She isの更新は停止しました。新たにリニューアルしたメディア「CINRA」をよろしくお願いいたします。 ※この画面を閉じることで、過去コンテンツは引き続きご覧いただけます。

『少女邂逅』監督・枝優花と『森の映画祭』が選ぶ刹那な4冊

二度と戻れない瞬間を、映画と本から切り取る

2018年8月 特集:刹那
テキスト:羽佐田瑶子 撮影:竹中万季 編集:飯嶋藍子・野村由芽
  • SHARE

女子中学生と転校生、ふたりの奇妙な友情が描かれた青春ミステリー『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない : A lollypop or a bullet』(著:桜庭一樹)(Amazonで見る

枝監督が紹介する2冊目は『私の男』で直木賞を受賞した桜庭一樹さんの『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない : A lollypop or a bullet』です。

鳥取の片田舎に住み「早く大人になりたい」と願う女子中学生と、自らを「人魚だ」と語る謎多き転校生との奇妙な友情が描かれた青春ミステリー小説。萌え系のかわいらしい表紙とは対照的に物語はサスペンスで、多くの読者に衝撃を与え、2006年の『このライトノベルがすごい!』で3位を受賞。桜庭一樹さんのターニングポイントと、評価の高い1冊です(現在は装丁が変更されています)。

「『少女邂逅』を観られた方や周りの方など、複数人からおすすめされて読みました。『少女邂逅』と同じく、一瞬しかない時を切り取った作品ですが、相当エグいです。特に『人魚だ』と自称する転校生は危ういことを言い続け、物語が進むにつれて、人魚という存在が消えてしまう泡沫であることを感じさせるような、思いがけない結末が待っています」と枝監督は話しました。

予想できない未来=デタラメをどう考えるか『月刊たくさんのふしぎ』

『たくさんのふしぎBOX2018』(発行:福音館書店)(Amazonで見る

ちばさんが2冊目に挙げたのは絵本で有名な福音館書店から発刊されている雑誌『月刊たくさんのふしぎ』です。

自然や環境、人間の生活、歴史、文化から、数学、哲学まで。科学者や専門家と一緒に、あらゆるふしぎを小学生向けにお届けする科学雑誌です。「海中を飛ぶ鳥」や「森を育む養分の循環」など、絵本が得意な出版社らしくかわいらしいイラストともに、わかりやすくまとめられています。

ちばさんのおすすめは、2018年8月号の特集「デタラメ研究所」です。「予想できない未来の出来事を『デタラメ』と表現し、運命や刹那をどう考えるのか解説してくれている特集です。その中で、人間はデタラメに耐性がないから、確率で判断しようとすると書かれていて、まさにそうだと納得しました」とちばさん。

小学校3年生以上を対象にしているため、やさしい文章で説明されていますが、奥深い内容が多いそうです。「コマツシンヤさんのイラストも一緒に楽しめるので、ぜひ一度読んでほしいです」。

「いろんな場所で映画を楽しむことで、一生忘れられない時間を過ごしてほしい」(枝)

最後に、おふたりにとっての「刹那」とはなにかをお伺いしました。すると、ふたりの刹那の中心には、やはり「映画」があったそう。

「毎日のように映画を観ていました。昔、グザヴィエ・ドラン監督の『わたしはロランス』を観たのがアップリンク。晴れた日に、大スクリーンよりもミニシアターで観たいと思って、この映画館を選んだ記憶があります」と枝監督。「私はその映画に似合う映画館や街、天気を選びます。映画をつくり始めてからより深く、その映画になにが似合うかを考えるようになりました。サブスクリプションのサービスを使って家で観るのもいいけれど、つくっている側の多くはスクリーンで観てもらうことを意識しているので、作品以外もひっくるめた体験として映画を楽しんでほしいです」。

今年5回目となる『夜空と交差する森の映画祭』は、まさに体験として映画を楽しめる空間だとちばさんは話します。

『夜空と交差する森の映画祭』

「私も、観る空間はとても大事だと思っていますし、毎回『夜空と交差する森の映画祭』でも『世界観』によって上映する映画をセレクトしています」。今年の世界観は「交差」。日々に潜む見えない交差点と行き交う瞬間に視点が向けられています。「いろんな人生の交差点になってほしいと思い、この世界観に決めました。会場が円形のサーキット場で、交差するんだけれども、どこかでいずれつながる空間になっています。そんな空間も一緒に楽しんでほしいです」。

50本以上の映画を夜通し楽しめる特別な空間。ほかにも飲食やキャンプも楽しめ、さらに「10年後もまた思い出してもらえるように」と特別に作られる会場案内が配られます。

「大人になったら『ニュー・シネマ・パラダイス』のように、みんなと街中で映画を観る日があるんだろうなとわくわくしていたけど意外とないですよね(笑)。だけど、ここならそういう風に楽しめそう」と枝監督。「地方出身で簡単に映画館に行けなかったので、こういったイベントやカーシアターなど、いろんな場所で映画を楽しむことで、一生忘れられない時間を過ごしてほしいです」と話しました。

PROFILE

枝優花
枝優花

1994年3月2日生まれ。群馬県高崎市出身。映画監督、写真家。映画のスタッフをしながら、監督を務めた映画『少女邂逅』が新宿武蔵野館を始め全国公開が決定している。第42回香港国際映画祭に招待される。またSTU48デビューシングル「暗闇」のMVを監督も務めた。そして今年の夏には山戸結希監督企画の映画『21世紀の女の子』で再びメガホンを取る。また雑誌「装苑」にてコラム「主人公になれない私たちへ」を連載中。

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『かわいそうだね?』
著者:綿矢りさ

2011年10月31日(月)発売
価格:1,404円(税込)
発行:文藝春秋
Amazon

『櫻の園 完全版』
著者:吉田秋生

2013年9月5日(木)発売
価格:596円(税込)
発行:白泉社
Amazon

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない : A lollypop or a bullet』
著者:桜庭一樹

2009年2月25日(水)発売
価格:518円(税込)
発行:角川文庫
Amazon

『たくさんのふしぎBOX2018』

2018年6月10日(日)発売
価格:14,040円(税込)
発行:福音館書店
Amazon

イベント情報
イベント情報
『夜空と交差する森の映画祭2018』

2018年10月6日(土)
会場:栃木県 ツインリンクもてぎ

上映作品:
『ベイビー・ドライバー』(監督:エドガー・ライト)
『わたしはロランス』(監督:グザヴィエ・ドラン)
ほか
夜空と交差する森の映画祭2018 / FOREST MOVIE FESTIVAL

『少女邂逅』監督・枝優花と『森の映画祭』が選ぶ刹那な4冊

SHARE!

『少女邂逅』監督・枝優花と『森の映画祭』が選ぶ刹那な4冊

She isの最新情報は
TwitterやFacebookをフォローして
チェック!

RECOMMENDED

LATEST

MORE

LIMITED ARTICLES

She isのMembersだけが読むことができる限定記事。ログイン後にお読みいただけます。

MEMBERSとは?