七:二人分の荷物と生きる
就職して、ずっと好きだった街で部屋を借りた。駅前に24時間営業のスーパーと長いアーケードの商店街がある、静かでもうるさくもない、わたしにとっては特別な街。もともと少なかった荷物を背負って、なるべく物は増やさないように、一人分の生活を揃えていった。それから秋と冬と春と夏を二度ずつ見送り、もう一人分の生活が増えて、そこはふたりの部屋になった。いまからは、お互いの荷物を持ち合って生きる。
エレベーターが閉まるまで変な顔しながら見送ってくれる、朝が苦手な同居人。
- NEXT PAGE堀静香:ムーミンと生きる