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自分で服を作ってみよう。ミシン、糸、定規を使わずに/横澤琴葉

即興性を重視するブランドkotohayokozawaデザイナー

2018年5月 特集:生活をつくる
テキスト・写真:横澤琴葉 編集:野村由芽
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自分で服を作ったことはありますか?

みなさんこんにちは。初めまして。横澤琴葉と申します。
ファッションデザイナーをしています。
kotohayokozawaという自分の名前のブランドを3年前に立ち上げて、それをお客様やお店に買っていただくことで今は生活をしています。
普段はこんな服を作っています。

作っている動画はこちら。

みなさんは自分で服を作ったことはありますか?
私が初めて服を作ったのは小学校4年生くらいの夏休みの自由研究だったと思います。
着なくなったタンクトップとスカートをつなぎあわせて、その上に一生懸命イラストを描いたり刺繍をしたりした覚えがあります。
(確か空き缶からジュースが溢れている絵だった気がする。ジュース部分にビーズをたくさん縫い付けていた)
作品展でファイルや模造紙にまとめた皆の研究内容が展示される中、ハンガーにかけられた服と、作り方を図で描いたものやそれを着たデザイン画を展示してもらえたことは忘れもしません。
ああいうキラキラした気持ち……取り戻したい……。

ものすごく純粋な動機から作られたものは魅力的です。
どうにかこうにか自分で何かを生み出したい、という強い衝動だけで生まれたものほど素晴らしいものはありません

そこで今日は、初心にかえって「身近な道具やアイテムで服を作ってみる」ということを試してみたいと思います。

既製品として売られているような服を作るとなると、「興味はあるけど服を作るのって難しそう」と思ってしまう方がいるのも無理はないと思います。
事実、自分で一から服を作るのは決して簡単なことではありません。私自身、いつまでたってもわからないことだらけです。
パターン(服の型紙)や素材に関する知識や、縫製の技術も必要です。さらに、服は服単体では成立しません。

でも、この企画ではそういう難しいことは一旦置いておいて、初めて服を作ったときのような「作りたい!」という強い想いと、情熱だけで服を作っていきます
この思いさえあればどなたでもトライしていただけるような内容なので、記事を読んでくださった方が、何か作ってみようかなと少しでも思ってもらえたら幸いです。

そして同時に、これは自分で服を作って売ることを生業にしていると気づかぬうちに徐々に失ってしまう感覚だとも思います。
……どうしてだよ! 一番大切なことなのにな!
目まぐるしく過ぎていく日々の中で、服作りへの情熱を失わないためにも、この企画は自分にとってはある種の訓練、リハビリでもあります。

ミシン、糸、定規を使わないでできる、服づくりスタート

まず今回は、服作りの基本の道具でもあるミシン、糸、定規を一切使用せずに服を作りたいと思います。
今まで習ってきた服に関する知識や「こうであるべき」という概念もできるだけ知らなかったことにしましょう。

用意するものは
生地(今回はアトリエにあったポリエステル100%のストレッチチュールですが、何でもいいです)
マーカーペン(お好みの色を。直接生地に図を書き込んでいきます)
ハサミ(普通のハサミで多分大丈夫)
クリップシーラー(ポリエステルを使用する場合に持っていれば是非。熱でポテチの袋とか閉じるアレです)
ホチキス(中綴じ用のものがあれば尚良し。無ければなしでも全然構いません)
好きな絵や写真(マジで大事なものは事前にコピーを)

1.まず自分が作りたい大きさで前身頃を描いてみる

定規がないので、こんな感じに首と腕が出る箇所を意識してフリーハンドで描いてみました。
おじいちゃんが着ているランニングシャツにわりと近い型ですね。
「これくらいかな?」という大きさを思い切って書いてみましょう。
布を体に当てながらシュミレーションしてみても良いかと思います。

自分の描いた前身頃のアームホール(腕が出る部分)がどれくらいの長さになったか手などを使って測ってみましょう。私の場合、左手の親指から人差し指の先までの長さ+薬指1本分くらいでしょうか。

2.同じように後ろ身頃、袖を描く
前身頃と同じように後ろ身頃も描き、アームホールを計測しておきましょう。
袖山(身頃とつながる部分)は身頃(前身頃+後ろ身頃)のアームホールとだいたい同じくらいの寸法だとあとでパーツ同士を付けやすいです。緩やかな山のように描いていきます。
少し難しいかもしれませんが、ここで長さが合わなくてもそれはそれで今回は全く問題ありません。

昔、ココ・シャネルの伝記映画『ココ・アヴァン・シャネル』で葉巻を吸って片手を腰に当てながら一筆書きでサラサラ~~っと袖山を書いていたシーンがありました。
実際そうしていたのかは知りませんが(多分そうはいかない)、生きることと作ることが滑らかに繋がっているような気がしてとても良いなと思いました。
そんなイメージで袖の曲線を描いてみてください。

3.生地をカット(裁断)していく

縫い代を少し残すため、マーカーの線の外側をザクザク切っていきました。

本来は「裁ちバサミ」と言われる布を切る専用のハサミで必ず裁断しますが、
あれは一家に一台的なスタンスでみなさんお持ちなのでしょうか? もしあればそれを使っても。

こんな感じです。「早く着てみたい!」という完成に向かってはやる気持ちをそのままハサミに込めましょう。
思うがままにやることが大事です。私はこの時点で既にちょっと愛くるしさを感じています。
(右袖と左袖を一応区別させてみました)

あと、機能性を考え(今更何を言っている)身頃にポケットを付けたいと思います。

4.好きな柄を書き込んでいく

ただの無地じゃつまらないですよね。
着色したり、好きな雑誌や写真を生地に写してなぞってみましょう。

装うことに対して何も求めていなければ極論、布は全部真っ白でも良いわけです。
なのに何千年も昔から天然由来の綺麗な染料や美しい柄などの加工技術が存在するのはきっと、文字や言葉では補えきれない「自分はこうでありたい」という気分や好みを反映できるツールのような役割があるからだと思います。
技術は変われど、この世に染色工場やプリント工場などがあり続けていることにも心から感謝しつつ、柄を描いていきましょう。

絵が得意な方は自分で描いてもいいと思います。
画力に自信のない方は、好きな絵を写すとそれっぽくなるしオススメです(写して作った服を販売してはいけません)。
これは自分だけの楽しみにとどめましょう。

雑誌にめちゃくちゃインクが裏写りしました。嫌な人はコピーをとりましょう。

たくさん描きましたがファッション誌からの絵ばかりではもう飽きてしまったので、家の中を探し、先月上海で買ってきた柿の種のパッケージも写してみました。
(一人で描いている感を出す写真を撮るのに必死で、右利きなのに左利きで描いてしまっています)

さっき作ったポケットはちょっと大き過ぎたので一回り小さくしようと思ったのですが、
この二重に書かれたポケットが気に入ったのでこのまま使用したいと思います。

いろいろ描き込んでこんな感じになりました。かなり没頭し、久しぶりにとても楽しい時間を過ごせました。

5.いよいよ各パーツをつなげていく!(縫製)

素材がポリエステルのため、シーラーを使って熱接着できないかと思い、試みてみました!

肩や脇の部分はシーラーで留めましょう。
ポケットなどの中心に近いパーツは中綴じ用のホチキスで付けます。
柿ピーが頭上に乗っている大きな顔の絵がちょっと怖いですね。

線をガイドに好きな数だけ止めていきましょう。

やったー!! これで胸ポケットに物が入るようになりました!!!
これはかなりの感動があります……!
ここにノートとペンを入れて持ち運ぶなんて知性を感じますね。

ポケットがついたら、まずは肩の部分からシーラーを使って接着していきます。
赤いランプが消えるまで布をはさみながらボタンを押し続けます。

意外とちゃんとくっつく! これはすごい!!
これは遂に見つけてしまった感があります!!
家庭用ミシン発明以来の大発見です。

と思ったのも束の間、温度が高くなり過ぎたようで縫いしろが溶けました。
温度調節がものすごく難しいです。一瞬が命取りです。

溶けてしまったものはしょうがないのでこのままダメージ加工っぽい感じにしようと思います。

さあ! ここからは身頃と袖をつなげていきます。
曲線同士なので難しいですが、端と端を合わせながら少しずつホチキスなどで止めていきましょう。

小学生の頃、ホチキスの芯にマジックペンで色塗ったりしませんでしたか?

生地に書き込んだイラストと同じテンションで塗ってみました。細部へのこだわりも大切です。
ちなみに私は20歳くらいまでホチキスの「芯」のことを「タネ」と呼んでいました。
(家族がそう呼んでいたんだと思う)

だがしかし、ホチキスも布を留めるために生まれたわけではありませんので5発に1回くらいは不発だったりします。

やりにくい場合は布を紙で挟んでから打つとホチキスも本領発揮できます。
後半はホチキスに飽きたので、商品の下げ札用のヒモなどで結んで縫い止めたりもしました。
着たらゆらゆら揺れてきっと可愛いはず。

ついに完成です!

せっかくなので最後にブランドのタグを付けました。正真正銘の私が作った服です。
人生でもう二度と同じものは作れないでしょう。一瞬は一度きり、メメント・モリ。

子供の頃に戻ったみたいに終始ワクワクしたし最高にスペシャルな時間でした。
制作時間は、写真を撮りながらでしたが正味2時間くらいでしょうか。
最後に完成した服に合わせてスタイリングを組み、スタッフに着てもらいました。

大人っぽいけど元気な感じもして、なかなか良いのではないでしょうか(ポーズの問題)。
グラフィックのレイアウトに凝りだしたら、結構時間があっという間に過ぎていきました。

ミシンなんてまだない時代、人はすべて手縫いで服を作っていました。針や糸もない時代は何を使って衣服を作っていたのでしょう。そもそも、まっすぐな直線というものも、元々は自然界には存在しませんよね。

縄文や弥生時代の暮らしを博物館などで見たことはありませんか? あの時代はきっと、各家庭で衣服を繕っていたのだと思います。生地も各家庭で織っていたかもしれません。だとすると、家庭ごとのデザインやクセが少なからずあったと思うんです。「あいつの家の服は少し柔らかくて丈が短めでイケてる」とか「あの子の家の服は模様が描いてあって綺麗」とか……。私はそういうことを考えていると胸が熱くなります。初めから同じものなんて何一つ存在しないんです。現代でいうと家で作る料理に近い感覚かもしれません。

この企画を重ねて、いつか作ってきた服全部を展示するイベントをして、ワークショップなんかも開催できたら最高ですよね!
夢は膨らみます。She isさん、是非おねがいします。

そのためにはまず私がこれからも新たな試みに挑戦し続けなければなりません。大丈夫かな。
やり始めるととてつもなく楽しいのですが、初めての記事ということもあり、正直なかなか踏み出せませんでした。
「こんな方法で、こんなもので服を作ってみてほしい」というご意見、後押しを今後お待ちしております。

この暑さや雨にどうか負けないで、無理せず楽しい日々を過ごしましょう。
命は有限、できるだけ好きなものを着て、できるだけおいしいものをたくさん食べたい!
ではまた!

PROFILE

横澤琴葉
横澤琴葉

1991年愛知県生まれ
名古屋市内のファッション専攻の高校を卒業後、上京。
エスモード東京校に入学し、その後アパレル企業にて
デザイナーとして勤務しつつ、ここのがっこうに通う。
退職後、再びエスモードAMIに通い
2015年3月よりkotohayokozawaをスタート。

kotohayokozawa

2015年3月にファーストコレクションを発表。
「何でもない日々に収まりきれない気持ちを着る」というコンセプトを掲げ、
感情と装いの密接な関係を探る。
2018年より即興性を重視した一点を中心に展開するライン「todo kotohayokozawa」を立ち上げる。

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