「これからのルール」を考える、ウルフの3冊
ヴァージニア・ウルフは、近年新訳や復刊が相次いでおり、長年ウルフを読んできた私にとっては夢のような状況が続いています。今回、本記事を執筆するにあたり、「これからのルール」という特集に合わせた本を3冊選びました。多様なウルフの〈読み〉が、これからも増えていきますように。
『ある協会』片山亜紀訳(エトセトラブックス)
作家デビュー間もない頃のウルフの、いい意味での若さが感じられる一篇。フェミニズム小説であり、冒険譚でもあります。お話がどこへ向かうのか、まったくわからないのも読みどころ。ウルフ入門にもうってつけの読み切り短篇です。
ある協会 | book | エトセトラブックス / フェミニズムにかかわる様々な本を届ける出版社
『オーランドー』杉山洋子訳(ちくま文庫)
ひとりの人間が400年間を生きる。しかも、途中で男から女に性転換しながら――こんな物語はあとにも先にも読んだことがなかったです。1992年にはティルダ・スウィントン主演で映画化されたり、2019年にはウィーンでオペラ化もされ話題になりました(衣装は川久保玲!)。またオーランドーのモデルとなったヴィタ・サックヴィル=ウェストとウルフとの関係を描いた伝記映画『Vita & Virginia』も2019年にイギリスで公開。日本公開が待たれます。いま、再評価されつつある、ジェンダーの概念を問い直す作品です。2020年2月に『SWITCH』に掲載された、柴田元幸氏による抄訳も注目です!
筑摩書房 オーランドー / ヴァージニア・ウルフ 著, 杉山 洋子 著
『三ギニー 戦争を阻止するために』片山亜紀訳(平凡社ライブラリー)
「戦争を阻止するにはどうしたらよいか」という、男性から寄せられた手紙への返事という体裁の本作は、ウルフによる反戦論です。第一次世界大戦後、スペイン内戦やファシズムといったふたたびの戦争へと世界が傾いていく中で、ウルフは女性に対する差別が戦争につながっていることを論じ、女性の力でそれをやめさせるにはどうすべきかを思考しています。骨太な一冊です。
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