環境がガラリと変わったふたりは、どう生活をつくる?
洗濯をして、部屋の空気を入れ替えて、ごはんを用意して、ときどき考え事をして……。慌ただしく時間に追われながらも、なにげない毎日の中で私たちは生活をつくっています。あらためて自分の生活を見つめ直す機会として、She isでは5月に「生活をつくる」という特集を実施。連動企画として、毎月の特集テーマから連想される本をゲストに選んでいただくイベント「She is BOOK TALK」を開催しました。
ゲストは、モデルの青柳文子さんと、ミュージシャンである夫・劔樹人さんと今の時代に合った結婚生活をつくっていく様子も魅力的な、エッセイストの犬山紙子さんです。昨年お子さんが産まれたばかりで、生活環境がガラリと変わったおふたり。「生活をつくる」をテーマに、選書していただきました。
ささくれた心に「クスッ」と余裕をくれる『おほまんが』
犬山さんが紹介する1冊目は、おほしんたろうさんのマンガ『おほまんが』(2015年)です。「日本で一番おもしろい読者投稿ページだと私が思っている『ファミ通』で、キラリと光る読者投稿をしていたのがおほしんたろうさん」と、犬山さんも目をつけていた作家さん。ピン芸人として福岡を中心に活動、Twitterに投稿していた大喜利1コママンガが話題となり書籍化されました。「シュールですこし毒気があり、クスっと笑ってしまうマンガです」
結婚して4年目、昨年の1月にお子さんが産まれた犬山さん。「子どもができてからバタバタの毎日。子どもが熱を出しただけで『死ぬかも』と慌てふためいたり、アレルギーを気に病んだり。夫婦という関係は、恋人同士だった頃に比べると実生活の問題に直面するので、シリアスになる場面が増えたなと思います。
私の場合は、仕事、子育てと、やらなきゃいけないことが押し寄せてくると、心の余裕が0になっちゃうんです。気づいたら、夫にものすごく早口でキツイことを言っている時があって、このままいくと離婚の危機? と(笑)。夫のためにも、意識的に私が休んで心の余裕をつくらないと、生活は続かない。だから、そんな時でもクスッと笑うことは、生活していくうえで大事なこと。このマンガはそんな時間をつくってくれる大切な1冊です」
それからは週に1日は休みをとり、仕事や休みの予定は必ずスケジュール帳に書くことにしている犬山さん。趣味のマンガやゲーム(現在は特に、ボードゲームにハマり中)に費やす時間も用意するように意識しているそうです。「心が消費されないようにすることも、生活するうえで大事ですよね。そのために自分の趣味をあきらめません」。おすすめのボードゲームについて話している犬山さんは、とても生き生きとしていました!
地味なことの積み重ねの毎日に共感ばかり。『今日も妻のくつ下は、片方ない。』
「全ページ、全コマ共感する」と青柳さんが紹介する2冊目は、犬山紙子さんの夫である劔樹人さんの自伝的マンガ『今日も妻のくつ下は、片方ない。』(2017年)です。
バンド・神聖かまってちゃんの元マネージャーで、現在は、あらかじめ決められた恋人たちへなどでベースを弾く劔樹人さん。「お金は気にせず好きなことをしていい、代わりに家事をしてほしい」という約束のもと2014年に犬山さんと結婚、主夫をしながら音楽活動をする日々を描いています。
犬山さんと同じく昨年お子さんを出産、大忙しの日々を過ごしている青柳さんは「この本に救われた」と話します。「どのページも地味で些細な家事の悩みばかり描かれているんですけど切実で(笑)。ものすごく共感して、同じことに悩んでいる人がいるんだと励まされました」
青柳さんが好きなシーンは、マンションのゴミ捨て場に並ぶポリバケツを前に、いかに効率よく分別するか劔さんが格闘しているシーン。
「私も毎日同じようなことをしていて(笑)。生活って地味で、毎日同じことのくり返し。でも、前に友人の平野紗季子が言っていたことでもあるのですが、これまで『生活(仮)』だったのが、結婚して子どもが産まれてやっと『(仮)』がとれて『生活』が本番スタートした感じ。地味な毎日を積み重ねながら一から生活をつくっていると実感します」
夫に家事の大変さをわかってもらうために、配偶者に読んでもらうのもおすすめとのことです。
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