She isでは、特集テーマをもとにGirlfriendsに選曲してもらったプレイリストを毎月Spotifyで配信中。5月の特集テーマ「生活をつくる」では、今年お子さんが生まれたばかりのシンガーソングライター、YeYeさんがセレクト。
あたかかくどこか暮らしの香りがするYeYeさんの音楽は、さまざまなCMでも起用され、私たちの生活に馴染んでいます。今回は、そんな彼女自身が生活の中で聴いてきた音楽を、エピソードとともに切り取ってもらいました。子どもが生まれたばかりの自分にとって感慨深いと話すFeistの“Mushaboom”や、海外ドラマが生活の癒やしだった時期があるという彼女がドラマで知ったお気に入りの曲など、生活のあらゆるシーンを彩る10曲をどうぞ。
01:Rex Orange Country, Benny Sings “Loving is Easy”
大阪・堀江にあるFLAKE RECORDSのダワさんのプレイリストで発見したRex Orange Country。この曲を聴いてだいすきになり、彼の音源を探してみるとフィジカルリリースはなしで配信のみ。CDがないことに最初はうずうずしたけど、彼の活動スタイルを見て作り手としてはハッとさせられました。思い立ったらシンプルにすぐ配信って、そういえば自分も最初はそうだったなあとフレッシュな気持ちになった。曲のアレンジも弾き語りのシンプルなものから多彩なアレンジまであって、きっと彼は呼吸をするように音楽を作っていて、生活よりも音楽が先にある人。音楽が生活をつくっているんだろうなあ。
02:Feist “Mushaboom”
ファイスト、だいすきなんです。その中でもこの曲は最近お子が生まれた自分にとってはとても感慨深い歌詞で、歌詞に出てくる主人公の人生の現在と未来を対比したような話になっていて。子どもにコートを着せるのを手伝ったり、庭にお花を植えてみたりするけど、おっとまだ子ども生まれてなかったわ、みたいな歌詞なんですけども(どうにかみなさま実際に英語の歌詞を読んで、それぞれご想像ください)。なんともない日々を淡々と描きながらも、なぜかあったかい気持ちがこの歌詞からあふれ出ています。
03:Erlend Øye “Estate”
1950年代から活躍していたイタリア人歌手、ブルーノ・マルティーノの代表曲“Estate”を、2012年にイタリアに移住したノルウェーのシンガーソングライターであるアーランド・オイエが歌ったバージョン。どこかのだれかが歌の中に生活を閉じ込め、その歌をだれかが歌い、だれかが聴いて、とても時間が経って、その歌い手もリスナーもこの世からいなくなってしまっても、その歌がパスされていく限り、その歌の中で存在するだれかの生活は続き、時には湾曲して、捉え方も変わったりして、常に進化してアップデートしていくって考えたら、歌い継がれていく曲って、なんか最強ですよね。
04:José González “Every Age”
2年前、リトアニアでホセ・ゴンザレスのライブを観るという稀有な機会がありまして、そこでわしはとてつもない衝撃を受けました。大きなホールに老若男女、平日の夜なのにチケットはソールドアウト。誤解を恐れず言うならば、決して派手ではない渋い演奏ではじまり、じわじわ盛り上がっていく会場。日本じゃ決して万人受けするとは思えない彼の音楽に、最後はみんなが総立ち、クラップクラップ! 寒い寒い2月、リトアニアにあるとある町の会場の温度は熱気に包まれ、確実に5度は上がっていました。音楽によって人々の生活に“彩りを与える”という現象をはっきりこの耳と目で経験した貴重な時間だった。
05:Lia Ices “Love is Won”
ジャド・アパトーがプロデュースし、レナ・ダナムが製作・メインキャストをつとめる『GIRLS』という海外ドラマがだいすきなんですが、そこで最後に流れてくる曲が毎度毎度最高なんです。リア・アイシスを知ったのもこのドラマのエンディング曲のひとつだったからでした。最近はまとめて見る機会も減りましたが、一時期は自分の生活をつくる上で海外ドラマは欠かせない存在。お酒もたばこもしないので、海外ドラマには本当に癒してもらっていたなあと思います。最近は『ウェントワース女子刑務所』と『ヒューマンズ』がお気に入り。
06:ikanimo “はいはい”
<広い宇宙の 暗闇くぐり抜け この星まで 来てくれたのね>からはじまり、<眼鏡壊して 髭引っ張って ギター倒して パソコンの上にお水こぼして>の生活感漂う歌詞の中盤でやっと気がついた。これは子育ての歌だったのか! と。私的子育て曲のようでいて、決して閉鎖的ではない、しかも“いかにも”子どもの歌じゃないところがやはりケイタイモさんさすがです。わしのお子はまだ先日暗闇をくぐり抜けて来たばかり。これからお子がどう成長していくか想像しながら、ひっちゃかめっちゃかになるその日を、アチャーと思いつつ楽しみに待ちながら聴く一曲。
07:Laura Mvula “Like the Morning Dew”
このアーティストはYeYeバンドのドラム、senoorickyさんに教えてもらって、馴染みのリハーサルスタジオでBGMとしてよく聴いてたんですが、ある日の夕方、家でぼーっとしてたら、「アワーラーブイーーーーズ~!」ってこの曲のイントロが爆音でどこからか聴こえてくる。うちは今音楽をかけてないし、いったいどこから!? リッキーさん、近くにいるん? 近くにいてもそんな、ヤンキーみたいにチャリにスピーカーつけて京都の碁盤の目を縦に横に走ってるわけないよな。と思ったら、なんと同じアパートの住人の部屋からのグッドミュージック! その人と顔をあわせることは一度もないままそのアパートを退去しましたが、会いたかったなあ。
08:Nick Drake “Pink Moon”
大学生のとき、学校の目の前にある今はなき変なカフェバーでバイトしてたんです。わしの声が小さすぎて、カウンター越しに「カルーアミルクお待たせしました」の声がお客さんに届かないときも後ろから店長が言い直してくれたり、「フライドポテトできる?」と言われて、「揚げもんこわいんでいやです」って断ったり、今考えたらもう自由きわまりないんですが。その店によく出演していたのがニック・ドレイクのこの曲からとったと思われる「Pink Moon」という名前のユニットでした。日々生活する上で、ここでの1年間を事あるごとに思い出しては毎回同じ話なのに笑ってしまう。店長、買い出しに行くときはいつも自転車のストッパー下げたまま運転してました。
09:Rufus Featuring Chaka Khan “Sweet Thing”
Gotchバンドのリハーサルで一時期しょっちゅう東京へ行かせてもらっていたんですが、ホテルに泊まった際にはテレビはあまりつけず、いつもお風呂にお湯をはってゆっくりしながらその地方でしか聴けないラジオをradikoで聴くのが習慣になっていました。そのときにとある番組から深夜にかかってきたのがこの曲。キャッチーなのに一発でメロディを覚えられないところが心を鷲掴みにして頭から離れない! いつものお風呂がさらにリラックスモード全開。スウィーシング~。
10:空気公団 “田中さん、愛善通りを行く”
「空気公団ほど生活に溶け込んでくれる音楽を知らない」と言い切れるほど、長年そして一生だいすきなバンド。そういうランキングがあるならもう競うこともなく、殿堂入り。空気公団の音楽がある限り、この世は一生安泰です。その中でも生活感たっぷりのタイトルを選曲しました。出会う田中さんたちには全員にこの曲を差し出したいです。歌詞の最後のオチでさらにほっこり。