She isでは、特集テーマをもとにGirlfriendsに選曲してもらったプレイリストを毎月Spotifyで配信中。8月の特集テーマ「刹那」では、Twitterで自身が惹かれた映画やNetflixドラマ、音楽などについての想いを発信しているmaiさんが、刹那を感じる映画とその作品の印象的な瞬間を彩る楽曲を紹介してくれました。
「刹那を感じる音楽を聴くと、生きていく中で一瞬で過ぎ去っていくような物事に対する喜び、感動、孤独をゆっくり認識することができる。そんな音楽が流れる映画は、繊細な感情の動きが伝わり、感情移入できる。だから私は刹那を感じる作品が好きです」と話してくれたmaiさん。『君の名前で僕を呼んで』をはじめとした5つの映画作品と、刹那を感じる7曲をお聴きください。
燃え上がった気持ちが時間と共に移り変わっても、思い出と共に傷を噛み締めていく/『君の名前で僕を呼んで』
『君の名前で僕を呼んで』(2017年)
・Sufjan Stevens "Mystery of Love
17歳のエリオと24歳の青年オリヴァー、この二人の交流と恋の痛みを描いた映画です。曖昧なままで、感情を出さずに探り合う、それでも想いが通じ合うような瞬間こそが本当の意味での恋なんだと歯がゆくなる。"Mystery of Love”は、エリオとオリヴァーが別れの前に一緒に旅行をする場面で流れる曲で、まるでエリオの切ない心情を描いているように感じ取れます。すべての価値観が変わるような初恋、想う人と共に色んなものを感じて共有する素晴らしさ、限りある時間の尊さ。燃え上がった気持ちが時間と共に移り変わっても、思い出と共に傷を噛み締めていく、切なさってなんて美しいんだろう。
愛があれば完全な自分になれる? ありのままの自分を愛することの大切さを教えてくれる/『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001年)
・Hedwig and The Angry Inch “The Origin of Love”
・Hedwig and The Angry Inch “Angry Inch”
トランスジェンダーのヘドウィグが、恋人と共にアメリカに旅立つも捨てられ、失恋の喪失感を胸にギター片手に愛を探す旅に出る物語。ヘドウィグが何よりも求めていたのは「自分の片割れ(Better Half)=愛」。愛があれば完全な自分になれると信じ、探し求め続ける……。この映画のテーマソング“The Origin of Love~愛の起源~”はヘドウィグの繊細さ、別れの虚しさ、魂からの声に心を打たれるので、ぜひ曲と共に美しい歌詞の意味も調べて聴いてほしいです。二曲目に紹介する“Angry Inch”は、性別適合手術に失敗し男性器が1インチ残ってしまったヘドウィグが、それを「怒りの1センチ」と例え、強烈な心の悲鳴を歌った曲です。
「不完全な自分の片割れを探し求めても存在しない、ありのままの自分を理解し、愛することが必要」「完全な人間は一人であり、寂しいものなのだ」と自己肯定の大切さを教えてくれる美しい成長映画です。
27歳で亡くなった歌手、エイミー・ワインハウスのドキュメンタリー映画/『AMY』
『AMY エイミー』(2015年)
・Amy Winehouse “Tears Dry On Their Own”
・Amy Winehouse “Back to Black”
2011年に27歳で亡くなったイギリスの歌手、エイミー・ワインハウスの半生を追ったドキュメンタリー映画。エイミーは世間の注目からドラッグ&男性依存に陥ってしまったけれど、本当は素直な可愛い少女で、成熟な恋愛経験と半生を歌詞にそのまま綴りギターで弾き語る、正真正銘のジャズシンガーだったんだ……と彼女の才能に恋した作品です。
<分かってたのよ、本当はまだ運命の人に出会ってないって/でも、その瞬間にすがろうとしてた/どうしてこんなに惹かれたのか分からない。全部あたしのせい/あんたは何も悪くない/でも自分から去るなんてあたしにはできないのよ>と、彼女は暗闇の中でどうしようもならない自分への失望を歌ってる。エイミーの楽曲はどれも素晴らしいのでダークでフランクな歌声に酔いしれてほしい。
どんな思い出も、自分の一部としてずっと心に残るものなんだ/『セレステ&ジェシー』
『セレステ&ジェシー』(2012年)
・Lily Allen “Littlest Things”
長く付き合った人と別れて、まるで自分が半分死んでしまったような感覚に陥ったことがある? パートナーだった二人が別れた状態からスタートする映画で、まるで女性版『500日のサマー』や『ブルーバレンタイン』のような失恋を描いてます。
多くの時間を一緒に過ごした恋人同士の独特な言葉遊びや愛情表現がキュートで、別れても気持ちを引きずる二人が本物のカップルのようにリアルで……ボロ泣きした映画です(笑)。
<わたしがまだ幼かった頃の悲しい思い出をあなたに話したよね/どうしてあなたを信用したのか分からないけど、話せるような気がしたの/週末中ずっと、わたしたちは自分たちの散らかった部屋で寝て過ごしてた/あなたのボクサーとTシャツに包まれて、わたしはただただ幸せだった>
オープニングで流れるLily Allenのこの曲が、映画を観てから聴くとストーリーと結び付いて胸に響く。どんな思い出も、自分の一部としてずっと心に残るものなんだ。
一瞬一瞬の出会いと別れの眩しさや刹那を肯定してくれるような映画/『恋する惑星』
『恋する惑星』(1994年)
・The Mamas & the Papas “California Dreamin'(夢のカリフォルニア)”
私が一番好きな映画監督、ウォン・カーウァイの映画です。彼は香港を舞台に出逢いと別れを音楽、会話、美しい色彩、斬新なカメラワークで映し出す天才。香港というロマンチックな街に住んでる気分にさせてくれる。蒸し暑い夏、“夢のカリフォルニア”を大音量でかけながら店番をするヒロインのフェイ・ウォン、そこに警察官役のトニー・レオンが話しかけ、二人は打ち解ける。少しでも印象に残ろうと音楽に合わせダンスをしたり、彼の部屋に忍び込んだり、ちょっと異常な女の子の片想いが強烈にキュート。
すれ違う男女に切なさを感じるけど「私たちは恋する惑星に生まれたんだ」と、その一瞬一瞬の出会いと別れの眩しさや刹那を肯定してくれるような映画です。