この星に生まれて/小川紗良

女優、監督、女として、恵まれているなりの戦い方もある

2018年3月 特集:変身のとき
テキスト:小川紗良 編集:竹中万季
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私は恵まれている。生まれてこのかた、ずっと。

両親にとっての第一子、両祖父母にとっての初孫として誕生し、生まれた瞬間から親戚中に可愛がられた。ピアノ、バレエ、英会話……女の子の習いごとは一通りやったし、発表会ではいつもセンターに立っていた。お遊戯会でも学芸会でも文化祭でも、いつも劇のヒロインをやっていた。保育園から大学まで、先生たちはたくさんひいきしてくれた。

もちろん辛いことや苦しいことも色々あったけど、総じて、私の人生は恵まれている。散々可愛がられて、愛されて育った。

それなのに、私は愛情表現が下手くそだ。好きな人に、嫌いと言ってしまう。友達が泣いている時、何て声をかけたらいいか分からない。親にちゃんとありがとうが言えない。心から面白くても、苦笑いをしてしまう。泣きたい時に泣けない。

こんな自分もうやだ! 素直になりたい! 変わりたい! と本気で思い始めたのは20歳を超えてからだ。第二次思春期の始まりである。

色々なことをした。環境を変える、尊敬する大人と話す、部屋を片付ける、本を読む、ヨガを始める……少しでも「変われるかもしれない」と思ったことはすぐにやった。もう、10代じゃないから、本気で時間とお金をかけないと変われない。変わるには、今がギリギリ最後のチャンスだと思った。

それでも、人はそう簡単には変われない。セーラームーンやどれみちゃんみたいに、器用に変身できない。一歩進んだかと思えば二歩下がる。

もう、どうしたらいいんだ……と途方に暮れていた頃に、保育園の同窓会があった。園長先生と、幼馴染のみんなと、その両親たちに囲まれて。昔のことやこれからのことを語り合ううちに、ある思いに駆られた。

「私はなんて恵まれているんだ……」

自分がどんな星に生まれついたのか、この時になってやっと分かった。こんなこと、きっと同世代のみんなはとっくに通過しているのだと思う。私はずいぶん時間をかけてしまった。

今まで、恵まれている自分を認めることが怖かった。だって人は不幸が好きだから。映画の世界なんて特にそうだ。不幸話は賞賛される。だから私も、人生における不幸ばかりを大切に大切に守ってきた。

しかし、気づいてしまった。私はとても恵まれている。愛されている。それの何が悪いのだ。せっかく恵まれた星に生まれたのなら、正々堂々と幸せを掴みにいけば良いじゃないか。女優として監督として一人の女として、恵まれているなりの戦い方がきっとある。

恵まれている自分を認め、愛してくれる人たちを認めることで、雁字がらめになっていた心がふっと軽くなった。自分の人生も、大切な周りの人たちも、愛おしくてたまらないと思えた。私に必要だったのは、変わることではなく、認めることだった。

私は恵まれている。生まれてこのかた、ずっと。この星に生まれて本当に良かった。みんなのことが大好き。

PROFILE

小川紗良
小川紗良

おがわ・さら 1996年、東京生まれ。女優としては、早稲田大学1年生の時に主演した「イノセント15」(2016年公開)が海外の映画祭で次々と上映され、国内ではテアトル新宿・アップリンク渋谷でロングラン上映になるなど話題になった。監督としては「あさつゆ」(2016年)・「BEATOPIA」(2017年)・「最期の星」(2018年)と3作品を発表している。
「水道橋博士のメルマ旬報」で連載も担当しており、水道橋博士からは「和製ジョディ・フォスター」と称されるマルチプレイヤー。2018年2月公開の映画「ウィッチ・フウィッチ」、4月14日公開の映画「聖なるもの」で主演をつとめる。
Sarasara.

INFORMATION

作品情報
作品情報
『聖なるもの』

監督:岩切一空
脚本:岩切一空
出演:
小川紗良
南美櫻
山元駿
縣豪紀
希代彩
映画『聖なるもの』公式サイト

『ウィッチ・フウィッチ』

監督:酒井麻衣
脚本:大西雄仁
音楽:Vampilla
出演:
小川紗良
萩原利久
ジン
micci the mistake
辻凪子
洪潤梨
映画『ウィッチ・フウィッチ』公式サイト

この星に生まれて/小川紗良

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