大人になってからの方が、友達ってなんだ? と思うようになった。毎日学校で会うわけでもない、会う頻度と精神的な距離が比例するわけでもない。考えだすと難しい。どこまで友達でどこからが友達じゃないんだろう。
私たち、劇団雌猫は今年29歳になる4人の「女友達」だ。共通点はオタクであること。宝塚歌劇、ジャニーズ、K-POP、BL……、それぞれ違う世界を愛している。集まると異文化交流のようだ。
出会ったのはインターネットで、仲良くなったのは大人になってからで、たまたま同い年だった。自分たちが楽しむために「インターネットで言えない話」というコンセプトで同人誌を作ったら結構反響があり、いろいろあって書籍化することになった。ネットでふわっとつながった人たちとこんな未来があるなんて、出会った頃は当然思ってもいなかった。
2016年冬に同人誌『悪友』を制作。その後書籍化された『浪費図鑑』では、完全匿名のエッセイや2000人のアンケートから浪費する女たちの実態に迫った。
毎日のようにグループLINEでどうでもいい話をしまくり、月1回くらいは理由をつけて全員で会う。仲良しでしょう? でもいざ誰かに「仲良しですね」と言われると微妙にむずむずする。一般に想像されるアラサー女4人の「仲良し」イメージに比べて、私たちはお互いのプライベートな話を知らなすぎるからだ。本名はかろうじて知っているけれど、恋愛や仕事の話はあまりしない。深夜まで残業している時にお互い鼓舞しあうくらいだろうか(「疲れた」「私もまだ会社、頑張れ」「今タクシー」「みんな偉い、来週おいしいもの食べよ」「そうしよ! 焼き肉がいい!!」)。
話題の多くはお互いが好きなものについてになる。オタク趣味を起点に出会うと、好きな人や好きなものについて過剰な愛でたっぷりコーティングしながら存分に話せていい。自分が喋りたいことを喋るエゴイスティックな会。おいしいものを食べてお酒を飲んでぎゃーぎゃー騒ぎながら楽しく過ごすと、明日も仕事でだるいけど、まぁ自分は自分のフィールドでなんとかやっていこう、みんなも頑張ってるし、という気になる。
お互い知っている面はほんの一部かもしれないけど、私が知っている彼女たちのことを私は好きなのでそれでいい。逆に浪費家仲間だから言えることもいろいろあるのだ。先月のクレカの決済額に驚いたとか、来週も日帰りで大阪にコンサート観に行くことにしたとか、デパートで結構な額のサンダルを衝動買いしてしまったとか。
この関係に名前をつけるなら、同人誌のタイトルでもある「悪友」が一番近しいと思う。悪い友達。時に毒を吐いて、時に悪だくみしながら、頑張ろうな、頑張れよ、と目配せして自分の持ち場に戻っていく。生きてるとムカつくこともイラつくこともいっぱいあるけど、会社を早退して夕焼けに染まる帝国劇場で待ち合わせしたり、キラキラにインスタ映えする空間で手づかみでシーフードを食べるオシャレなのか野蛮なのかよくわからない店に行ったり、新宿伊勢丹を上から下まで練り歩いて一緒に爆買いしたりしていると、いつのまにかなんとか大体それなりにリセットできている。
そういう悪い女友達を、大人になってから作れたことはとても幸運だったと思う。悪口や愚痴で盛り上がるくらいなら、次にどんな悪いことをしようか考える方がずっと楽しい。自分の機嫌は自分でとる。お金と時間の正しい使い方だ。