自分とはちがう生き物を当たり前に受け止める。『いやいやえん』
アヤさんが5冊目にあげたのは『ぐりとぐら』で知られる、中川李枝子さんと大村百合子さん姉妹の7編からなる童話集『いやいやえん』(1962年)。
「ちゅーりっぷ保育園を舞台に、主人公しげるの日常が描かれているのですが、とつぜんこぐまが『入園したい』とやってきたり、鬼に遭遇したりといった出来事が、とにかく淡々と描かれています。
とんでもないものに遭遇しました、とんでもないけど友達になりました、なんて話にならないのは、しげるをはじめとする子どもたちが、自分とはちがう生き物を当たり前に受け止めているからだと思うんです。
こういう物語にどうしておどろいてしまうかというと、こぐまや鬼ほどの個性が、現実には認められていない、ゆるされていないからですよね。だけど、ほんとはこころひとつで実現できるんじゃないかと読み返すたびに突きつけられます。ちっとも良い子ではないしげるから。
個人的には千葉雄大くんにあこがれすぎて、ああなるにはどうしたらいいですか、と相談しに行った結果、『2000万かかるけど似ません』なんて言われたりする20代を過ごしてきたので(笑)、今回ご紹介した物語のすべてに自分を見つけることができます。
けれど自分は自分自身にしかなれないし、なれないだけの価値がきっとあるんですよね。いまはまだ、それを探っている状態ですが、トーベ・ヤンソンのまなざしや、バスチアンの冒険、しげるの日常からも、背中を押されているような気持ちになります。
もし引っかかるところがあったら、みなさんもぜひ読んでみてほしいです」とアヤさん。とてもリラックスした様子です。
「人と違う」ということは、そのときは辛くても、向き合い方次第でのちのち意味を持っていくはず。アヤさんのように自分は自分でしかいられないことを受け入れることが、コンプレックスとの付き合い方のひとつかもしれません。そんなことに気がつけた一夜だったのでした。
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