She isでは、特集テーマをもとにキュレーションしたオリジナルギフトを毎月Membersの方々にお贈りしていきます。さまざまなアイテムが詰まったギフトボックスのなかには、Girlfriendsの方々と一緒に制作したShe isオリジナルプロダクトも。私たちのアイデアを形にしてくれる頼もしいパートナー、衣服生産のプラットフォーム「sitateru」さんと共に、何度も企画会議を重ねながらつくっています。
9・10月の特集テーマ「未来からきた女性」のギフトでは、グラフィックデザイナー・伊波英里さんと一緒につくった、思わず足どりがかろやかになりそうなShe isオリジナルソックス「あの人の靴下」をお届け。今回のソックスに込められた想いについて、伊波さんにお話を伺いました。
9・10月のギフト「未来からきた女性」のページはこちら(お申込みは10/31まで)
国やことばを超えて、見た人に「違和感」を残したい
NEWoManやPARCO、伊勢丹新宿店といったファッション商業施設の広告から、映像、空間演出、グッズまで、多岐に渡る作品で街にポップな驚きを生み出している伊波英里さん。グラフィックから始まって、クリエイションの媒体はどんどん広がっているけれど、伊波さんの作品にはいつも一貫した空気が漂っていて、見ると胸がきゅんとざわめきます。
伊波:デザインをするとき、いつも「違和感を残したい」というのは意識していて。作品でも広告でも、いかに誰かの気を惹くとか、「今の何だったんだろう」と思わせるかを考えています。国もことばも関係なく、感覚的に驚かせたいんです。
伊勢丹新宿店「グローバル・グリーン キャンペーン 2017」のウインドウディスプレイのグラフィックと映像(Creative director:pranks、Display designer:mado)
幅広い作品を手がけてきた伊波さんでも初めてだったという、今回のソックスづくり。シルクスクリーンを使ったTシャツづくりなどは経験があったけど、糸を織ってつくるソックスにはまた違う難しさと楽しさに出会えたそう。
伊波:ソックスは好きでいろいろ持っているんですが、普段履いていてもわからなかった素材の織りや構造に気づくことができたのが面白かったです。印刷物など平面のデザインをしているときは、画面でつくっていたものがそのまま出てくるけれど、ソックスは履いてみたら足の甲の部分の柄が伸びて見え方が変わったり、デザインしているときには思いもしなかったことがたくさん出てきて。表現の「媒体」としてすごく面白いなと思いましたね。
ソックスもひとつのキャンバス
ソックスも「媒体」と捉える伊波さん。だからこそ、ファッションデザイナーやテキスタイルデザイナーとはまったく違った視点を持ったデザインになったのかもしれません。パターン柄でもワンポイントでもなく、足先まで全面にグラフィックが入った、これまでにないソックスが完成しました。
伊波:平置きしてもかわいくしたいと思っていて、キャンバスみたいに考えていましたね。できあがったソックスを平置きしたり履いたりして写真を撮ってみたのですが、「狙いどおりにできた!」って思いました。靴によって見え方が異なるところも面白くて、ハイカットのシューズを履けば、靴から手が出ているように見えたり(笑)。織りがとても繊細で、白地に柄が少し浮き上がっているエンボス感がポイント。ぜひ一回触ってみてほしいですね。
11色という多色ながら統一感のある色づかいも、伊波さんならでは。デザイン画のときに選んだPANTONE(世界共通のカラーチャート)の色を元に、窓際の太陽光で糸見本を見ながら、「これ、これ」と糸の色を次々と選んでいった伊波さん。その姿は、まるで占い師のように迷いがありませんでした。
伊波:こんなにたくさんの色があるのに迷いはなかったです。すっごく楽しかったですね、糸見本なんて普段見ないので。色使いに関しては、差し色にShe isの「未来からきた女性」のテーマカラーであるエメラルドグリーンを使いながら、感覚的に「これとこれの組み合わせは気持ちがいいな」という色を選びました。女性の肌に合うような配色にはこだわっています。
自分も誰かにとっての「未来からきた女性」だったりするかもしれない
She isの9・10月の特集「未来からきた女性」をテーマにデザインを考えていくうちに辿り着いたコンセプトは「軽やかな足取りで進んでいく女性」。「写し鏡」や「未来への目線」「祝福する花」などのモチーフが散りばめられ、憧れだけど遠すぎない、ちょっと先を見ているような女性をイメージしたそうです。そんな「あの人」が履いている靴下ということで、「あの人の靴下」という名前がつけられました。
伊波:知り合いにも憧れだけど遠すぎない存在の女性がいますね。その方は、子育てをしながらもヘアスタイリストとしてパリコレに行ったり、自分のやりたいことを変えずに母親業もこなして、すごく生き生きとしていて綺麗なんです。何も諦めていないのがすごくかっこよくて。そういう人がいると自分の中の指針にもなるし、お守りのように「こういう人が近くにいるなら自分もできるはず」って自分のアベレージを高めてくれる。高みを目指して進んでいたら、自分も誰かにとっての「未来からきた女性」にいつのまにかなっているのかもしれないですね。
そんな伊波さんも、昨年から新しい挑戦を始めました。先日開催された『THE TOKYO ART BOOK FAIR 2017』で人気を博していた「ジンパーラーいなみ」。様々なアーティストやミュージシャンなどに声をかけて、それぞれに自由にZINEをつくってもらうという企画です。
「ジンパーラーいなみ 」はメディアアーティストやファッションデザイナー、ミュージシャンがzineを作ったらどんな作品ができるのか、イラストレーターやデザイナーが制約なく自由にzineを作ったらどんな作品になるのか、アーティストがモノとしてどんな作品を作るのかが見たくて始めました。 pic.twitter.com/uVu4I5kEVT
— 伊波英里 (@eriinami) 2017年10月7日
『THE TOKYO ART BOOK FAIR』に出店した「ジンパーラーいなみ」
伊波:ZINEをつくったことがない人がどんなものをつくるのか興味があって、メディアアーティストやミュージシャンなど、いろんな人に声をかけてみました。制約がある中で仕事をしている人は何もないところで何をつくるのか、アーティストの人は「売る」っていう前提があると何をつくるのか、見てみたくて。想像を超えてくるものばかりで楽しかったですね。
基本的に自分で何でもやりたい気質なんですが、どうしても経験がないとできない分野はあって、そこは餅は餅屋に任せたほうがさらにクオリティが高まるし、思いもよらない楽しさがあることをここ数年で学んできました。そういう意味では、今回ソックスをつくってみたのもそうですよね。She isさんがお話をくださって、sitateruさんが形にしてくれて。いろんな人と関わってつくるこのスタイルは、これからの自分の仕事の見本となりそうです。
履いていると1cm浮いている気分になれるソックス
新しいことに挑戦したり、自分にかけてしまっていた制約を外してみたり、それを人にも促してみたり……。伊波さんはまさに「軽やかな足取りで進んでいく女性」そのもののように映ります。彼女のように半歩先を行く「未来からきた女性」のやわらかな足跡を辿って、今日も前に進みたいと思うけれど、現実はそんなに甘くない。気分が落ち込む日もあれば、部屋に篭りたくなる日もあるかもしれない。そんな時にこのソックスがきっと、一枚の勇気と元気を与えてくれます。
伊波:私、普段から嬉しいときに「1cm浮いてる」って表現を使うんですけど、これは「履くと1cm浮いてしまう」ようなソックスであってほしいですね。あとは、クローゼットの引き出しを開けた時にも、ちょっと気持ちを明るくできたらいいな。女の人のバイオリズムなどで気分が下がっている時に、ちょっとでもいいから元気を出してほしいし、履いているのを見た人も元気が出たら嬉しいなと思っています。