部屋にはリアルな生命力が潜んでいる。『TOKYO STYLE』
犬山さんが2冊目に選んだのは、編集者、写真家、ジャーナリストでもある都築響一さんの『TOKYO STYLE』(2003年)です。
六畳一間に所狭しと本が積み上げられた部屋に住む青年や、趣味のロリータファッションで埋め尽くされた部屋に住む女性など……。インテリア雑誌に掲載されるようなオシャレな部屋ではなく、生活感のある部屋を撮影した写真集です。
「本やレコードがぎっしりとつまった棚が写った写真を見ると、その人の人柄が想像できるんですよね。本や映画、料理、ファッション、誰しもが絶対にひとつは好きなものを持っていて、それが人生の醍醐味だと思うんです。『TOKYO STYLE』に載っている部屋からはそういう生命力を感じて。
Instagramのようなフェイクも現実逃避として必要な場所だと思うけれど、私は他人のガチの私生活がおもしろいと思いました。リモコンの置き場所とか、使っている便利棒だとか細かいところにも人柄が表れて、人の生活を覗き見すると自分の生活も見えてくると思いました」。
野性的に、本能的に、欲望に正直に生きたい。ムツゴロウさんの本
「人生のベースにあるのはムツゴロウさんの言葉」というほど、ムツゴロウさんこと畑正憲さんの大ファンを公言する青柳文子さん。『われら動物みな兄弟』(1972年)『ムツゴロウの動物巷談』(1973年)『ムツゴロウのゆうびん箱』(1979年)の3冊を持ってきてくださいました。
以前、ムツゴロウさんの自然と共存した野性的な生活に憧れて、1年間北海道に移住していたという青柳さん。「私にとって人間ではなくて、動物がロールモデル。人間は日々を過ごしながら、いろんなしがらみが多くなっていくけど、なるべくしがらみは取っ払って動物のように生きるのが大事だと思っています。
それはムツゴロウさんの本から学びました。とくに、動物の思春期の過ごし方は人間にも当てはまり、素晴らしい学びがあるので、いろんな人に取り入れてもらいたいです」。ムツゴロウさんの本は絶版も多く、古本屋さんで見つけると必ず買うそうです。
しがらみや既存のルールに縛られず、自分らしい「生活をつくる」うえで、ふたりが大事にしていることを最後に訊きました。
「野性的に、本能的に、欲望に正直に生きること。結婚生活では思っていることを全力でぶつけていますし、傍から見るとわがままに見えることもあるかもしれないです。でもそれは、本音をぶつけあって生活をつくっていきたいという私の思いがあるから。旦那さんはあまり本音を話さない人なので、工夫して本音を引き出すようにがんばっています。そうして日増しに、仲良くなっていると思いますね」と青柳さん。
犬山さんは「性格上、すべてに丁寧に気を遣うことは無理なので、手を抜けるところは抜くようにしています。人は思った以上に簡単に鬱になる。心や身体のケアを軽視せずに、辛くなる前に人に頼ったりお金を使ったりしていいと思います。私もいまはどうしても子どもに時間が割かれるので、赤字でもいいから子どもが幼いうちは楽できるところは楽しようと。それこそ青柳ちゃんのように欲望に正直に生きることは大事だと思います」。
多くの人が無意識に日々を過ごしているかもしれませんが、生活は確かに自分でつくりだしているもの。自分の欲望に正直になって、ひとつひとつの行動を見つめ直すと、あらたな毎日が見えてくるかもしれません。
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