータのお洋服を愛好する者からロココに生きる者となったのだ。ロリータファッションはフリルのブラウスにコルセット、パニエそしてヘッドドレス、またもやフリル全開の日傘が必須アイテムなので、ロリータの桃子がロココ時代の貴婦人達の精神や生活を参考にしない理由がないよね。ロココに生きると決めたのだから。

桃子は私が出逢った女のコで一番クールだ。桃子はロココな精神を有する上で、自分の考えを付け加えているのだ。

「大切なものを見つけたら、それを絶対に手放さない、守り抜く、たとえ他の大きなものを失うことになろうと。だって、本当に大切なものに巡り合えずに死んでいく人だって、沢山いるんだからね」
(嶽本野ばら『下妻物語』)

この言葉を読んだ時、「こんな女のコいるんだ。そうだよね桃子!!」と、私は桃子に打ち抜かれました。私は恐らく音楽がきっかけでクラスメイトと一緒に過ごすのがつまらないなと感じるようになったのだけど(だって体育祭やレクの時間にかけられる音楽は必ず、妹がテレビをつけているときに耳に入ってくるようなものばかりで、全くワクワクしなくて……ダンスチアリーディング部の発表会でもそうだった。洋楽のサントラを探せばピッタリのBGMがあるっていうのに)、「私が良いと思うものを身近な同級生が知らないってむしろラッキーじゃん」と思うようになったのだった。

ロココに生きるだけある桃子は自分の価値観を第一に尊重し、支え合わなければ生きていけない人間としてではなく、生物のヒトとして(彼女は自分のことをミジンコでも良いと言っているが)自立しているロリータなのだった。

さて、ここで嶽本野ばら先生から学んだことを実践する時がやってきた。憧れの女のコ、桃子を真似っこするのだ。私の場合、自分の大切なことといえば、zineやレコードを買い続けることや、Kate Mossの写真集や洋雑誌や『オリーブ』を集めることだったり、映画を観に行くことだったりする。それらを死守し、桃子のように自分が住む退屈な街を飛び出し、東京にあるお気に入りの場所に出向いたのだ。

すると不思議なことに、まるで私がそこに出向くことが想定されていたのかのように「なぬ!? まさかここで出会うとは」というような出来事がその時にだけ起こるのだ。例えばDavid Bowieが亡くなった日、私は一人で原宿に来ていた。薄暗くなってきた頃、カフェで遅い昼食をとっていた。その時、彼の訃報を知ることになる。その後は、すっかり暗くなった高円寺を歩いていた。ファンシーな内装の古着屋さんに入り、「まさかね〜」と思いながらsaleコーナーを覗いていたら、David Bowieのアルバム『Ziggy Stardust』のZiggyがいるではないか! もちろん、そのZiggyがプリントされた服は即購入。好きなことを追い続け外に出かけると「こんなことってあるんかいな」って感じる経験を頻繁にするようになった。

桃子も、通信販売でしかBABY,THE STARS SHINE BRIGHTのお洋服を購入していなかったのに、代官山にある本店に出向くと、初めて逢う店員さんに誰だかわかってもらえるという経験をしていた。やっぱりコンセプトをしっかりと持つお店に魅力を感じ、それを絶対に手放さない桃子のパワーがお洋服にも伝わるからだと思う。そんなことが、実際に私にも起きた。「大切なものを見つけたら、それを絶対に手放さない、守り抜く」という姿勢が正しいからだと私は思うのだ。

学校に通って学ぶことより遥かに価値のある生き方を私は『下妻物語』の桃子から学んだのだ。全ては繋がっているのだと思う。だってMILKに出逢わなければ、ロリータのメゾンの名前が頻繁に登場する野ばら先生の小説にも出逢っていない。桃子の精神を倣うことにより、私はオリジナルの自分を作ることができた。そして友達をなくす。それでも良い。だって桃子の言う「個体として自らの本能のまま生きていく」ことに近付けているからだ。はたから見れば自堕落と言われるロココな生き方をする桃子。実は彼女が一番闘っている。

PROFILE

YUKI
YUKI

今17歳のYUKIです。少ないお小遣いで直ぐに雑誌を購入してしまいます。部屋は雑誌で溢れかえってきた。曇りの日にレコードを流しながらコラージュをしたり、思うままにお絵描きをすることが最近好きです。住んでいる場所は退屈な街です。東京が羨ましい。

大切なものは守り抜く。たとえ友達をなくしたとしても/YUKI

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大切なものは守り抜く。
たとえ友達をなくしたとしても
/YUKI

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