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プロによる夢占い/藤原麻里菜

1996年開設のサイト「眠り男の夢占い事典」で診断

2019年3・4月 特集:夢の時間
テキスト・撮影:藤原麻里菜 編集:野村由芽
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毎日、絶対に夢を見る。
あまり仕事もしてないので、暇すぎて1日に8時間以上も寝てしまう。そのため、夢と現実が分からなくなるときも多い。友達に会って「そういえばこのまえの花見にいたよね」と話したら、きょとんとされた。すげえ楽しかったのに。あの、お酒をコンビニに買いにいったら大男が出てきて……ああ、これは夢でした。私はいろいろと大丈夫なのか心配になってくる。

夢の記憶を思い出したときは、少し不思議な感覚になる。飛んでいきそうなビニールシートの端っこをギリギリ掴めたときのような緊張感と精神の高揚。または、変な夢を見てしまう自身の奇怪さへの恐怖と期待が混じったような感覚もある。
自分の中に確実にある、しかし、形のないものが夢によって見えたときは変な嬉しさを感じる。

夢に関する不思議なことはいくつもある。夢と現実がごっちゃになることもそうだが、わたしはたまに予知夢を見る。

一つは、妊娠する夢を見た後は、必ずすごいアイデアを思いつくこと。「歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン」を思いついたときも、この夢を見た直後だった。これは浮き輪を膨らますポンプを靴底につけて、胸に貼り付けた風船を歩くたびに膨らますという天才的なマシーンだ。
夢占いのサイトによると、妊娠する夢は「何かが始まること」や「未知の自分に出会えること」「事態の変化」などを暗示しているらしいので、あながち間違ってはいない。

二つめは、ピコ太郎と一緒にエレベーターに乗って上昇する夢。これが予知することはなんでしょうか。シンキングタイムスタートです。正解は、「これを見た後は、必ずSNSでバズる」でした。
以前、Twitterで自分の作品が10万リツイートされたことがあったのだが、この夢を見た後だった。ピコ太郎×エレベーター。一富士二鷹三茄子に次ぐ縁起のよさを感じられる。

わたしにとって夢とは、信じておきたい神秘的な部分だ。今見えている自分は、なにか大きなものの一部じゃないか。本当はもっとすげえ能力があるんじゃないか。そんな確証のないことの手がかりを夢によって薄っすらとつかんでいる気がする。

夢を即座に記録するために手作りした家具

ただ、毎日夢を見るものの、内容は覚えていられない。生活をしていて夢の記憶が呼び起こされることはあるけれど、たいていのことは忘れている。8時間も夢を見ているのに、なんだかもったいない気もする。
そこでわたしは、夢を即座に記録できる家具を作った。これを使えば、忘れる前に夢を記録することができる。また、寝る前に水をたくさん飲み、明け方に尿意を感じて目覚めるように計算した。「夢 覚える 方法」と検索したところ、SEOの犬みたいなサイトに「眠る前に『絶対に夢を覚えるぞ』と念じると夢を覚えてられる」という知見が掲載されていたので、水を飲み干した後に、「絶対に夢を覚えるぞ」と強く念じた。あと、坂口健太郎が夢に出てきてほしかったので枕の下に写真集を忍ばせた。

自信満々に寝ても、起きたときには夢の記憶がどんどん抜け落ちていくし、坂口健太郎の影は見えなかった。カラカラになった記憶を絞りながら必死にメモをした。

もどかしい感覚を乗り越えてやっと書けたメモを読み解くと、「元カレとよりを戻す」「テレビ番組の小道具を借りパクしてしまい、謝る」といったかなりどうでもいい内容の夢だった。
あれ、わたしってもっと良い夢を見ているはずなのですが。

次の日とその次の日のメモがこれだが、「電車に乗り遅れるゲームが大流行する」「割り勘を間違えてみんなから悪口を言われる」というまたもやどうでもいい夢を見ていた。あれ、わたしの潜在意識はこの程度なのだろうか。もっと奇抜な夢を見て、目覚めた自分をアッと言わせてくれませんか。

いやいや、もしかしたら、この薄い夢こそ、自分の無意識下にあるメッセージを表しているものかもしれない。

夢占いでもしてみるか。といっても、今まで通り検索で知り得る情報だけでは物足りない。なんか、夢占いのプロみたいな人に頼みたい。

今でこそアフィリエイト目的のブログで、夢占いの記事が氾濫しているけれど、昔からある夢占いのサイトがある。それが「眠り男の夢占い事典」だ。1996年に開始されたこのサイトは、管理人の梶原まさゆめさんが夢に出てくるシンボルの解説をしている。久しぶりに開いてみたが、全く変わらないデザインに安心する。
ホームページをポチポチ進めると、梶原さん自身が夢占いの分析をしてくれることを知った。夢占いにおいて、絶大な信頼を置いているホームページの管理人だ。これは、頼むしかないぜ。

一番興味ないものランキング、堂々の第1位は「知らん人の夢の話」ですが、ここから終わりまで、わたしの夢の話が続く地獄になっています。すみません。本人は夢を見た興奮とともにいます。

【ふわふわしたカラフルな場所。(現実では知らない)友人たちとお酒を飲む、
店員から伝票を渡されたので割り勘の計算をする。一人4500円徴収する。しかし、再度計算したら1500円だった。そのことについて友達たちから陰口を言われるようになった】

メモにとった夢の中から一つ選んだ。
割り勘を任せられたけれど、全く違う金額を徴収してしまい嫌われてしまうという地味な夢だ。梶原さんからの回答を抜粋すると、

ふわふわしたカラフルな場所はバーチャルな自身の居場所を象徴しているよう。「ふわふわ」「カラフル」な場所を言いかえると、夢の世界では鏡のように反転し、「固く無機質」「モノトーン」な場所ということになる

本当は、無機質でモノトーンな場所にいるのに、夢の中では反転した世界に写っていることだろうか。

架空の友人たちは現在関わっている不特定多数の人を象徴しているかも。夢に現われる店員や店舗は、実際に仕事で関わる現実的な人や環境をあらわしている

割り勘の計算違いは、見込み違いをあらわしている。陰口をたたかれるのはコミュニケーションの不調和をあらわしているのかもしれない

思い出した。1週間ほど前に、とんでもなく辛い仕事関係の飲み会があったのだ。そこでわたしは割り勘を間違えて、みんなから1000円ずつ多く徴収してしまった。すみませんでした。人間関係や自分自身のポンコツさに苦しくなっていた。まさに無機質でモノトーンな世界で行われた最悪な飲み会だ。
次の日には吹っ切れたことだけれど、まだ頭の中では引きずっていたのかもしれない。なるほど、なるほど。

せっかくなので、いつも見るピコ太郎の夢もリーディングしてもらうことにした。梶原さんの回答がこちら。

ピコ太郎のイメージは、彼が大ブレイクしてから夢を見るようになっているはずなので、憧れや理想として一攫千金的に注目された人物のひな型になっているように思える

彼の派手な衣装のイメージは、夢やタロットの世界でいう「愚者」を象徴する。愚者とは、チャレンジャーの意味を持つカード。また、仮装した人物や奇抜な衣装を着た人物は、モテ運や対人的な運気アップのキーイメージにもなってる

ピコ太郎を深く考えると確かにそうだ。成功者の記号として、わたしはピコ太郎に憧れている。

この夢の中で重要な意味を持つのはエレベーターの上昇。高所に上るエレベーターは、「運気を引き上げてくれる」要素
また同時に、良い意味での緊張感やストレスの上昇という側面もある

なるほど、なるほど。
ピコ太郎やエレベーターというシンボルは、なんとなくその意味を感じてはいたが、深掘りすることで、より理解が深まった。

そして、またまたせっかくなので、一番記憶に残っている怖い夢も診断してもらうことにした。

【夢に出てきた赤羽にある「エイトエフ」という飲み屋が実際にあるんじゃないかと思い、検索して見つけた。エレベーターで8階まであがると、ゴミが散乱している奥にドアがあった。ノックして開けると、中は少しゴシック的な要素があるバーだった。
店員がいきなり「ゲームを始めましょう」と言い出した。
店内が一気に明るくなると、みんな手のひらを気にしている。
自分の手のひらには「ウサギ」と書いてある。
どうやら、手のひらに属性が現れる仕組みらしい。私はウサギだ。ダメだ。このゲームは、1匹紛れているウサギを狩るゲームなのだ。このままじゃ終わりだ。
すると、誰かに話しかけられた。「おまえ、ウサギだろ」つぎの瞬間にはわたしは、その人の喉をナイフで切っていた。騒ぎが起きる。みんなこれに乗じて殺人をし始める。ウサギも負けじと人を殺す。全員が死に、ウサギが「わたしがウサギでした」と言って、目が覚めた】

夢が二重構造になっていて、なんとも不思議で怖かった。びっくりするほど人を殺しまくるし、設定も複雑だ。僭越ながら、この設定でドラマの脚本を書いたら面白いと思うのですがどうでしょうか。
夢を見たのは2017年。今でもハッキリ覚えている。
この内容を梶原さんに送ると、こんな回答が届いた。

漫画の『LIAR GAME(ライアーゲーム)』を連想させる面白い夢ですね。夢を見た時期に何らかの刷り込みがあった可能性があります。最初の映像化は確かフジテレビのドラマでしたね

この夢のキーワード「エイトエフ」、つまり8チャンネルフジテレビかもしれません

そ、そんな……。
いや、でも、『LIAR GAME』はちゃんと見たことがないのだが、予告編や再放送のドラマをちょっとだけ見て、面白そうだなと思った記憶はあるし、なにかと定期的に『LIAR GAME』を思い出させる何かはある。再放送とか、ネット配信とか。
『LIAR GAME』じゃないにしても、なにかしらのドラマや映画の広告が無意識的に頭の中に刷り込まれて夢に現れている可能性もあるかもしれない。消費社会の末路。そして、そんな夢のドラマ化を少しでも考えた自分が恥ずかしい。

ストーリーに重要な意味はない。「検索」「ウサギ」「エイトエフ」「赤羽」といった現実的なイメージの刷り込みがいっぱい入っている

しっかり眠れていないので、記憶の整理ができていない脳内のイメージがそのまま表現されているのかも

確かに夢を見た2017年9月のカレンダーを見返すと、飲み会ばかりでかなり不規則な生活をしていた。

目覚めた時にとても面白い夢だったので、自分でもその後にストーリーを再現しているのではないだろうか。最初の夢の記憶がその後の夢主の主観によって作りかえられていき、いつまでも記憶に残ってしまう

今でも鮮明に思い出せるのは、夢がメッセージ性を持っているからではなく、単に「すげえ夢みちゃったぜ」という自分の興奮によって定期的に思い出しているからなのか。なんだか悔しいぜ。

潜在的な未知の部分に、自分ですら知らない面白い部分があるに違いない。不明瞭だけれど信じたいものがある。それが救いだったりする。

変な夢を見ると、自分が変みたいでちょっと嬉しい。そして、今はまだ見えていない、未知の自分の手がかりを知れたような気になる。けれど、薄々感じていたように未知の自分などおらず、あるのは期待以下の自分だけだ。それでもわたしは毎日夢を見る。空を飛んだり人を殺したり、ピコ太郎とエレベーターに乗ったり。そうか、現実を生きるために、夢があるのかな。

*引用:「眠り男の夢占い」

PROFILE

藤原麻里菜
藤原麻里菜

1993年生まれ。メイカー、文筆家、映像作家。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを展開している。代表作に「インスタ映えを台無しにするマシーン」などがある。YouTubeNextUp2016年入賞。

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『無駄なことを続けるために - ほどほどに暮らせる稼ぎ方』
著者:藤原麻里菜

2018年11月16日(金)
価格:1,296円(税込)
発行:ヨシモトブックス
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