「人生には踊り場がなくてはならない」
と、ある方が言葉をかけてくれました。
そうか。今が人生の踊り場。状況を一旦整理するタイミングなのかもしれない。
27歳の私が、感じていることをここに記しておきたいと思います。
この4月からフリーランスのイラストレーターとして働き始めて7か月の時が経ちます。
それまでは美大の助手を3年間勤め、毎日のように人と接しながら過ごしてきました。カウンターの奥に自分の席があって、先生とやりとりしたり、カウンター越しに学生の相談に乗ったり。相談に対してヒントを投げかけるとたったその一言で学生が目に見える成長を遂げる時ほど嬉しいことはありませんでした。そんな仕事が大好きで、総じて楽しい3年間だったなと想い出深いです。
さて、そこから打って変わって自宅勤務の生活。「人と接する機会が減る」ということがなによりの気掛かりで、独立当初はその不安をもろに受け……イラストレーターとしてフリーランスになるということは助手になる前から決めていたけれど、ついに独立したと同時に漠然とした不安に打ちのめされる日々が数か月続きました。
フリーランスになってみて一番に実感したことは、私は今まで本当の「一人」になったことはなかったのだなということ。この感覚に気付くまでは常に誰かが傍にいたのだな、と。一人暮らしとかそういう括りの話ではなくて。
一人の時間を肌身に感じ、自分と向き合う時間が作れた、とにかく貴重な経験。
今までできなかったこと、太陽が出ている時間に街を散歩してみたり、本を読んでみたり。これまでの人生で、影響を与えられた作家の生い立ちを追ってみたり。そんなことを生活へ積極的に取り入れてみると、そこには確信がありました。
「急がず、種を蒔き、丁寧に水を遣ること」
フリーランスという立場になったことで得られた、とても重要な気付きだったと思います。
身近にいる尊敬する人たちは皆「自分は素晴らしいと、己を奮い立たせなさい」と言います。
それは、自分を信じてあげるということなのかもしれない。自分自身が一番のファンでいてあげるということ。
私はいつも、「こうでなければいけない」という、目に見えない何か大きな壁とずっと闘っていたように思います。実は、とっても負けず嫌いで……! それによって、自分のことを好きになれなかったり、許せなかったことも沢山ありました。しかし、いろんな人と出会ったり話したりしていく内にだんだんと視界がひろがり、「何故そんなに気を張っていたのだろう」「なにを意固地になっていたのだろう」と、自分で自分を苦しめていたことに気がついた瞬間が多々あり、縛り上げられていた気持ちの糸が一気に緩むような感覚を味わいました。壁をすり抜けたのか、横の隙間を通ったのか、高さを超えたのか。その手段は不明確だけれど、ひとつ壁を乗り越えたのです。
目に見えることには安心できて、目に見えないことには不安がつきまとう。生きていれば自然なことなのかもしれません。そんな自分を信じ、わからないことさえも楽しもうという気持ちを生涯忘れずにいたいです。
そんな私は、これからをどう生きようか。
最近、私の絵によく登場する編み込みのような模様に名前をつけました。
それは、
のどか “NODOKA”
「空が晴れて、天候が穏やかな様」という意味を持ちます。
私たちが日常的に見て感じている景色や彩りは、晴れた空から光が降り注ぐことによって生み出され、生活にとても大切な存在です。私はこの模様を光に見立てて様々なものを描いています。
この模様は、自分が人生をかけて表現したい方法のひとつ。
「光を表現したくて描き始めました」と、いつも紹介していたけれど、自分の名前とこんなにもマッチしていたなんて。知らず識らずの偶然、いや必然だったのかも。こうしたことでより愛着が湧いて、もっと自分自身がいちファンでいられるのではないかと感じています。
これから先、この模様でいろんな人とコラボレーションできるようになりたい。
そのためには、とにかく、この表現を描き続けること。
日本で、世界中で、より多くの人々に知られる存在へとなれるほどに。
冒頭で、フリーランスになって「人と接する機会が減った」と書きました。
確かに、大学で働いていたような人との接し方は減ったけれど、これからは今までとは違う感覚の人と接する機会がきっと増えていきます。社会的な組織に関わった時期があったからこそ、その良さもわかる。そこには一言では言い表せないくらいの安心感があったりして……だけれど、やっぱり今は自分の表現に時間をかけて突き進めていけたなら……なってみたい自分になれるのではないかと思うのです。
過去の自分が夢見た自分と出会えるように、しばらくはフリーランスという働き方を通して日々を過ごしてみたいと思います。環境が変わることを恐れず、新しいことを吸収し、自分の成長に喜び、そしてその先に待っている未来へ向かっていきたい。
全ての出会いに感謝して。