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K-POP、ジャニーズ、宝塚。
私たちのオタクサミットは現実逃避じゃない

オタ活していた旧友たちと始めた「推し」のプレゼン大会

2018年2月 特集:超好き -Ultra Love-
テキスト:510373 編集:野村由芽
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K-POP、ジャニーズ、宝塚。いつのまにか始めていた、「オタクサミット」。

こんなはずじゃなかった。どうしてこんなことになってしまったんだろう。

K-POPアイドルにハマってからというもの、何度となく自問している。始めは「あくまで音楽が好きなんで!」とか言い訳してたけど、そうやって自分を騙しているつもりになっている間に気づけば片足を引っ掛けていたはずの泥沼に頭まで浸かっていた。そしてその沼は深くて広く、今のところ出口が見えない。

なんで好きなのかと問われれば、「曲がこんなにかっこよくてパフォーマンスもかっこよくて〜」とかいくらでもそれっぽいことは言えるけど、どんな言葉も「好きの理由」を的確に言い表すことなどできない。っていうか理屈じゃないんや。ある時、ふっと心の隙間に忍び込んできて、気づいたらめっちゃ検索してて、めっちゃ動画見てて、チケットとってて、生で見たら最後いつの間にかファンクラブに入会してた、みたいな感じでしょうか。

3年ほど前、海外に移住する友人の送別会で久しぶりに中高の同級生で集まった。高校卒業以来10年ぶりくらいに会う人もいて、なにげなく近況報告しているうちに、同じテーブルについた私と友人2人が全員なんらかの沼に落ちていることが判明した。ジャニオタ、ヅカオタ、そしてKポオタの自分。それぞれどんな人が好きで、どんなオタ活を繰り広げているかを語り合い、自然発生的に推しのプレゼン大会をやりたいなんて話になり、同じテーブルにいたなんのオタクでもないけどやたらと興味を持ってくれるもう1人の友人を交えてまた集まることになった。会場はその「なんのオタクでもない友人」の家。今では彼女のことは「コミッショナー」と呼んでいる。この集まりは回を重ね、いつからか通称「オタクサミット」になった。

オタクサミットではジャニオタ、ヅカオタ、Kポオタがそれぞれ好きなテーマでプレゼンをする。テーマや形式は自由。パワポやレジュメを用意しプレゼンをしたのち、プレゼンで学んだことを踏まえてライブ映像や公演映像を鑑賞するというのがいつもの流れだ。これをだいたい昼から夜まで半日かけてやる。アルコール片手だけど中身はいたって真剣で、プレゼンをすれば自然と質疑応答タイムがスタートし、議論が発生する。年末にはその年の各自のオタ活を振り返り、健闘をたたえ合い、来年のオタ活の抱負を表明したり。そういう楽しい会合です。

オタクサミット開催風景

たとえばこれは2015年最後のサミットでヅカオタNが発表した「2015年宝塚活動振り返り〜実りある2016年に向けて〜」というプレゼン資料の一部。

こういうのを互いに発表して、「今年もお疲れっした!」「来年も楽しくオタ活しよう!」みたいなことを言い合って酒を飲み、宝塚のショーを見たりします。

「心に情熱、他人に好奇心、担当・贔屓・推しに感謝」

何回目かの開催で決まったオタクサミットの理念がある。それは「心に情熱、他人に好奇心、担当・贔屓・推しに感謝」。

「心に情熱」。これは基本というか、推しへの溢れ出る情熱がファン活動の原動力です。

「担当・贔屓・推しに感謝」。そりゃもう感謝しかない。

そして「他人に好奇心」。オタクサミットを支えるのはここだ。K-POPについてだったら自分が好きなグループでなくてもある程度のことは知っていたりするけど、他のジャンルについて知る機会はあまりない。ジャニーズも宝塚もなんとなく目に入って素敵だなーと思うことはあれど、ジャンルそのものやグループ、個々のメンバーの魅力や背景など文脈を知った上で見ると面白さが全然違う。そしてそれを本当に好きな人が語る言葉はどれも余計に胸に響くわけです。

これはジャニオタSによるSexy Zoneのプレゼン。

このあと各メンバーの魅力やこれまでのグループの歴史もプレゼンしてもらい、その上でコンサートのBlu-rayをみんなで見た。そして私たち全員が「Sexy Zone最高じゃん、最高のアイドルじゃん……!」となり、ヅカオタNは最終的にSexy ZoneのBlu-rayを買ったそうです。春にはみんなでSexy Zoneのライブを見に行くことにもなっている。ジャニーズのコンサートに行く日が来るなんて思ったこともなかったけど、めちゃくちゃ楽しみにしている自分がいる。

宝塚も同じことで、この会合を始めてから人生で初めて宝塚の公演を観に行き、先日も2度目の観劇をした。先日の公演は、ヅカオタNの贔屓である望海風斗さんがトップスターになられた公演で、それまで2番手としてステージに立っている公演を映像でたくさん見せてもらっていたので、トップスターとして一番大きな羽を背負う姿を生で見て素直に感動した。この感動はその方がトップスターになったという感動と、友人の推しが遂にトップスターになって本当によかったね……という感動だ。

友人の「好き」って気持ちが、私たちの世界を広げてくれる。そんなポジティブな連鎖。

これはコミッショナーによる観劇後のプレゼンの様子ですが、つまりそういうことです。他ジャンルのファンである友人の「好き」って気持ちが、もともとそのジャンルは門外漢であったはずの私たちの世界を広げてくれるというポジティブな連鎖。

ヤフーニュースで望海さんがトップスターになるというのを見た時は嬉しかったし、『ゴチ』(『ぐるぐるナインティナイン』の『グルメチキンレース ゴチになります!』)の新メンバーがケンティ(Sexy Zoneの中島健人氏)だと知った時もそう。おかげで喜んだり楽しんだりできる対象が増えた。

また発表する側としては単純に自分の好きなものをほかの人が楽しんでくれるのは嬉しい。K-POPと宝塚とジャニーズの間に意外な共通点が見つかったりする発見もある。ヅカオタにはこのメンバーが人気で、ジャニオタにはこのメンバーが人気なんだなってことがわかったり。それにエンタメの世界の虜になり、その世界で頑張る人を応援しているという意味では全員同じ立場なので、ファンならではの葛藤や喜びも分かり合える部分は多い。

先日のサミットでは「その人の推しについて知ることは、その人の家族や恋人について知るよりもその人について知ることになるかもしれない」という発言が飛び出した。私たちは中学時代から互いを知っているけど、この集まりでは恋話や仕事の話は一切しない。別にそういうルールがあるわけでもないが、好きなものについて話すだけでも時間が足りないくらいなのだ。

軽い気持ちで馬鹿にされても10倍にして言い返す用意が我々にはある。

誰が言ったか知らないがジャニーズ、宝塚、K-POPはアラサーの三大疾病らしい。ジャニオタ、ヅカオタ、Kポオタに対する世間の視線なら言われなくてもわかってる。でも軽い気持ちで馬鹿にされても10倍にして言い返す用意が我々にはある。それにファン活動が現実逃避だとは全く思っていない(現実を忘れさせてくれる側面はあれど)。アイドルを見なくたって生きていける。でも何か好きでいることは楽しいし、それをみんなで分かち合うのもすごく楽しい。それだけだ。人の好きって気持ちが自分の世界を広げてくれるってものすごくポジティブな作用だと思いませんか。それに何歳になったって自分の世界が広がる体験は貴重であり、楽しいものである。これからも私たちは「心に情熱、他人に好奇心、担当・贔屓・推しに感謝」の精神を胸に抱き、東京の片隅で誰に見せるわけでもないプレゼン大会を繰り広げるだろう。

PROFILE

510373

一介のKポペン。思いがけずKポ沼に落ちてしまった女たちのzine「NoJam zine」を発行してます。かつてはWeekend Never Diesというzineを作ったり、kayano_sotoというパーティーでDJしたりしてました。ハマるとzine作りがち。
https://twitter.com/nojam_zine

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『NoJam Zine 002』

価格:700円(税込)
https://nojamzine.stores.jp/items/5a160914f22a5b297d001129

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