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終わらない制作をつづけること/清水えり子

学生時代から続けてきた作品作りがブランドに

2019年3・4月 特集:夢の時間
テキスト:清水えり子 編集:竹中万季
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zaziquo(ザジコ)、という名前でブランドをやっています。ザジコは、私がずっと続けてきている“刺し子”の音の響きをひねって造った言葉です。
オリジナルでテキスタイルを製作し、服や小物を発表しています。

drawing / 2014 学生時代から描いているドローイング。テキスタイルのイメージを作る大切な作業

zaziquoはテキスタイルに刺し子とコラージュを多用していますが、それはなぜかとよく聞かれます。好きなイメージや写真を組み合わせること、そして手で縫うことは、個人的で趣味的な作業です。
好きだと感じた瞬間や好きなものと向き合った時間を一人で記録しているような行為そのものが好きで、学生の頃からずっと続けてきました。
そしてファッションは子供の頃からずっと自分の中で憧れの対象でした。
振り返ってみると、布や服に好きなイメージを反復してプリントしたり、刺し子で覆い尽くす行為は、方法は違うのですが私にとってはどちらも同じで、自分にとって憧れているものに対しての不器用で一方的な愛情表現の形のように思います。

zazi 16ss(Photo: Shusaku Yoshikawa)

15歳の時、私は都内の女子校に通う、洋服が好きで、アートが好きな高校生でした。

mini、Zipper、装苑を愛読し、週末は原宿に行って、美術館に1人でブラブラ行くようになったのもこの頃。原美術館やワタリウム美術館が好きでした。
お気に入りの服を見つけて袖を通した時の高揚感や、大きくて鮮やかな絵や彫刻の前に立ちつくした時の震えるような気持ちは、それに勝る感情がなく、友達と学校で遊ぶのも楽しいけど、服屋さんや美術館で一人で感動している時間は自分にとって特別な宝物でした。あぁ、将来私は何になれるかわからないけど、この気持ちは絶対自分を支えてくれるから大切にして生きていこうと当時思ったのを覚えています。

そして私は、どうしても好きなことしかできませんでした。学校の授業は国語と美術以外は大体寝ていたし、わざと寝ていたわけでも寝不足でもなく、興味が持てないと条件反射で寝てしまっていました(今もその性格は直っていません)。そんな性分なので、好きなものは趣味にしようという選択肢は頭の中に毛頭浮かばず、美大でファッションを学ぶことを決めました。
自分の熱量のかたまりみたいな服が作ってみたかった。それが美大に行けばできると思いました。
絵の予備校に通い、浪人し、晴れて美術大学に入学しました。美大への進学は、長い時間をかけて夢を叶えた初めての瞬間だったかもしれない。テキスタイルコースに進み、毎日布をひたすら染めたり、大きな絵を描いたりして、文字どおり夢のような日々でした。

卒業制作『NIKKI』/ 2012 偶然できた愛着のある形を布に貼り付け、赤い糸で刺し子をした、現在のスタイルの原点となった作品。

大学4年の8月に、原宿にあるセレクトショップに作品を置かないかと声をかけてもらいました、2011年のことです。ブランド名がないとなあ、と思い1週間くらい考えて「zazi」という名前をつけました。音がギザギザしてて可愛いし、サインも考えやすそう。綴りは違うけれどラテン語で自由、の語源でもあるらしい。自由。zaziという文字に羽が生えて飛んでいくようなイメージが頭に浮かびました。

卒業してから25歳くらいまではお金がなかったので会社員をしながらブランドをやっていて、毎日死ぬほど寝不足だったし、その頃のことをあんまり覚えていません。会社が終わったらまっすぐ家に帰って、明け方まで刺し子をしていました。体力的にはボロボロだったけど、夢中だったので今思うとすごく楽しかった。その中で印象に残っている思い出は、初めて雑誌に載った時。装苑のニューカマー特集に取り上げてもらった時のことです。発売日がたまたま私の誕生日で、朝起きたら枕元に真っ白な表紙の装苑1月号が置いてあって、寝ている間に母が置いてくれたようでした。あの時のうれしかった気持ちは忘れません。

始めてから8年以上経って、あの頃と変わらず制作を続けています。ブランド名は、zaziからzaziquoになり、私自身も22歳から30歳になって、アウトプットの仕方は変わってきたと思います。でも変わらないのは、実用性だけじゃなくて、感情を大切にしていること。それは、高校生の時に感じた服やアートへの高揚感に起因していて、その喜びを自分が少しでも人に与えられたらうれしいからです。

大学時代からやってきた作品作りがブランドを始めて仕事になっていったので、あの頃と感覚は変わらず、ずっと終わらない制作を続けているような気持ちです。夢を見ているような日々がずっと続いています。

zaziquo 18aw

zaziquo 18aw(Photo: Shusaku Yoshikawa)

zaziquo 17aw

夢を叶えるにはお金も人脈ももちろん必要だけど、一番大切なのは、自分の「これがいいんだ」を世界に表明することだと思っています。

こうなりたいと願い続け、行動すること。好きなもの、色、景色、味、着るもの、周りの人、全てにおいて「私はこれがいいんだ」って思う自分だけの物差しを忘れないこと。そしてそれを選び取り、アップデートし続けていくことが生きることだと思っています。それを繰り返していれば、きっと夢は多少なりとも叶うと思う。周りに流されないで、自分の正義を貫くことも大切です。

これからの夢は、本当に自分の作りたいもの、作るべきものしか作らないこと。そしてこのブランドを続けていくことです。ファッションは形がなくて、時代と共にどんどん変化していくし、ファッションデザイナーはそのこととずっと向き合い続けなくちゃいけないですよね。でも私は刺し子の服を作ることをやめてはいけないんじゃないかなと思っていて。それが私の宿命のようにも思っています。そのことについて自分でもじっくり考えながら、問題提起になるような制作を続けていけたらいいなと思っています。

20代の時間をほとんど費やして積み上げてきた今の仕事をこれからも続けながら、30代は生活することも大切にしたいと思っています。好きな人と暮らしておだやかな時間も過ごしたい。部屋には花を1輪飾って、週末は美術館に行きたい。寝る前に適当に映画を見て、小さなベッドで安心して眠って。猫も1匹居たら、それはもう最高。好きなことを仕事に続けながら、好きな人と暮らして生きていくこと。それが私の今の夢です。

PROFILE

清水えり子
清水えり子

1988年東京生まれ。デザイナー。
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒業。
2011年大学在学中に自身のブランドを始める。
刺し子とプリントを主に使用した技法でオリジナルのテキスタイルを制作。
自身のブランドの他、企業へのデザイン提供、アートワーク提供、テキスタイル監修、
ウィンドウディスプレイ制作など多岐に渡り活動。

INFORMATION

イベント情報
zaziquo 2019 solo show 「cozy place」

2019年4月3日(水)〜7日(日)
会場:東京都 nidi gallery

『 岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』

会期中、ミュージアムショップ NOIR にてzaziquoの商品展開
2019年1月26日(土) 〜4月7日(日)
会場:東京都庭園美術館

zaziquo新作受注会

2019年4月20日(土)、21日(日)
会場:京都府 gallery35

zaziquo pop up shop

2019年4月24日(水)〜30日(火)
会場:東京都 銀座三越 3F ルプレイス

zaziquo pop up shop

2019年5月2日(木)〜12日(日)
会場:大阪府 詳細後日発表

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