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3名のイラストレーターが生み出す、胸騒ぎのする女の子たち

合田里美、長田結花、ナガタニサキ、それぞれのGIRL

2018年6月 特集:おんなともだち
テキスト:ときとう藤花 編集:竹中万季
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女の子を制作活動の主な題材として選ぶ作家は、世の中に多数存在します。一見キャッチーな印象を受けるモチーフですが、テーマの掘り下げ方や寄り添い方は、人によって様々。今回は、そんな「女の子を描き続けているイラストレーター」3名に伺った思いと共に、作品をご紹介します。そこに感じる親しみ、そして心まで熱を帯びてくるようなあやうさ。その正体を知ることは、「おんなともだち」という概念との距離をはかるための手引きになるかもしれません。

凛とした眼差しと空気を抱き合わせるイラストレーター、合田里美

合田里美『空ときみと』

合田里美『図書館』

合田里美『ふたりのロッテ エーリッヒ・ケストナー著 を読んで① 夏の宿泊施設の庭に仲良く腕を組んで行くロッテとルイーゼ』

女の子を描く理由は単純に描きやすいというのも理由の一つですが、 自身が体験できなかった楽しかったり、切なかったりする「青春」を描いているのかもしれません。 その反面、思い出を少し練りこんだ少し切ない作品を通して自身の学生時代を追体験しているのかもしれません。学生時代特有の希望にあふれ、同時に不安定な二面性が好きです。

挿絵や装丁、表参道HBギャラリーでの個展『空ときみと』開催など、活動の幅を広げている合田里美さん。 彼女の描く少女のイラストには、渦巻く感情を秘めた目つき、そして澄み切った空気が同時に存在しています。凛と据えられた眼差しからは、表面下で機敏に揺れ動く心や、初々しくも湿度を含んだ息遣いが立ち上り、髪やリボンを揺らしながら彼女たちの間にただよう風は、四季と共に流れていく清潔な時間を思わせます。

かつて確かに過ごしたはずの青春の思い出はどこか水臭く、果たせなかったことがあるような、置いてきてしまったものがあるような、そんな気がしてしまうもの。「追体験」として描かれたこれらの作品は、立ち合ったわたしたちにも同じ作用を呼び起こし、あのとき横にいた誰かを、誰かの横にいた自分を、思わぬ速度で追想させる力を内包しているのではないでしょうか。

長田結花のイラストから呼び起こされる共感と胸騒ぎ

長田結花『葉桜』

長田結花『無題』

長田結花『「密書」シリーズ』

大学時代に、女子学生たちの絵を描いたとき、周囲の友人たちがとても共感してくれたことが、女子たち、学生たちを多く描くようになったきっかけでした。 彼女たちのあいだには、鮮やかで、きらきらしたものばかりじゃなく、地味なものや、ちくちくしたものがあることを思いながら描いています。

幻冬舎「PONTOON」“装画”コンペティション大賞受賞、文芸誌挿画、書籍装画、個展やグループ展などで活躍する長田結花さん。彼女の生み出す女の子たちのツンとした表情の中には、憂慮と呼ぶには些か攻撃的な苛立ちや諦めがしばしば描かれます。そこにあるのはどんな焦りなのか、何に対する嫌悪なのか、根本的な原因はどこにあるのか、真意はわからない。わからないけど、わかる。この煩わしさには、確かに既視感があります。

作家によるコメントでも語られているように、「共感」を誘うイラストレーションだという印象をまず受けました。そもそも女友達という題材は、絵を見る行為がダイレクトに共感という反応につながりやすい特殊なイメージでもあります。鑑賞者が同性であればなおさらです。この「ちくちくしたもの」を本能が知っていて、絵の中の彼女たちの目に見える部分ではなく、背後にある気持ちのざらつきを嗅ぎ分けているのではないでしょうか。この胸騒ぎは、「おんなともだち」について考える際の、肝ともいえるかもしれません。

ライフワークとして女の子を描き続ける作家、ナガタニサキの生む豊かさ

ナガタニサキ『ぺろ』

ナガタニサキ『寒い日のはなし』

ナガタニサキ『まっすぐなひと』

絵を描こうと道具をとると、無意識に女の子の形がでてきます。私がこどもだった頃、かわいい女の子が描けるようになりたいとひたすら女の子ばかり描いていて、その習慣が大人になった今でも自分に染み付いているからだと思います。いまでは女の子のかわいさではなく、フォルムに惹かれて描いています。そして私自身も、こどもの頃のようにピュアではなくなってしまったかもしれません。ただ、想いのかたちは変わっても、女の子に対する憧れみたいなものは変わらず自分の中にあって、それを形にするためにこうして今でも描き続けています。

『1_WALL』ファイナリスト選出、『ザ・チョイス』入選など様々な受賞歴を持つイラストレーター、ナガタニサキさん。書籍や挿絵、個展の開催など精力的に活動する彼女も、長年「女の子」を題材とする作家のひとりです。彼女の作品のテイストからは、愛らしさだけでなく安定感と迫力を同時に感じ取ることができます。今回寄せられた本人からのコメントを読み、この技術は長年の反復によって培われたものなのだと改めて胸を打たれました。

モチーフ自体が同じでも、作者の生活や心情は変わっていく。幼少期からの習慣の脇に立っている自分自身は、「こどもの頃のようにピュアではなくなって」いく。それでも追い続けてしまうのは、憧れ、それも同性への憧れというみなぎる感情の作用ではないでしょうか。それは理想像の具現化であったり、自身と向き合う試練であったり、純粋な観賞対象としての娯楽に近い創作であったり、説明できない未知のものであったり。女の子への愛の豊かさに支えられた絵は、わたしたちの心まで豊かにさせてくれるものです。

PROFILE

合田里美
合田里美

兵庫県神戸市出身/神奈川県在住
セツモードセミナー卒業
MJイラストレーションズ 18期生 現在在学中
女の子を中心に描いています
・2016 東京装画賞 一般部門 金賞

長田結花
長田結花

1991年山梨県出身、東京都在住。2014年東京工芸大学デザイン学科卒業。
人物、特に少年少女や女性を主なモチーフとし、文芸誌挿画、文芸書・児童書装画を中心に活動。

ナガタニサキ
ナガタニサキ

広島生まれ、東京在住。
武蔵野美術大学油絵学科卒業
主に簡略化された女の子たちを描く。

ときとう藤花

町歩きと買い物が趣味の編集アシスタント。

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