「現代の若者はお金を使わない」は本当? 実は「見えにくい消費」が増えている
お金と向き合い、自分なりの価値観を模索する時代へ。「今の若者はお金を使わない」と言われますが、果たして本当にそうなのでしょうか。インターネットが誕生してからさらに発展し、現在はサブスクリプションサービスやKindle、スマホ課金など、10年前にはなかった消費の仕方が生まれている中で、昨今の消費動向はどう変化しているのでしょうか?
高野:2010年以降は、クレジットカードはもちろんのこと、PASMO・Suicaのような形を持たないお金のやり取りが一般化しました。商業施設はもちろんのこと、さらにフェスなどのイベントでもQUICK Payなどの電子マネーで決済できるようになりました。そうすると、端数の金額への意識が低くなるのか、知らず知らずのうちに消費金額が増えているようにも思います。小銭への体感がわからなくなるんでしょうね。
TVを見ずにNetflixやHuluなどのサブスクリプションサービスに課金をする人が増え、ゲームやマンガも商品を購入するのではなく、スマートフォンで課金による支払いをする人が一般的になってきました。時代が進むにつれて人々が持つお財布がどんどん小さくなっていることが表しているように、「見えにくい消費」が増えているように思います。
以前、人々が金額をかける対象が車やマンションのような「あこがれのもの」だった一方で、現代はiPhoneのような「生活必需品」にお金をかける人が増えてきました。「物欲の種類が変わった」と高野さんが話すように、お金を使わなくなったのではなく、お金を使う対象が変化してきたのかもしれません。
高野:今の携帯電話の機種代は、数十万円ととっても高いですよね。以前は車やコートに使っていたお金を、iPhoneなど最新機種代に投資している人はたしかに多いと思います。洋服から機種代へ消費対象が変わっただけで、消費金額の変化は総じて大きくはないのではないでしょうか。
先ほどお話ししたように、「若者は消費しない」といわれがちですが、私はあまりそう思いません。留学したい人、メディアや雑誌をつくりたい人、アクセサリーをつくって販売する人。いろいろなプラットフォームの誕生で、
人それぞれの価値観が認められるようになり、何にお金をかけるかの選択肢が広がったことで、個々人が消費する場所や金額を自由に選べるようになったんだと思います。
お金に対するリテラシーを鍛えて、記憶に残るハッピーな消費をしよう
高野さんのお話を伺い、時代や世代によってお金の使い方の傾向が異なること、そして、昨今ではお金を使う対象の選択肢が増え、何にいくらお金を使うか以前よりも個々人が自由に選べるようになったというお金の使い方にまつわる変化があったことがわかりました。それでは、お金を貯める、稼ぐ、という視点では変化はあるのでしょうか。
高野:スマホが普及してからは「ZAIM」や「MoneyTree」などの家計簿アプリで、自分の消費行動を簡単にマネジメントする人も増えてきました。また、メルカリやラクマ、Yahooオークションなど自分の持ちものを売って稼ぐことができるサービスも豊富にあり、使っている人は本当に増えましたね。これらは手軽に参加できる、というのも大きなポイント。匿名性も担保され、たくさん買ってたくさん売ることも可能になりました。ものの売買のスピードが以前よりも早く、ぐるぐると回っているような状況です。Instagramが普及してからは、自分でブランドをはじめる人も増え、学生や本職の仕事をしながら別途収入を得ている人もふつうにいます。
みんなが共通して「買いたい」と願う「あこがれ」の対象がなくなり、それぞれの価値観が容認される今だからこそ、お金の使い方は人それぞれ。様々な人の消費生活を見つめてきた高野さんは、幸せなお金の使い方とはどのようなものだと考えているのでしょうか?
高野:たとえば、どうしても見たいアーティストのために遠出をしたライブや、自分のご褒美に購入した高いバッグなど、「あの時、無理してでも行っておいてよかったな。買っておいてよかったな」と思えるものや時間は、その時にしかできない消費ですよね。そうした、自分にとっていいタイミングでお金を使えることがハッピーな消費なのかなと思います。
旅行先でテンションが高くなっている時に買ったものが、持ち帰ってみたら「いらないかもな……」と思うこともあるかもしれません。逆に、店頭で見て気になったものも「あとからネットで買おう!」と思って結局買わない、なんてことも。タイミングを逃さず、ハッピーな消費をするためには「リテラシーを鍛えること」が大事だと高野さんは話します。
高野:いろんな人の「消費生活」を見ることで、自分にとって大事なものは何か向き合うことができて、お金に対するリテラシーが高まります。また、日々の消費を記録することもお金と向き合う第一歩。自分にとっていい消費のタイミングを逃さなくなるかもしれません。実際に「消費生活」に参加してくださった方々は、「自分自身の消費を可視化できたことで、お金との付き合い方を見直すきっかけになりました」というコメントをくださいます。
その消費が幸せかどうかは自分で決めることですが、納得のできる形でお金を使いたいですよね。そのために日々の消費を記録したり他人の消費動向を見たりすることで、自分自身のお金との向き合い方を見つめ直してみるとよいと思います。そうすると、消費には「覚えていない消費」と「覚えている消費」があることがわかります。ぜひ、記憶に残る幸せな消費をしてほしいですね。
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