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フランス、フィンランド、オーストリア。海外から学ぶ生活のヒント

フランス、フィンランド、オーストリア。海外から学ぶ生活のヒント

mito、mino、遠藤麻衣がヨーロッパでつくる自分の生活

2018年5月 特集:生活をつくる
編集:松本雛、竹中万季
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コンパクトな街に文化施設が密集。古いものと新しいものが循環するウィーンの暮らし

テキスト・写真:遠藤麻衣

① 住んでいる場所ときっかけについて

オーストリアのウィーンに、大学の交換留学で2月末から半年間の予定で暮らしています。デンマーク出身の美大生と、彼女のボーイフレンドのオーストリア人と3人でアパートをシェアしています。

ウィーンの街は東京と比べてコンパクトで、文化施設が密集しています。家から10分も歩かないうちに多くの美術家やギャラリーなどが集まるミュージアムクォーターや美術史美術館があり、さらに10分歩けば、オペラ座やアルベルティーナ美術館などなど、徒歩圏内で色々とまわれます。アーティストが自主運営するオルタナティブスペースやシェアスタジオも多いですが、こちらはより安価な市街地周辺に点在していて、そういった状況は東京と似ている気がします。

前に住んでいた人が手作りで備え付けたロフト。寝室にしています

② 衣服について

「humana」「carla」といった地元の古着屋さん、毎週やっているナッシュマルクトの蚤の市、近所のマリアヒルファー通りに数多ある、Monki、Esprit、COS、ZARAといったファストファッション店をよく見て回ります。東京にいると今何が流行っているか、街ゆく人の服装で感じることがありますが、ウィーンではそういうことはほとんどありません。

また、そこかしこでフリーマーケットが定期的に開催されていて、人々は道路にレジャーシートを広げて不用品を売ります。服に限らず、暮らしに必要なものをセカンドハンドで揃えることが多く、古いものも新しいものも循環している感じがします。

セレクトされたヴィンテージを売るお店もあれば、捨てる寸前のガラクタをダンボールいっぱいに詰め込んでいるお店もあってバラエティ豊か

③ 食について

暖かくなるとカフェテラスなど外で食べる人が多くなります。ジェラート屋さんが多くて、「Gelateria La Romana」というイタリアからきたお店のものをよく食べ歩きしています。とはいえ外食は高いので、基本的には家で作って食べます。日本の外食は本当に安いです。

スーパーは、ビオ(オーガニック)やオーストリア産が充実していて、野菜やフルーツ、小麦、乳製品の種類が豊富です。日本では見たことのない食材がたくさんあるので、シェアメイトに教えてもらって食べています。シェアメイトの故郷デンマークでは、朝はよくイチゴを牛乳に入れ、生クリームとはちみつをかけて食べるそうで、イチゴを潰して牛乳をピンクにしながら食べるというのを真似したところ、綺麗だし美味でした! サラダにもイチゴ、皮ごとレモンの薄切り、りんごなどのフルーツを入れて食べるのが一般的です。

ビーガン、ベジタリアン、あるいは宗教上の理由で食べられる食材が人それぞれなので、友達と一緒に食べる時はあらかじめ食べられない食材を聞いて、肉入り/なしなど何パターンか作って食べます。また、食洗機を使っている家が多いそうで、住んでいる家にも据え置き型のものがあります。全自動食洗機がこんなに便利とは知りませんでした。

イーストが配合された小麦粉が売っているので、パン作りが簡単

④ 住まい・暮らしについて

人々の気候への対応が日本よりも大ぶりです。冬は、全員冬眠したかのように街全体がひっそり息を潜めて、春になりカフェが一斉にテラスを広げ始めると、人が目に見えて陽気になります。今時は夜20時をすぎても外が明るく、遅くまで外が賑わっています。夏になると今度は避暑のためにバケーションに出かけるのでまた街が静かになるそうです。

家賃は東京に比べると安いと思います。住んでいるのはウィーン市街地の辺りですが、光熱費・通信費込みで5万円以下というのは、毎日がサバイバルな身にとってはありがたい価格です。周りのアーティストや学生は、移動型の生活をしている人が多いです。0歳が一番静かでいいのよと、生まれたばかりの子供を連れて国外のアーティストインレジデンスに出かけたり、飛行機が家だと言うアーティストがいたり。さらに不在中は別の友達が管理を兼ねて住んだり、その間には別のアーティストがかわるがわる滞在したりなど、友人同士で補い合って生活しています。ウィーンは、家賃が安いだけでなく、敷金がないので引越しも軽やかです。友達の一人は、より安く良い環境を求めて1年のうちに市内で3回引越しを繰り返していました。

Hisa Enomotoのアトリエにて。ここはWUKという大きな工場跡地を利用した建物で、様々なアーティストが出入りする

⑤ 日本の生活との違い

エッチなことに関する話題が日本よりおおらかに出てくるように感じます。例えば、セックストイショップはZARAやH&Mなどと並ぶ表通りにあって、看板に「SEXY」と書かれています。先日家に遊びに来たシェアメイトの友達が、さっき買ってきたとセルフプレジャーアイテムを見せてくれました。

でも、グラビアなどエッチを強調した体のイメージは表ではほとんど見かけません。ヌードや人間の体に対してはとてもカラッとしていて、通っているアカデミーでは、毎日ヌードデッサンの授業があり、学生もバイトとしてモデルができます。人間として持っている生身という資源を、美術のため自活のために生かそうという雰囲気を感じます。

日々の生活を少しだけ豊かに

フランス、フィンランド、オーストリア。3か国から発信された3人の生活は決してきらびやかなものではないかもしれません。しかし、暮らしの中のさまざまな場所にささやかな幸せを見出したり、日々を彩るための工夫が施されたりしています。季節の移り変わりに敏感になることや、身の回りの自然を愛すること、周りに惑わされずお気に入りのものを長く大切にすること。くつろぐ時間を大切にしたり、まわりの友人同士で補い合って生活をしてみること。そうしたアイデアを取り入れてみることで、わたしたちの生活は少しだけ豊かになっていくのではないでしょうか。

PROFILE

mito
mito

フランスのジュラ地方で遠い景色の写真を撮っています。
おなかが弱い。
今の仕事は主にデザイン。

mino
mino

国際基督教大学にて仏語と哲学、お茶の水女子大学大学院・パリ第7大学にてジェンダー開発論・フェミニズム理論を学ぶ。フィンランド系企業での仕事を経て、2014年に移住。現在はシェフ、ライターをしながらフィンランドメディアにて出演・登壇。

遠藤麻衣
遠藤麻衣

俳優、美術家。1984年8月5日、兵庫県生まれ。「日本のフェミニスト」というイメージを用いた作品制作に近年取り組んでいる。自分の身体を用いて演じるメディアは演劇、レクチャーパフォーマンス、ミュージックビデオ、絵本など。自身の結婚をモチーフに、現実とフィクションを織り交ぜた結婚式作品「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」(2017)では、婚姻契約という形式をとり、婚姻制度を遊びに転化することを試みた。現在、ウィーン美術アカデミーに留学中(~8.2018)。

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